いたずら書き
「2年間でこの地域周辺の行方不明者が5人でしょう?」
「多分違う国の旅行者とかもだな」
「旅行者で家に困ることは少なくないものね。そりゃただで寝泊まりご飯付きなんて食いついてしまうわ」
検査員が家の調査を切り上げて帰ってきたころ。
「ハリソンさん、リジーさん。アレクサンダー・ハーヴィーの家の証拠です」
彼は写真の入ったファイルを渡してくれた。僕はそれを開かず机の上に放り投げた。
「どんな感じだったか教えてくれ」
「少なくとも5人分の耳が出てきました。2階の一番奥の部屋なんですが、彼の寝室らしく、きれいですがそこに頑丈な箱に入った遺体がありました。
腐食が進んでおり現在調べている状況ですが、約2人分でした」
「約2人分?」
「細かく解体されており、量からそれくらいかとしか今のところ推測することしかできませんでした」
「なるほど、ありがとう」
「では、皆さん体や心を壊さぬよう気をつけてください」
「そっちもな」
リジーは他の人たちのために飲み物を淹れて配ってくれた。
「今日は切り上げましょ。明日聞いてみれば名前を言うかもしれないわよ」
「そうだな」
仕事の材料が集まってきたとて、まったく事件の解決及びアレクサンダーの有罪に繋がる材料はなかった。
ぼんやりと帰り道を帰った。家に帰ってきたからといって心からの安心を感じることはなかった。ベッドが体を飲み込む。世界が360度回転しているように感じる。耳鳴りが高音と低音に分かれ始めたとき、意識が途切れた。
いつもより早い時間、コーヒーを喉に流し込んで何とか目を覚ます。重いまぶたを擦りながら運転する。
独りで多くの机に囲まれながら座っている。
外は雨粒が互いにぶつかりながら融合して大きな雨粒となって地面を叩きつけている。前々から行方不明者の多さから連続殺人の方向で調査が進められていた。しかし、いくら金をかけても操作範囲を調べても何も出てこなかった。
最近はクマの多いからという理由で上から丸め込まれてしまった。そりゃ殺人鬼が町中をうろついているなんてたまったもんじゃなからな。
「あら、ハリソンいつからいたの?」リジーがコーヒーを淹れてくれた。「もう取り調べにいく? いや私に行かせてちょうだい」
「ひとりでかい?」
「ええ、任せて」
彼女は足早に部屋から出て行ってしまった。僕はすぐ部屋の様子を監視カメラで見に行った。
「モーティマー! ああ君がいて良かった」
「自分もひとりで緊張して見るのは心が持たないですよ。多分そろそろ彼が来ると思います」
アレックはリジーの向かいにしっかり座った。
「ああ、お嬢ちゃん。ハリソンはなしかい?」
「私リジーよ。ハリソンに会いたければ午後に会えると思うわ」
「それより、ノートにかいてきたよ。いろいろ」
「ほんと? じゃあ早速見せてもらっていいかしら」
「もちろんさ」
アレックはリジーにノートを渡すと腕を組んだ。カメラから見える限り2ページ見開きでかかれていた。リジーは黙ってそのノートを食い入るように見た。
「そんなに気に入ってくれたらまたかいてあげるよ」
「この絵は何?」
「リックくんさ」
「知ってるのね?」
「あのソファーで一緒に呑んだ記憶がある」
リジーはその綺麗な字を何度も何度も読み返した。




