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食事を与える

 蝶と人間はそう変わらない。

 僕は現在待機を受けている。今自分のことを警部は思えない。この持て余す時間を有効活用すべく、どちらかといえば同僚に止められている事件のことを考える。


 事の発端である通報があったのは先月の5月20日水曜。野良猫に餌をやっている家があり、ゴミ捨て場が荒らされるため対処してほしいと電話がきた。猫は餌のあるところに集まる。餌をあげなければ集まらない。そんなことを考えながら午後にその地域へ向かった。


 その辺を同僚のリジーと適当に歩き回って、日がかたむきあたりが橙色に染まってきたころ、近くで猫の鳴き声が聞こえることに気がついた。


 その声の方向に進んでいくと一軒の家についた。横の細い道に猫が見えた。リジーに車を近くに移動させて待つように言う。玄関のドアをノックすると中から男性が現れた。


「ダニー・ハリソン、警察の者です。猫の餌やりで通報を受けまして、多頭の猫の放し飼いは今後何かしらの対処をしていただきたいです」


その男はちらっとふり返ると中に入るように手招きをした。家の中にを進んで行きリビングを通り過ぎて大開口窓をくぐった。鼻にくる臭いに違和感を感じながらも庭にいる猫の餌のせいにした。


「手術はしたんですか?」

「半分は」


鉄の皿に入った餌を貪る猫を見ていると不思議と心が揺らいできた。


「何あげてるんですか」

「肉を煮込んだもの。歯が悪い子や胃が弱い子ばかりだからな」


彼は、ひとり遠くでじっとしている猫を抱きかかえると別の皿を取り出しきれいな水を与えた。僕はその猫をしばらく撫でていた。彼が僕のことをじっと見ているものに気がついたので、それはすぐにやめた。


「部屋の中に入ってきな警官のお兄さん」


一瞬そんな呼び方に動揺してしまったが言われたとおりにさせてもらった。


「基金活動とかしていないのかい? よければ君の名前を知りたいんだ」

「アレクサンダー・ハーヴィーだ。みんなはアレックって呼んでいる」

「僕もアレックって呼んでいいかな?」

「ご自由にどうぞ」

「ねぇアレックは毎日猫達に餌をやっているのかい?」

「まあ、そうです」

「僕も猫を飼っているんだ。良ければ煮込んだ肉をどのような感じに作るのか見てもいいかな」


 アレックは頷いてキッチンに歩いていった。

 そこは臭いのもととなるとてもでかい鍋があった。


「あれで作るのか、すごいなほんとに」

「ふたは開けないほうがいい。家中が臭くなって大変な思いをしたことがあるんだ。今はなんとかできてるんだがな」


いやな予感がした。


「肉はどこから仕入れてくるんだ?」

「廃棄する硬い部位をもらってくるんだ。煮込むしちょうどいいと思ってな」


暗い冷蔵庫の方を見てしまった。


「あ、あの個人的な番号を交換してもいいですか? いや、あの普通は良くないんですけど…車に僕のがあるのでちょっと待っててくれませんか?」

「待ってるよ」


 僕は急いで外に出た。リジーは向かいの自動販売機の横に立っている。彼女は近づいてきた。


「ねぇ、どうしたの?」

「中からの死角にいてくれ、音をたてないで。手錠を、あいつだ」

 手を強く握ってからドアを開ける。

「アレック! 子猫がそこにいるんだ。す、すまないがご飯を持って来てくれないか」

「わかった」


 心臓が波打つたびに視界がぼやける。

 彼が両手に水の皿と餌の皿を持ってきた。


「ああ、ありがとう。ここだよ」


 子猫がなく。

 彼は疑いもなく近づいてくる。

 金属の音がした。


「6時42分、逮捕」

「れ、連続殺人の容疑でアレクサンダー・ハーヴィーを逮捕する」

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