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核戦争から二百年、人類に嫌われるグールの俺だが、なぜか少女にだけ懐かれたので最後まで面倒を見ることにした  作者: R666
第四章

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第19話 流行のファッション

「これでおしまいだ。まさに完全勝利ってやつだな!」


 肩で息をしながら、大介は散弾銃を下ろした。

 その表情には疲労と満足感が入り混じる。


 ミュータントの死体を穴だらけにして、その場に静寂が訪れた。

 大介は散弾銃の銃身から立ち昇る煙を見つめながら乾いた笑みを浮かべる。

 

 弾倉が空であることを確認すると無造作に、その武器を地面に投げ捨てた。

 その瞬間、鈍い金属音が冷たい床に響き、埃が僅かに舞い上がる。


「ふぅ、これで静かになったな。いや……まだだ」


 自分自身に言い聞かせるように呟きながら、血まみれの戦場に視界を巡らせた。

 彼はアンナの方に顔を向けて、険しい表情のまま口を開く。


「なにをぼさっと突っ立ってんだ。さっさと、こっから出るぞ」


 そんな大介の鋭い声色には、焦りと僅かな苛立ちが含まれていた。

 しかしその時、彼の目がアンナの右肩に視線を止める。


 そこには肉片と共に、ミュータントの眼球がへばりついていた。

 

「おいおい、その肩に乗っているミュータントの眼球は……流行のファッションとは言えないな」


 大介の口調は、どこか皮肉交じりだが、的確な指摘である。

 

「えっ?」


 アンナは一瞬、自分が何を言われたのか理解できず、疑問符を浮かべた表情を見せた。

 しかし次の瞬間、自分の肩を見た彼女は真っ青になり、驚愕の声を上げる。


「ミュータントの眼球? ……えっ、うわああああ! きっしょ! きも! おええええええっ!」


 アンナの悲鳴と共に肩から、その忌まわしいものを手で払い落し、必死に腕を振り払う動作を繰り返した。


「おい、落ち着け。今は騒いでいる場合じゃねぇだろ。親父が待ってんだろ? とっとと行くぞ」


 溜息をつきながら大介は歩み寄りアンナの肩を軽く叩く。


「わ、わかりました! いい、い、行きましょう!」


 アンナのは彼の言葉に応えるように、何度も呼吸をして気を落ち着けようとした。

 彼女の大きな瞳は少し潤んでいるが、その中に宿る芯の強さが再び表れる。


 二人は血生臭い空間を背にして部屋の出口に向かう。

 破壊された壁や、散らばる瓦礫を避けながら、大介は常に周囲の警戒を怠らない。


 時間が経つにつれて廊下の緊張感は高まり続けていた。

 非常出口の扉が目前に迫る中、大介とアンナの足音だけが無機質に響く。

 

 埃臭い空気に僅かに鉄の匂いが混じり、遠くで微かに銃声が聞こえたかと思えば、それすらも消えて静寂が支配する。


 この薄暗い建物の中、どんな脅威が次に現れるのか予想がつかない。

 そんな状況でアンナの動揺は隠しようもなく、彼女の震える声が大介の耳に届く。

 

「グールさん……お父さん無事でしょうか……?」

「さあな。無事だったら褒めてやるよ。無事じゃなかったら――まあ、その時考えりゃいいさ」


 肩を竦めて大介は冷淡に返答した。

 その表情にはほんの少しも心配の色はなく、むしろ苛立ちを含んでいるようにさえ見えた。

 そして、ようやく非常出口に辿り着いた二人を迎えたのは和真である。


 だが、その姿は異様だ。彼は銃を構え、目は血走り、汗だくになりながら荒々しい息を吐いている。

 

「お”ら”ぁ”! かかってこいや! 我が一族の野望が絶たれようとも、この血脈だけは絶やせはせんぞ!」


 銃を振り回しながら和真は叫んでいた。

 その背後には、いくつもの死体が転がっており、血の臭いが鼻を刺す。

 

「おいおい、演説でも始めるのか? 俺を観客にする気なら、もう少し面白いネタを持ってこい」


 呆れたように、頭を掻きながら大介は、ぼやいた。

 

「な、なんだと!?」


 目を丸くしながら和真は振り向くと、その銃口が一瞬大介の元に向けられる。

 

「おっと、それ以上やると――俺が嬢ちゃん(アンナ)の前で親父の葬式を開く羽目になるぜ」


 軽く手を挙げて大介は冷ややかに笑う。

 だが、その目だけは笑っておらず、むしろ鋭い光を放っている。


 すると和真は正気を取り戻したかのように銃を下ろした。

 

「お父さん、大丈夫!? 一体何人の敵を殺したんですか!」


 彼へと駆け寄りながら、アンナは心配そうに声を掛ける。


「おい、吞気に話している暇はねぇぞ。ようやくアンナを取り戻したんだ。お前ら二人は、さっさとここを出て行け」


 親子の会話を遮るようにして大介は口を開くと、救出してきたアンナを和真の前へと強引に押し出す。

 

「……あ、ああ、そうだな。で? ここを出たら俺達は、一体どこへ行ったらいいんだ?」


 反射的に和真は聞き返す。


「平和特区だ。そこに行けば当分の面倒は見て貰える。あそこには一、アンナを連れて行ったからな。何の心配もなくは入れるはずだぜ」


 素っ気ない態度を取りながら大介は答えた。

 

「ちょっと、待ってください! グールさんも、一緒に来てくださいよ! もう地上の世界なんて懲り懲りです! 私たちと一緒に安全なネオテックスで暮らしましょうよ!」


 二人のやり取りを聞いていたアンナは慌てた様子で声を荒げる。


「へっ。悪いな、お嬢ちゃん。俺は群れるのが嫌いでね。それに――――」


 にやりと笑いながら大介は言い放つ。


「誰かが、ここを守らなければ、お前らが安全に出られるわけねぇだろ」


 肩を竦めながら彼は、矢継ぎ早に言葉を続けた。


「で、でも……!」


 アンナは言葉を詰まらせる。

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