被害者数は?
家の中に彼の手を引いて進んでいった。冷蔵庫の前にくる。
手袋をつけた震える手で開ける。
「これは誰だ?」
「さあ、私は顔で人を覚えられるタイプではないからなあ」
「他に死体はあるか?」
「死体なんてひどい呼び方は嫌だね」
「…被害者はどこだ」
「2階の部屋の一番奥」
「何人だ」
「さあね、8か9人ぐらいじゃないか?」
2階にアレックと二人であがる。彼はまっすぐ部屋の前まで進んでいった。
「アレック、君が開けてくれ」
「あいにく手錠をされているからそんな力は湧いてこない」
リジーが階下で呼びかけてくる。
「あのお嬢さんは大丈夫か」
「そんなこと言われる筋合いはない」
下に急いでおりて行くとリジーは証拠写真を取っていた。
「ひどい臭いよこの鍋。他の警官が来るまでそのままにしておくけれどね!」
「そうした方がいい」アレックが鍋に近づいた。「まだあと一週間は煮込むんだ」
「冷凍庫は何が入っているの?」
「肉だよ」
僕は寒気がした。肉なんてひどい呼び方だよ。
「リジー、すまないが少し座ってもいいかい?」
「もちろんよ」
「なあ座るならリビングのソファーに座れ」
縮こまって上体を膝の上まで倒した。
「おい、外にとまった車のことでも考えてしっかりしろよ」
「横に座るな」
「私の家だよ、まだ」
玄関の扉を大きな音をたてて開き、どしどし近づいてくる音がした。
「リジー、ハリソンよくやった。署に連行しろ。調査は我々が引き継ぐ」
「あ、ありがとうございます」
「本当によくやった」
彼を車の後部座席に乗せて僕は運転をした。そこまで遠くの場所にないはずの警察署もこのときばかりは遠く感じた。
「こんな遠かったか」
「警察署までね」彼女の目に信号の赤色が映る。
「私との時間がそんなに嫌か?」後ろから声がした。「嫌なことをしている時間などは長く感じると言うじゃないか」
僕もリジーも無視をした。
彼は何の抵抗もなしに取り調べ室へ入った。
「しばらく上の者が来るまで待機してもらう。それでいいね?」
「君とはもう話せないのかい、ダニー君?」
「その呼び方はやめくれ」
リジーと一緒に部屋を後にして様子が見れる監視室の画面の前に座った。
「モーティマー、そいつは何かしているか?」
「ハリソンさん。本当にこの人が連続殺人の犯人なんですか? じっとおとなしく座ってますよ。てっきり犯人はもっと怖そうな人と思っていました」
「そういえば、どこであの人が殺人犯ってわかったの?」
「キッチンに行って、見せてもらったんだ。猫の餌とやらを。そこは臭い以外普通に見えたんだ、でもシンクに歯が流れきっていないのを見て、頭によぎったんだ」
「素晴らしい手柄よ、ハリソン」
「取り調べは8時からにしよう。それまで少し時間をもらうよ」
外のいつも通る人気のない細い路地に座り込んでからというもの、長く立ち上がることができなかった。彼女は気づかなかったのだろうか? キッチンの調味料の瓶の中に目や歯が保管されていたことを。
気づかなくて良かったと思う。彼女は僕が出会った中で一番自立した女性だと思うから。まっすぐ隣に立っていてくれるだけで頑張る気力がもらえるし。
「時間5分前ね。ハリソン」
「もう入ったほうがいいか?」
「早く帰りたいのならそうしてください」モーティマーは新しい資料を渡してくれた「リジーさん、ハリソンさん。今から自分たちがしっかり見ていますから。何かありましたらすぐに突入できます」
「ありがとう。では、リジー。行こうか」




