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核戦争から二百年、人類に嫌われるグールの俺だが、なぜか少女にだけ懐かれたので最後まで面倒を見ることにした  作者: R666
第四章

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第13話 隊長の私怨

「この私が! お前を! 殺しに来たぞ!」


 ジェシカが叫ぶ。その言葉に応じるかのように彼女の部下達が、VRLや灰の信徒の兵士たちに向けて一斉射撃を開始した。

 弾丸が火花を散らし、三つ巴の戦いは苛烈を極める。


「なるほどな。恐らくジェシカは部下を使って、俺を尾行していたんだろうな。そして、このタイミングで仕掛けてきたわけか」


 周囲の様子を見降ろしながら大介は、胸中で考えを巡らせながら溜息を吐き呟いた。

 場面は混乱の極みに達していたが、彼の思考は冷静そのものである。


「ぶはっ……まだ……終わっていない……」


 胸部を撃たれて倒れていた葛葉は、地面に横たわったまま荒い息を出していた。

 彼の軍服は深紅の血で染まり、意識が遠のいてゆくような感覚に抗うようにして、何度も瞼を閉じたり開けたりしている。


 しかし、その瞳には微かながらも戦意が宿っていた。

 やがて葛葉は震える手をつなぎながら、ゆっくりと身体を起こす。


「はぁはぁ……まだ死ねないっ……!」


 苦痛に歪んだ表情を浮かべつつも、葛葉は地面に転がる散弾銃に手を掛けた。

 ふらつきながらも立ち上がると、彼は近くを通りかかるジェシカたちの姿を、視界の端に捉えた様子。


「ただでは死なんぞ……ッ!」


 その言葉に力強さを込めると同時に葛葉は、散弾銃の安全装置を解除し迷いなく引き金を引いた。

 軽い銃声と共に放たれたが弾丸は、ヴォイダーの一人を正確に射抜き、そのまま次々と標的を捉えながら撃ち続ける。


 ジェシカの部下達は、悲鳴を上げながらも倒れ込んでゆく。

 その中でも赤いロングヘアを響かせたジェシカは、一瞬驚きの表情を浮かべたものの直ぐに冷静な笑みを浮かべて、身を翻し遮蔽物へと隠れた。


「また、しぶとい連中が……厄介ね」


 ジェシカの声には嘲笑が混じり、薄く開いた唇から冷たい言葉が滑り出る。

 その艶やかな姿は戦場の中において、異質でありながらも圧倒的な存在感を放つ。


 彼女の長い赤髪は煙の中でも尚も光を帯びたように揺れ、タイトな黒い皮革パンツは脚線美を際立たせる。


 その鋭い金色の瞳が、次の標的を定めるように鋭く光ると、両手に握ったトンプソンが閃いた。

 その時、空を旋回していた戦闘機が狙いを定めたかのように急降下を始める。


 機体は濃い黒色で無数の傷や汚れが刻まれており、いかにも長年戦場を掛けて来たような風格を感じさせた。


 搭載されたガトリングが唸りを上げながら火を噴き、地上のヴォイダーや灰の信徒の兵士たちに向けて弾丸の嵐を浴びせかける。


「くそっ、こんなところこで……!」


 ジェシカは忌々しげに唇を噛み、部下達に身を伏せるように指示を飛ばした。

 しかし、戦闘機から放たれたミサイルが地上に着弾すると、激しい爆音と共に衝撃波が辺りを包み込む。


 土埃と煙が一気に立ち上がり、視界を完全に奪い去る。

 ジェシカの部下達は悲鳴を上げながら四散し、地面に倒れ込む者も居れば逃げ惑う者もいた。


 そんな光景を大介は静かに眺めていたが、次第に視界が土埃で覆われていくのを見て、溜息をつきながら意識を外の景色から切り離す。


「まったく、面倒なことばっかりだ。こんな騒ぎの中で一体、どうやって生き延びろってんだ?」


 眉間に皴を寄せながら彼は振り返り、部屋の中に視線を移した。

 その先にはアンナと和真が佇んでいる。

 アンナは不安そうな顔つきで和真の手を握り締めていたが、その青白い顔に浮かぶ緊張感は隠しようがない。


 その時、国会議事堂の中から激しい銃撃音や爆発音が響き渡り、壁や床が微かに揺れた。

 壁に掛けられた古びた絵画や、豪華な装飾も振動で揺れ、埃が舞い上がる。

 そして突如として、部屋の扉が勢いよく開け放たれた。

 

 その背後からヴォイダーの集団も続き、両陣営は部屋の中で激しい戦闘を開始した。

 大介は反射的に身を屈めて、その光景を冷静に見つめ肩越しに、アンナと和真へと視線を送る。


「やれやれ、ついにここまで来たか。勝手にやりあってくれるのは有り難いが……巻き込まれるのは御免だぜ」


 大介は低く呟きながら壁際に身を寄せる。

 彼の手には既に銃が握られており、冷徹な視線で戦況を見極めていた。

 一方でアンナと和真は部屋の隅で、必死に物影に隠れている。


 アンナの父親は怯えた表情で、壁に背を預けて小刻みに震えていた。

 その様子を一瞥したアンナは、眉間に皴を寄せながら、状況を理解して口を閉ざす。


「おい、まだ戦える奴はいるか?」


 大介が短く声を掛けると、アンナはちらりと彼を見上げ、答えようとした矢先だった。

 一発の銃弾が物影を突き抜け、アンナの頬を掠める。

 鋭い痛みが走り、彼女の白い肌に、薄い血の筋が浮かび上がった。


「痛”っ”!? ちっ……やりやがったな、この野郎!」


 彼女は驚きの声を上げると、すぐに怒りが込み上げた様子。

 それまで物静かにしていたアンナが突然激昂し、腰の拳銃嚢から小型の拳銃を引き抜く。


 その動作は速く躊躇いがない。

 彼女の水色の瞳は鋭く光り、冷静さを保ちながらも、敵への怒りを露わにしている。


「おい、落ち着けよ……」


 大介が静止しようとしたが、アンナは耳を貸さない。

 そのまま身を乗り出して、部屋に侵入してくる敵に向けて、引き金を引いた。


 乾いた銃声が部屋に響き渡り、ヴォイダーの一人が崩れ落ちる。

 それを皮切りに彼女は次々と銃弾を放ち、命中した敵が一人、また一人と床に倒れてゆく。


「よし、いいぞ! アンナ!」


 大介は彼女の奮闘を見て、微かに笑みを浮かべると、自身も戦闘に加わる。

 部屋の中央で戦闘を繰り広げる、VRLの兵士たちとヴォイダーたちに向けて、的確に銃弾を送り込んでゆく。


 その動きには一切の迷いがなく、まるで死神が魂を刈り取るかのような冷静さだ。

 

「ひぃっ……や、やめてくれ! 死にたくない、死にたくないんだ!」


 和真は心底恐怖しているようで、怯えの色に染まる声を上げ壁際で縮こまる。

 手を頭に乗せて身体を丸める様子は、戦場で完全に無気力な存在を象徴していた。

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