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核戦争から二百年、人類に嫌われるグールの俺だが、なぜか少女にだけ懐かれたので最後まで面倒を見ることにした  作者: R666
第四章

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第15話 逃げるんだよ

「おいおい……本当にやべぇな。グールやミュータントの群れが、もうそこまで来ていやがる」


 崩壊した壁から顔を覗かせて、外の様子を確認すると、大介は低い声で呟き、その場で舌打ちをした。

 そのあと外の確認を終えた彼は意識を外すと、すぐさま室内に居るアンナと和真に向き直る。

 

「早いとこ、こっから脱出した方がいいな。俺はこんな所でしょうもない死に方はしたくねぇんだよ」


 肩を竦めながら大介は、口元に軽薄な笑みを浮かべて、捨て台詞を吐いた。

 

「あの外の状況で、どうやって逃げろって言うんですか! ここに居た方がマシな気がしますよ!」


 険しい顔つきでアンナは彼を見つめると、その瞳には怒りと不安が交錯し唇が僅かに震える。

 

「バカ言え、外の連中がこの建物を完全に包囲したら、どうなると思う? ここはもはや死地だ。死にたくなければ、俺に付いて来い。まっ、自分の身は自分で守るのが大前提だがな」


 軽い口調で言い放ちつつも大介の、その目には冷徹な光が宿されていた。

 

「そ、そうですよね……。わ、わかりました! いきましょう!」


 床に落ちる血の臭いが濃くなる中、アンナは素早く弾を装填しながら覇気に満ちた声で応じる。


「くそ、我が一族の野望が……!」


 一方で和真は、床に転がっていた拳銃を拾い上げると、歯を食いしばりながら低く呟いた。

 再生のカードキーをが使われた事への、怒りと悔しさが彼の震える手に表れている。


 大介は手にした武器を、しっかりと構えて、冷徹な表情で部屋を出た。

 廊下に足を踏み入れると、そこはまさに地獄絵図である。

 

 国会議事堂内は外の混乱と寸分違わぬ戦場と化していた。

 VRL兵士、ヴォイダー、灰の信徒の兵士たちが乱れ、グールやミュータントの咆哮が木霊する。


 銃声と爆発音が絶え間なく響き渡り、壁には血しぶきが飛び散り、床には無惨な死体が転がっていた。

 廊下を覆う鉄錆びた血の臭いが、大介たちの鼻腔を刺激し、戦場の現実を強調している。


「てめぇら、いいな? 死にたくなければ、俺に付いて来い」


 軽い口調で大介は言うが、その言葉の裏には緊張感が漂う。

 後ろを振り返りアンナと和真の無実を確認すると再び前方へと視線を向けた。


 目の前に現れる敵を次々と、手際よく排除する大介の動きは、訓練された戦士そのものである。

 最初に出会った灰の信徒の兵士は、手持ちのマグナムピストルで、即座に胸を撃ち抜かれ無力化された。


 続いて現れたヴォイダーたちは、迷うことなく頭部を正確に狙い撃たれる。

 彼らが血しぶきを上げて倒れ込む様子を、アンナは冷静に見つめつつ時折、自身の拳銃で援護を行う。


 しかし激しい戦闘の末、大介の手持ちの武器が、弾切れを起こした。


「くそっ! こんな時にか!」


 苛立ちの声を短く吐き捨てると、大介は使用不可と化したマグナムピストルを、敵の眼前に目掛けて力強く投げる。


 投擲されたマグナムピストルが、敵の顔面に直撃し一瞬の隙を生む。

 その間に大介は素早く周囲を見回し、廊下に落ちていた散弾銃を拾い上げた。


 その重量感のある武器を手にすると、すぐさま敵を狙い撃ち短い距離で爆発する散弾が、無数の敵を吹き飛ばす。


「はっ、こっちも中々に爽快だな!」


 少しばかり余裕を取り戻したように呟き、大介は次々と敵を薙ぎ倒してゆく。

 そして彼は一瞬、周囲の状況を確認し、荒れ果てた廊下の血だまりの中で光る弾薬ケースに目を留める。


 その赤黒い液体が時間の経過と共に乾きつつあることに、どれだけ戦闘が苛烈であったかが否応なしに伝わる。


 目の前には無造作に放り出された死体が散乱し、人体の一部が床や壁に貼り付いていた。


 その光景に対して、何の感情も湧かない自分に、大介は内心苦笑する。

 

「おい、アンナ。そっちは大丈夫か?」


 大介が声を掛けると、アンナは拳銃を握り締めながら、緊張感を帯びた顔で微笑んだ。


「はい! 問題ありません! もう少しで抜けられそうです!」

 

 彼女の声は高く朗らかだったが、その裏に隠された恐怖を感じ取る事が出来る。

 一方で和真は完全に気後れしている様子で、手にした銃を震える手で握り締めていた。


 戦場慣れしていない彼には、この地獄のような状況が耐え難いものに違いない。

 和真は視線を彷徨わせながら周囲の様子を確認しているが、目に見えるものを全てが恐怖そのものであるかのように見えるようだ。


「くそ……どうして、こんなことに……」


 唇を噛み締めながら和真は、何度も自分に言い聞かせるように呟く。

 その言葉は自らの無力感と、後悔を象徴しているかのようだ。


 やがて大介は非常口らしき場所を見つめて立ち止まる。

 その金属製の扉は、周囲の地獄のような光景の中で、一筋の希望の光のように見えた。

 しかし、そこに至る道のりは平坦ではない。


 廊下の奥からは未だに銃声と悲鳴が響き渡り、迫り来る敵の影がちらついている。

 

「おい、こっちだ! この扉を抜ければ外に出られる!」


 軽口を叩くようにして振り返り、大介は二人に指示を出した。


「へっ、まぬけな親子供。さきに、この地獄から、一抜けしな。今回限り、この俺様が特別に、時間を稼いでやる」

「えっ、でも……」


 アンナは不安そうに、大介を見つめた。

 その瞳には彼を置いていく事への躊躇が明らかに浮かんでいる。

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