ラクガキ
リジーが連続殺人犯のかいた絵や文章をしっかり頭に入れようとしていた。
「人間は大きな脳みそとそれを利用する知性があるというのになあ」アレックは腕を組みはじめた。
「先駆者が学校という巣を作った。子が巣を立つタイミングはそれぞれだ。なのに人間はそのタイミングを固定してしまった。
早くに巣立つ準備ができてそわそわしてる子も、まったく未熟なまま何もできない子も同じときに解き放たれる。
早くも遅くも成長の時間があるのだからそれを統一しよう、なんて少々おかしな話だと思う」彼はノートを伏せさせた。
「私がここにいるんだ。そのノートは持っていってくれればよかろう?」
「…そうね」
「聞きたいことは?」
「リック以外に覚えている人はいる?」
「蝶みたいな子がいた」
「どんなことを一緒にしたの?」
「何度か家に来るような仲になったんだ。一緒に酒を飲んだり、映画を夜通し見たり本当に楽しかったよ」
「その子は何が一番好きだった?」
「私の料理だよ。いつも腹を空かせてやってくるんだ。愛らしいやつで、でも来る時間も間隔もバラバラでいつ来なくなってしまうのかとヒヤヒヤしていたよ。彼に好機が訪れたのかな、もう飢えるようなことはなくなった、とてもお世話になったと言ってきたんだ。
また遊びに来ると言っていたのにそれから二度と来ることはなかった」
「そう……名前はなんていうの?」
「トニー……デイビス? ああそうトニー・デイビスだよ。ベニって呼んでいた」
「その他の人のことは覚えてる?」
「覚えてるさ名前が出てこないだけだよ」
「朝から呼び出しちゃってごめんなさいね。多分午後にハリソンが来ると思うから、それでまた話を聞かせてもらうかもしれないわ」
「構わないよ」
「ありがとう。このノート、私かハリソンが次会うときに返すわね」
「メモは何にしたらいい?」
「紙を渡すから後でこのノートに貼りましょう」
「わかったよ」
「時間くれてありがとうね」
リジーは扉をしっかり閉めて部屋を出ていった。
速攻僕達のところへ来てノートを見せてくれた。
「不気味すぎるわ、寝てる絵かしらね? いやなんでもいいわそれよりここよ!」
彼女が指差す場所には妙に間隔のあいた文章があった。それはこうだ。
『こ じ らせ て れ いを 言わ ず は た だ の あ が き と い っても 良い で あろう。 間違 いを あ とに 引けず そのままであ る』
「何を言いたいのかさっぱりわからんな」
「そうよ」
「リジーさんこれをずっと見ていたんですね」モーティマーは写真を撮った。「そういえば、新たな検査結果も見ましょう。自分さっき来たとき預かったんですよ」
モーティマーは僕の机の上に写真を裏を向けて置いた。
「これがアレクサンダー・ハーヴィーの家の写真です。ひどいものばかりだって言ってました」
「さっさと見ちゃいましょ。今日の昼食は喉を通らなさそうね」
瓶の中に入った目。半分まで埋まった本棚。鍋の中の塊。きれいに整えられた寝室。鉄の箱。猫のお皿。
「やっぱりあいつが殺ったんだよな?」
「そうよ、こんな証拠が出てきたら疑う余地もないわ」
2階への階段。廊下の飾り。家の間取りが書かれた紙。
「僕たちがまだ入っていない部屋もあるのか?」
「多分これよ」
手渡された写真には机も椅子も何もない部屋が写っていた。
「何もない……」
「でもよく見て、床に比べて壁紙が新しいわ」
木のフローリングは掃除が行き届いていた。壁紙は薄緑。
「ここで人を……」
「私今日のうちに調査へ行くわ」
「俺も行かせてもらう」




