第18話 一矢報いる
「グオオオオオオッ!」
ミュータントは荒々しく腕を振り上げ、近くに落ちていた瓦礫を掴み取ると、全力で大介へと投げつけた。
瓦礫は勢いよく空を切り裂きながら飛んで来るが、大介は冷静に動きを見極めてステップを踏み、軽やかに交わしてみせる。
「へっ、単細胞だな」
軽口を叩きながら大介は、さらに飛んで来る瓦礫を確認した。
次の一撃は、より重い混凝土の塊で先程よりも早い速度で飛んで来たが、彼は散弾銃を素早く構えて一撃を放つ。
その瞬間、瓦礫は粉々に砕け散り、破片が四方八方に飛び散った。
「もっと楽しませてくれよ、緑野郎」
そう言いながら彼は、瓦礫の破片を踏みつけつつ、悠然と足を進める。
その態度が更にミュータントの怒りを煽ったのか、次第に瓦礫が尽きるとついに相手は大介へと突進を始めた。
その巨体が動き出すと、床が鈍い音を立てて、揺れるような錯覚すら覚える。
「グオオオオオオッ!」
雄叫びを上げながらの突進は、まるで暴走するトラックのような迫力だ。
それを正面から見据え大介は、散弾銃の弾倉を再確認しながら、不敵な笑みを浮かべる。
「緑の単細胞を殺るのに知恵は必要ねぇ」
その言葉と共に大介は、自ら敵へと向けて走り出した。
その動きは大胆かつ計算されたものである。
突進するミュータントの拳が振り下ろされる直前、大介は姿勢を低くしてスライディングを試みた。
ミュータントの股下を潜り抜けるように滑り込むと、その間に散弾銃へと弾を素早く装填する。
「必要なのは少々の銃火器と圧倒的な戦闘技術だ」
その言葉が響くと同時に大介は、スライディングからスムーズに立ち上がり、散弾銃を敵の顔面へと突きつけた。
ミュータントは直ぐに振り返ったが、その目と鼻の先には散弾銃が、ひたりと突きつけられている。
冷たい金属の感触がミュータントの肌に触れ、わずかに緊張感が走った。
「さて……お楽しみの時間だ」
不敵な笑みを浮かべて引き金に指を掛ける。
「や”れ”る”も”の”な”ら”……や”っ”て”み”ろ”!」
その瞬間ミュータントは、理性が欠けた粗雑な言葉で、最後の抵抗を試みた。
「へっ、言われなくても特注の鉛玉をプレゼントだ。感謝して受け取ってくれよな」
軽口を叩きながら大介は、散弾銃を強固に握り締める。
その声音には不敵さと自信が溢れ、彼の戦場での熟練ぶりを思わせるようだ。
ミュータントは大介の言葉を聞きながらも、巨体を揺らして更に一歩前進して、銃口を顔面の中央に自ら申し付ける。
そしてミュータントは、徐に巨大な腕を振り上げて咆哮を上げた。
それは見るからに、露骨な挑発行動である。
「おいおい、そんなに吠えたら喉が枯れちまうぞ。まあ、今のうちに声を出しておけよ。もうすぐ永年に、お喋りできなくなるからな」
大介は散弾銃の弾倉を確認しながら、相手に負けじと挑発を返す。
その間にも彼の目は、ミュータントの動きを鋭く追い続け、緊張感の中に冷静さを保つ。
そして大介は引き金を引いた。
一瞬の轟音が部屋中に響き渡り、弾丸がミュータントの巨体な頭部を正確に捉えた。
次の瞬間、頭部はまるで挑発したかのように四散し、血肉と骨片が飛び散る。
鮮血が壁や床に飛び散り、辺りは一瞬にして凄惨な光景と化した。
「ほらよ、受け取ったな。これが俺からの餞別だぜ」
笑みを浮かべながら大介は呟く。
その目は何処か冷酷でありながら、達成感のような光が宿る。
ミュータントの巨体は、頭部を喪失した瞬間に、崩れるように床へと倒れ込んだ。
その振動が床を震わせ周囲に響く。
「ああ、やっぱり大の字で倒れるんだな。教科書通りだぜ」
皮肉めいた言葉を吐きつつ、大介は散弾銃を肩に担ぐ。
だがその直後、大介の頬に何かが掠めてゆく。
ミュータントの砕かれた細かな骨片が高速で、壁や床にぶつかり跳ね返る事で飛び散り、その一部が彼の頬に小さな傷をつけてゆく。
じわりと血が滲み出し、大介は思わず手で触れて確認した。
「おいおい、まじかよ?」
大介は驚いたように呟き、手のひらに付いた血を見つめる。
「あの単細胞、死して尚も一矢報いろうってか? はっ、やるじゃねぇか!」
一瞬だけ声を高らかに上げて彼は笑う。
その笑い声は、緊張から解放された者特有のものであり、どこか狂気じみてもいた。
「気に入ったぜ、兄弟。まさか最後に傷をつけてくれるとはな!」
そう言いながら彼は、散弾銃を再び構え直す。
その目は倒れたミュータントの死体を冷酷に見据えていた。
「でもな、俺に喧嘩を売った奴には、もっと特別な仕置きが待ってんだよ」
低く囁くように大介は言いながら散弾銃の引き金を引く。
轟音が再び部屋を揺るがした。
大介は立て続けに弾丸を撃ち込み、ミュータントの死体を容赦なく粉砕してゆく。
血肉が更に飛び散り、床や壁を汚染する。
死体は次第に形を失い、もはや何が原形だったのかすら、分からなくなっていく。
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