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核戦争から二百年、人類に嫌われるグールの俺だが、なぜか少女にだけ懐かれたので最後まで面倒を見ることにした  作者: R666
第四章

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第10話 簡単に人を殺す、グールさん

「あの男はくれてやる……だが! 再生の鍵だけは絶対に渡さん! それだけは譲れない! 決して!」


 彼女は大介に向けて低く、しかし毅然とした声を発する。

 その声音は冷静そのものでありながら、確固たる意思が込められている様子だ。


「そいつぁ……困ったな」


 相手の言葉を聞きながらも大介は、肩を竦めて軽く皮肉めいた笑みを浮かべる。

 その笑みには挑発と、余裕が混ざり合う。


 部屋の隅ではアンナと和真が腰を低くし、四つん這いになって戦闘の余波に、巻き込まれないように動いていた。


 アンナは和真の肩を支えながら、周囲を警戒するように目を走らせている。

 その美しい彼女の顔には緊張と不安が色濃く浮かび、薄く引かれた唇から微かな息遣いが漏れていた。


 一方で大介と深月の間に生じる緊張は限界まで高まる。

 彼女は刀を構え直すと銃も構えて、再び戦闘態勢を整えた。

 警報の光を受けて、刀の刃が冷たい輝きを放つ。


「さぁて……始めるか」


 大介が呟いた瞬間、美月が動いた。

 鋭い一閃が大介に目掛けて繰り出される。

 彼は間一髪で、その刃を避け同時に、ナイフで反撃を試みた。


 だが美月は次の瞬間には銃を構え、至近距離から弾丸を放つ。

 銃声が室内に響き渡り、大介の足元に火花が散る。


 彼は辛うじて飛び退きながら、床に転がるマグナムピストルを、華麗に拾い上げて応戦した。

 その動きは、まさに神業とも言える反射神経を示している。


「ちっ、やるな……。さすがは灰の信徒の棟梁だ」


 息を整えながら大介は低く呟く。

 その言葉には戦いに対する興奮と、相手への評価が滲んでいた。


 美月の攻撃は激しさを増してゆく。

 彼女は刀での至近距離から、銃による中距離戦へと瞬時に切り替え、トリッキーな攻撃を仕掛ける。

 その巧みな戦法は大介を圧倒するようでありながらも、それを冷静にかわし彼は反撃の機会を伺う。


「分かってんのか? もうすぐここは、ブリキの兵隊に占領されて、俺もお前も殺されるぞ」


 相手との間合いを取りつつ大介は、冷ややかな声で問い掛けた。

 

「それでも構わない。再生の鍵を渡すくらいなら、私はここで果てる」


 彼の言葉に美月は、一瞬たりとも動揺することなく、鋭い瞳で大介を睨み返す。

 彼女の声には揺るぎない決意が宿されており、その覚悟は大介にも伝わるほど。


 そして――二人の戦いが更に激化して刃と銃弾が交錯する中、アンナと和真は部屋の隅で固唾を飲んで見守る以外に手立てがない。


 それから二人の激しい戦闘が目の前で繰り広げられると、アンナの表情には段々と恐怖や焦りではなく、苛立ちの色が浮かんでいた。


 彼女の胸元に浮かぶ汗の輝きが、警報ランプの光で赤く照らされている。

 アンナは暫く、その場で動きを止めていたが、ついに堪えきれなくなったのか腰を上げた。


「待ってください!」


 突然声を上げてアンナは、大介と美月の間に飛び出す。


「ちっ、危なねぇだろうが!」


 反射的に大介は叫ぶ。

 美月の鋭い刃の一閃が停止する。

 彼女は刃を抜いた状態でアンナを見下ろし、その眉間に深い皴を寄せた。


「アンナッ!」


 恐怖の声を漏らしながら和真は、彼女を引き留めようとするが、それを無視してアンナは前に出る。


「お願いです! 二人とも、もうやめてください!」


 震えながらも必死に、アンナは言葉を紡ぐ。

 その大きな瞳には涙が滲み、赤い光がその涙を煌めかせている。

 純白の髪は汗で首筋に張り付き、荒い息遣いが艶やかな唇から漏れてゆく。


「引っ込んでなさいよ! これはお子様が口を出していい話ではない!」


 その場で動かず大介に睨みを利かせながら美月は低く呟いた。

 

「嫌です! 私は引きません! ……お願いですから、話し合いましょうよ! こんな無意味な争い辞めてください!」


 首を大きく横に振るとアンナは、両手を広げて自らの主張を続ける。

 

「話し合いだと? はっ、平和ボケも甚だしいな。この状況で話し合いなど成立すると思うか?」


 彼女の言葉を聞いて、美月は怒気を孕んだ言葉を吐くと、表情が歪む。

 

「おいおい、棟梁。俺もその意見には賛成だぜ。こんな無意味な争いは時間の無駄だ」


 皮肉めいた笑みを浮かべながら、大介は銃を構えたまま応じた。

 だがその時、部屋の扉が突然勢いよく開かれる。

 武装した美月の部下が数名、緊張感を巡らせた表情で飛び込んできた。


「っ!? 待て、お前たち! さがれッ!」


 反射的に美月は、鬼気迫る声で叫ぶ。

 するとそれを聞いて瞬時に大介は、腰のポーチから手榴弾を取り出して投げる。


 彼が手榴弾を即座に投擲した理由は、偏に戦闘狂の本能を発揮させた結果だ。

 それは増える敵の戦力を即座に排除する為であり、投擲された手榴弾は放物線を描いて警備兵たちの中央に落ちた。


 しかし警備兵の一人が反射的に、それを掴んで窓へと投げる事で場の安全を確保しようとした瞬間、耳を劈くような爆発音が室内に轟く。


 轟音と共に警備兵たちの体が爆風により吹き飛ばされる。

 血肉が壁や天井に叩きつけられ、破片と化した骨が床に散らばった。


 爆発の衝撃で赤い警報ランプが一瞬だけ停止し、部屋は暗闇に包まれる。

 そして再び赤い光が灯ると、そこには返り血を浴びたアンナの姿があった。

 顔や首筋、さらには衣服にまで赤黒い血が飛び散り、状態は悲惨である。


 彼女は呆然と立ち尽くし、震える手で顔に付いた血を払い落した。


「もう! どうして、どうして! 貴方はそんなに人を簡単に殺すんですか!」


 アンナは声を震わせながら、怒りに満ちた目で大介を睨む。

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