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核戦争から二百年、人類に嫌われるグールの俺だが、なぜか少女にだけ懐かれたので最後まで面倒を見ることにした  作者: R666
第四章

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第12話 ロケットランチャー

「おいおい、こりゃぁまるでハリウッド映画並みのアクションだなぁ! 脚本家は一体誰だぁ?」


 軽口を叩きながら視線を巡らせる中で、大介の目はとある一点で止まる。

 数多のVRL兵士の中に見覚えのある、二つの影を発見したのだ。


「おおっと、これは……まさか再登場ってやつか?」


 大介が目を凝らして確認すると、そこに居たのはナターシャと葛葉だったのである。

 まず視界に飛び込んできたのはナターシャ、彼女の漆黒の長髪は軽くウェーブが掛かり、そのシルエットが美しく戦場の汚濁と対照的だ。


 その髪は光を反射して滑らかに煌めきながら、風に揺れる度に頬や首筋を撫でている。

 彼女が纏うパワーアーマーの重厚な装甲が、その物々しさを際立たせていた。


「ったく、アイツも懲りない奴だな。だがまあ……軍人ってのは上の命令は絶対だからな。ある意味では同情するぜ」


 無意識のうちに呟きながら彼女の、一挙手一投足を見逃さないように注視する。

 そして次に目を移した先には葛葉が居た。

 銀髪のミディアムレイヤーに、赤や黒のハイライトを入れた派手な髪が、戦場の緊張感を嘲笑うかのように目立つ。


 彼の服装はVRL規定のタクティカル革製の服を雑に着崩しており、袖を肘の上まで捲り上げて襟元を大きく開けている為、やる気があるのかないのか分からない。


「あー、アイツは相変わらず血生臭い戦場に、似つかわしくないファッションをしていやがるな。ったく、阿保だぜ」

 

 彼を眺めながら淡々とした口調で大介は吐き捨てた。

 そんな葛葉の手には、相手を肉片に変える為の、散弾銃が握られている。


 装備車の動きに合わせて軽く光るその銃身には、彼が刻んだであろう無数の傷跡が走っており、なんども修羅場を潜り抜けてきたようだ。

 大介は、そんな彼の軽薄そうな笑みを見て、少しだけ肩の力が抜ける。


「アイツが居るだけで、この戦場もコメディ映画のように見えてくるな」


 そんな風に彼は独り言を呟いたものの、この場の緊張感は依然として変わらない。


「まったく、面倒な奴らだな。連中も狙いは再生のカードキーってか?」


 低く呟くと大介は、地上で戦う者たちから意識を外して、軽く身嗜みを整える。

 するとその瞬間、何処からか銃弾が飛来し、彼の頬を掠めてゆく。


 弾道の鈍い音と共に頬に走る熱い痛みが、大介を瞬時に現実へと戻す。

 

「なにを吞気に戦争を、高みの見物しているんですか! いくら貴方でも死にますよ!」


 低く身を屈めながらアンナは、叱咤とも取れる声を上げた。

 彼女は焦りのあまり大胆な仕草(ジェスチャー)を取りながら大介に伏せるように指示を出す。


「はいはい、わかったわかった」


 短く答えると大介は軽く肩を竦めた後、指示に従うようにして身を低くして地に伏せる。

 そして再び彼は視線を外に向けて状況を注視すると、一際目立つ装甲を身に纏うナターシャの姿に目が留まった。


 その金属製の装甲は鈍い光沢を放つ。

 パワーアーマーの肩部には部隊の紋章が彫り込まれており、それが彼女の存在を更に際立たせた。


 ナターシャは巨大なロケットランチャー(RPG)を肩に担ぎ、周囲の仲間からもう一本受けると、息をつめたように狙いを定める。


「あの女、国会議事堂の壁に向けて撃つ気か……」


 そう大介が呟いた瞬間、ナターシャがロケットランチャーの引き金を立て続けに引いた。

 轟音と共に発射されたロケット弾は、空を切り裂いて議事堂の壁へと突き進む。


 続けて二発目が放たれると、壁全体が揺れて、大きな破片が飛び散る。

 濃い灰色の煙と粉塵が立ち込める中、議事堂の壁に巨大な穴が開く。


「葛葉ッ! 突撃の合図を全軍に知らせよ!」


 ナターシャが咆哮するように叫ぶ。

 そして葛葉は、その命令に応じるかのようにラッパを取り出して、突撃の音色を吹き鳴らす。


 しかしその直後、灰の信徒の兵士が放った銃弾が、葛葉の腹部を貫いた。

 葛葉はラップを吹く間もなく崩れ落ち、痛みに顔を歪めながら地面に倒れ込む。


「これ……ちょっと……あ……」


 彼は苦し気に言葉を漏らし、そのまま動かなくなった。

 だが血気盛んなVRLの兵士たちは、一人の犠牲に怯むことなく突撃を続ける。

 

 重厚な装甲を纏い雄叫びを上げながら次々に、灰の信徒の兵士たちを蹂躙してゆく。

 ナターシャはその先頭に立ち、パワーアーマーの頑丈な足取りで国会議事堂へと進撃した。


「ついにブリキの兵隊共が、本格的に参戦してきたな。こりゃぁ、厄介事が更に厄介事になる前に、ここからおさらばした方がいいな」


 大介の声は軽い調子を装うが、内心の重苦しさを隠しきれていない。

 硝煙が漂う空気を深く吸い込みながら彼は、外の景色から意識を反らそうと目を閉じた。


 しかし、ふと視界の端に映る動く影に、再び目を向ける。

 明るい日差しの中でも際立つ、艶やかな赤みを帯びた髪。

 それを見た瞬間、大介の目が見開かれる。


「おお、あいつ生きていたのか。悪運の強い奴だな」


 小さく笑みを浮かべながら大介は言葉を漏らした。

 その視線の先に居たのは、いつぞやの桜井ジェシカである。


 ジェシカの姿は戦場においても異彩を放つ。

 彼女の腰まで届く艶やかな赤髪は、血を彷彿とさせる深い輝きを放ち、陽光の中で妖しく揺れていた。


 その瞳は金色に近いアンバーで、標的を見定める冷徹な光を湛えている。

 片目を負傷している筈の彼女だが、その表情には痛みを感じさせるものはなく、むしろ狂気と執念が浮かび上がっていた。


 ジェシカの装いは、戦場という場においても、隙のない官能性を帯びている。

 黒いロングコートを肩から無造作に羽織り、その下には肌に密着した黒の皮革(レザー)襯衣を身に付けていた。


 襯衣のジッパーは胸元を僅かに開けられ、その控えめな露出が逆に見る者の視線を奪う。

 下半身にはタイトなレザーパンツを履き、しなやかな脚のラインを強調している。


 膝上までのタクティカル深靴には擦れた跡があり、彼女がここに来るまで長旅を経験した事を物語るかのようだ。


 ジェシカは両手にトンプソン・サブマシンを握り締め、そのまま部下達を引き連れて堂々と歩みを進めている。


 その足取りには一切の迷いがなく、彼女を取り巻くヴォイダー(部下)たちも、そのカリスマに引き寄せられるかのように、一丸となって進軍している。


「おい、ホロコースト! 聞こえているか!」


 ジェシカの怒声が周囲に響く。

 その声には明瞭に大介を狙うもので、彼の耳にも確実に届いた。

 彼女の叫び声には怒りと執念が詰まり、それは戦場の喧騒の中でも際立つ。

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