第17話 ミュータントVSグールさん
「ぐっ!?」
息を詰まらせながら大介は吹き飛ばされ、彼の身体は後方の壁に叩きつけられる。
その衝撃で大介の手から散弾銃が滑り落ち、床に激しい音を立てて転がった。
その勢いでミュータントの拳は、アンナを押さえつけていたグールにも直撃し、グールは吹き飛ばされて床に倒れ込む。
彼女は、その場で急いで立ち上がり、荒い息を吐きながら周囲を見渡す。
アンナの瞳は強い決意を湛え、体中に付いた埃や血の飛沫を無視して、次の行動を模索していた。
そして彼女は薄明かりの中、息を切らしながら拳銃を構えて、床に転がるグールの頭部へとつきつけ引き金を引く。
轟音と共に頭蓋骨が粉々に砕け、グールの体が力なく地面に崩れ落ちる。
血と腐臭が周囲に広がる中、彼女は動きを止めることなく、大介の元へと駆け寄った。
「グールさん、大丈夫ですか!? 怪我は――――」
アンナの声は焦燥に満ちている。
その大きな瞳は涙を堪え暗闇の中でも、彼女の表情が艶やかに浮かび上がった。
艶めいた唇から漏れる言葉が、アンナの純粋な心配を物語る。
「おっと、心配いらねぇよ」
ゆっくりと体を起こして、大介は乱れた呼吸を整えた。
頬に垂れる血を指先で拭いながら不敵な笑みを浮かべる。
その時、部屋の奥から聞こえる鈍い衝撃音が二人の耳を引いた。
暗闇に包まれた部屋の中央では巨大なミュータントと、パワーアーマーを装備したVRL兵士が互いに拳をぶつけ合う。
衝突の度に鉄の軋む音と、骨が砕けるような音が響き渡る。
「アンナ! 離れていろ!」
大介は鋭く声を上げると、彼女を腕で押し退けた。
「きゃっ……!」
突然の行動に驚き、アンナは足元をすくわれるように後退する。
その拍子に揺れる彼女の純白の髪が、薄暗い部屋に僅かな輝きを取り戻す。
「その綺麗な体を、これ以上傷だらけにしたくなければ、俺から離れていろ」
低い声で言いながら大介は、指の骨が鳴るほど強く握り締めた。
「ここは今から汚い血と贓物が飛び散ることになるぜ。俺は戦前の頃から、売られた喧嘩は買う主義だからよ」
彼の言葉には決意と不敵さが混ざり合う。
「グールさん……気を付けてくださいね!」
アンナは混乱の表情を浮かべながらも指示に従い行動する。
その間にも彼女の目は、大介から離れることはない。
そして大介は床に転がる散弾銃を手に取り、再び構えると次の行動に出た。
彼は冷酷な微笑を浮かべながら、倒れたVRL兵士の顔を見つめている。
そのパワーアーマーは、ミュータントの攻撃を受けて損傷が激しいようで、切断された配線部分からは煙が漏れ、金属の焼ける匂いが漂う。
さらに、そのパワーアーマーは動力部分が損傷しているのか微動だにしない。
兵士の表情は恐怖に染まり、目には涙が浮かんでいる。
「た、助けてくれ! 木村ナターシャ隊長!」
悲痛な叫び声を上げる兵士の声は、国会議事堂内の中に響いた。
「俺に喧嘩を売るってのは、こういうことだ」
冷たく言い放ち大介は、ナイフを鞘から引き抜き、力を込めて柄を握り込む。
その言葉は硬質な金属音のように響き、兵士の心に恐怖を睨みつける。
腰を下ろしながら大介は、パワーアーマーの頭部装甲を片手で掴み、無造作に取り外した。
重厚感のある装甲が、地面に落ち鈍い音を立てる。
外された頭部の中から現れた兵士の顔は若く、恐怖と絶望がその表情を支配していた。
汗が額から流れ血の気が失われた、その顔は命の終わりを目の前にした者の典型的なものである。
「よく覚えておけ、若造」
大介の声は低く感情のない、冷ややかさを帯びていた。
ナイフが、ゆっくりと兵士の首筋に当てられる。
その鋭利な刃が、皮膚を切り裂く感覚が、手元に伝わりゆく。
兵士は必死に抵抗しようとするが、パワーアーマーの制御が破損しており、全身は動かない。
「や、やめてくれ……」
兵士は嗚咽混じりに懇願するが、大介は一切の情けを見せなかった。
ナイフの刃が更に深く食い込み、首筋から血が噴き出す。
その鮮血は大介の手元を染め、床に赤黒い水溜まりを作り出した。
兵士の口からも血が流れ出し、喉の奥から泡立つような音が漏れる。
「あぁ……母さん……」
最後の言葉を絞り出しながら、兵士の目から光が消えた。
大介は静かにナイフを引き抜き、血に濡れた刃を手短な布で拭いながら立ち上がる。
「ふぅー……少しは気が晴れたな」
そう呟くと同時に、大介の目が冷たく光を放つ。
ナイフを片手で回しながら、軽快な動作で再び戦闘態勢に入る。
彼の目線は次の得物――部屋の隅で仁王立ちするミュータントへと向けられていた。
そのミュータントは全身が緑色の硬い皮膚に覆われ、異様に肥大化した筋肉が身体の輪郭を誇張している。
濁った黄色の瞳が爬虫類のように動き、鋭い牙を覗かせる口からは低い唸り声が漏れていた。
その姿は人間の形をした獣とでも、形容するのが相応しい異形の存在である。
「なぁ、おい」
大介はナイフの背で軽く肩を叩きながら、挑発するような口調で言葉を続けた。
その声には余裕と狂気が混ざり合い、空気を張り詰めさせる。
「グリーン色のエイリアンもどき野郎。お前を殺ったら俺の気持ちは昇天ものだぜ」
不敵な笑みを浮かべて、彼は肩を竦めてみせた。
その動きは完全に相手を舐め切った態度そのものである。
ミュータントの表情が更に険しくなった。
唸り声は次第に低温から高音へと変わり、ついには野獣のような雄叫びが部屋中に響き渡る。
最後まで読んで頂きまして誠にありがとうございます。
宜しければ評価とブックマーク登録をお願い致します。
活動の励みとなり更新が維持出来ます。




