第31話 最後の旅路へ
「死なないように、か。それは俺達の得意分野じゃねえか。まあ、期待だけしておけ」
彼の口調は冷たく、何処か突き放したような響きを持つが、微かに皮肉交じりのユーモアも感じ取れる。
「何度でも言いますが本当に、ここまで良くしていただいて、ありがとうございます! カナエさんたちが居なかったら、こんなに元気な状態で、会いに行く事なんて出来ませんでした!」
大介の軽口を聞きながらもアンナは目を輝かせると体をカナエへと向き直した。
そんな彼女の声には明るさと真心が溢れており、その天真爛漫な笑顔は周囲の兵士たちの心も一瞬和らげるようである。
そして平和守護隊の者たちは、武骨な装備に身を包みながらも、どこか名残惜しそうな表情で二人を見つめていた。
その中にはアンナの挨拶に手を振り返す者もいれば、小声で『元気でな!』と呟く者も居る。
だが、そこでふと大介がアンナの方へと振り返ると、彼女の輝くような笑顔を見て一瞬だけ目を細めた。
「行くぞ、時間が無駄になる」
再び前を向きながら、淡々とした声で言い放つ。
「必ずお父さんを助け出して、またここに戻ってきます! その時は、ちゃんと御礼をさせてくださいね!」
彼の言葉に頷くとアンナは再びカナエに顔を向けて、それだけ言い残してから大介の後を小走りで追う。
カナエは、その姿を見送りながら、ふっと小さく息をついた。
「キミ達なら、きっと大丈夫だろう」
その彼の声は、あまりにも小さく、誰にも聞こえることはない。
そうして平和特区の門から二人が出ると、外の世界へと再び歩みを進めてゆく。
門の外には相変わらず、荒廃した世界が待ち受けている。
旧時代の建物の残骸が朽ち果て、所々に錆びついた車両が転がり落ちていた。
大地はひび割れ雑草が、そこかしこから顔を覗かせている。
その風景は冷たい朝の光の中で静かに広がるようだ。
「旧東京の国会議事堂跡地って、灰の信徒のアジトなんですよね? グールさんが、そう教えてくれた時、最初は驚きましたけど、なんだがわくわくしてきました!」
一歩一歩足を進めながら、アンナは大介の横顔を見る。
「わくわく、ねぇ。あそこは、だだの廃墟だ。その中には山ほどの信徒しかいねぇ。それが楽しいってんなら、お前も相当にイカれてやがるな」
淡々と歩きながら大介は、ちらりと彼女を見下ろす。
「それでも、お父さんが居る可能性が高いなら、どんな場所だって行きます!」
彼の言葉に屈することなく、アンナは笑顔を見せて力強く答えた。
その声は澄んでいて、朝の冷たい風にも負けないほどの、熱意が込められている様子。
旧東京への道のりは、まだ始まったばかりである。
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