表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
核戦争から二百年、人類に嫌われるグールの俺だが、なぜか少女にだけ懐かれたので最後まで面倒を見ることにした  作者: R666
第四章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
97/102

第16話 闇へ消えるアンナさん

「心配すんじゃねぇ。俺の方がタフだ。お前らが安全な場所に着くまで、こいつらを引きつけてやるさ」


 余裕の笑みを浮かべると大介は、アンナを安心させるように顎で扉を指し示した。

 そして彼女は小さく頷くと、和真の腕を引っ張りながら扉へと向かう。


 だがその瞬間、建物全体が暗闇に包まれる。

 突如として国会議事堂内の電気が全て消失したのだ。


「……なんだ、今のは?」


 大介は驚きつつも冷静に状況を見極めようとする。

 廊下を照らしていた僅かな灯かりは完全に消え、周囲は漆黒の闇に覆われた。


 唯一の光源は遠くでパワーアーマーのヘッドライトが僅かに輝いているのみ。

 

「ちっ、ざけんなよ! 外の街は明るくなったってのに、ここの設備はどうなっていやがる! まるで悪魔の塊だな!」


 大介は半ば怒りながらも、冗談めいた口調で呟き、周囲の暗闇を睨んだ。

 その声が暗闇に響き、どこか不気味な静寂を破る。


「アンナ! おい、アンナ! どこだ!」


 和真は完全に怯えており、震える声でアンナを呼び始めた。

 

「お父さん! ここです! 大丈夫ですから、落ち着いて! もうすぐ外に出られますから! 心配しないで!」


 アンナは父親の肩に手を置いて、安心させるように声を掛ける。

 その柔らかい声は暗闇の中でも、一筋の希望となるような響きを持つ。


 彼女の言葉に和真は少しだけ落ち着きを取り戻したが、その瞬間アンナの近くから不気味な唸り声が聞こえた。


「なっ……!」


 アンナが振り返る間もなく、突然グールの一体が闇の中から現れ、彼女に飛び掛かる。

 その鋭い爪が彼女の肩を掴み、激しく突き飛ばした勢いでアンナは、壁を突き破り別の部屋へと吹き飛ばされた。


「アンナ!」


 大介は即座に、その方向に駆け寄ろうとするが、残された敵の群れが道を塞ぐように立ちはだかる。

 時間が刻々と過ぎていく中、大介は深い息を吐いて、冷徹な表情で武器を構え直した。


 大介は足元に転がる敵の死体を無造作に跨ぎ、振り返ると怯える和真に冷たい視線を向ける。

 激しい戦闘の音が未だに廊下全体を包み、銃声と叫び声が混ざり合う地獄のような空間に、彼の弱々しい声が微かに響く。


「ったく……お前はここを死守しておけ。ほら、この銃を使え」


 呆れながら言うと大介は、廊下に転がる敵兵の銃を拾い上げて、それを和真に押し付けるように渡した。 

 だが和真の手は震え、銃をまともに持つ事さえおぼつかない。


「た、頼むぞ! アンナのことを……お、俺は何もできんからな!」


 震える声で和真は訴え掛けた。

 そんな彼の姿に大介は思わず、眉間を押さえて溜息を吐く。


「本当にあれがアンナの親父なのかよ。ったく、頭が悪そうなところ以外、似ている部分が全然ないな。つまりアンナの大分は、おふくろ譲りってことだな……あのでっかい乳も含めてな」


 皮肉たっぷりの独り言を漏らしながら大介は、すぐさまアンナが吹き飛ばされた部屋へと向かう。

 部屋の扉は歪み、壁の一部が崩れた痕跡がある。

 アンナが突き破った場所を思わせる、大きな穴が彼の視界に入り、そこから室内の様子が垣間見えた。


 大介は慎重に足を進めてゆく。

 鉄の匂いと湿った埃が鼻をつき、足元には破片や倒れた家具が散乱している。


 天井の一部は落ちて欠けており、薄暗い空間が続いていた。

 暗闇の中、グールに押さえつけられて必死に抵抗するアンナがの姿が、大介の視界に映り込む。


 VRLの兵士たちが国会議事堂内を蹂躙している影響で、微かなパワーアーマーのヘッドライトが部屋を照らし、アンナのしなやかな肢体が、その光の中で汗ばみながらも必死に、もがいている様子が浮かび上がる。


 その純白の髪は湿気で額に張り付き、蒸気の立ち込めるような空間の中で、一層艶やかに輝いていた。


「このッ! 離せ! 薄汚いゾンビ野郎!」


 アンナの怒声が、室内に響く。

 彼女はグールの頭部を手で掴み押さえ込みながら、その膝でグールの股間を何度も蹴り上げていた。

 その動きには必死さのあまり洗練さを欠き、しかしそこにはアンナの生への執着が明確に現れている。


「どうせグールに襲われるなら、ホロコーストさんの方がいい! むしろ! ホロコーストさんに襲われたいいいいいいっ!」


 口走るようにアンナは呟きながら、噛まれないように必死の抵抗を繰り広げていた。


「あー、今のは聞かなかったことにしとくぜ」


 彼女の言葉を聞いて大介は一瞬動きを止めると、眉間に皴を寄せながら苦笑を浮かべる。

 

「まったく、やれやれだな。世話の掛かるネオテックスガールだぜ。これで、お前を助けるのは最後にしたい所だな」


 彼は肩を竦めながら銃を構えると、アンナの直ぐ傍で唸るグールの頭部に狙いを定めた。

 引き金に指を掛けた瞬間、突然部屋の一角の壁が大きく崩れる。


 その音は耳を劈く轟音となり、粉塵が舞い上がった。

 崩れた壁の向こうからは巨大なミュータントと、パワーアーマーを装備したVRL兵士が現れる。


 パワーアーマーのヘッドライトが更に部屋を明るくし、その光に照らされて浮かび上がるアンナの表情には恐怖と怒りが入り混じるようだ。


「ったく、今日は本当に厄介だな」


 頭を掻きながら苦々しく大介は呟く。

 だが、そう言いながらも彼は背中に装備されていた散弾銃を手に取り構えると、目の前の二人に立ち向かおうとする。


 しかしミュータントの巨体が、一瞬の隙を突いて彼に迫り、その拳が容赦なく大介の腹部を据えた。

最後まで読んで頂きまして誠にありがとうございます。

宜しければ評価とブックマーク登録をお願い致します。

活動の励みとなり更新が維持出来ます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ