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核戦争から二百年、人類に嫌われるグールの俺だが、なぜか少女にだけ懐かれたので最後まで面倒を見ることにした  作者: R666
第三章

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第29話 父親の情報

「お二人とも、なにも言わずに居なくなるなんて、寂しいじゃないですか。お見送りぐらいさせて下さいよ。特にキミのような魅力的なグール……いや、失礼。”戦闘狂グール”とは、もう少し一緒に居たかったんだけどね」


 肩を竦めるような仕草をしながら、カナエはわざとらしく溜息をついた。


「見た感じ、まだ寝起きだっつうのに、よくそんな冗談を飛ばせるな」


 薄く笑いながらも大介は、冷たい視線をカナエに向ける。


「それにしても、アンナさん。ホロコーストこと、よろしく頼む。キミならきっと、この男を手懐けることだって出来るだろうしね。まるで母親が手のかかる息子を育てるみたいに」


 突然、カナエはアンナの方に視線を向けて、軽い口調で話し始めた。


「ええ、任せて下さい! こんな戦闘狂グールと仲良くできるのは、きっと私ぐらいですからっ!」


 笑顔を浮かべて胸を張りながら、アンナは自信満々に答える。

 だがその瞬間、大介の拳が彼女の頭に軽く振り下ろされた。

 鈍い音が響き、アンナは目を丸くして振り向く。


「いった……!? な、なにをするんですか!」


 頬を膨らませて彼女は怒りを露わにしている。


「誰が戦闘狂グールだ」


 冷静な口調で言い放つ大介だが、その目は何処か楽し気な光も滲む。


「……さて、名残惜しいけど、そろそろ出発かな? お二人さん」


 穏やかな口調で問い掛けながら、カナエは二人へと視線を交互に向けた。


「はい! カナエさん、本当にありがとうございました! あんな快適な場所に泊めていただいて、感謝しかありません! あと指の治療も!」


 とびきりの明るい声でアンナは、感謝の言葉を口にして頭を下げる。


「世話になったのは確かだが、流石にもう充分だな。これ以上、ここに居ても腐るだけだ」


 彼女の言動を横で見ながら大介は、両腕を組みながら無愛想に言い放つ。


「まあまあ、そんな冷たいこと言わないで下さいよ。ははっ……さて、お時間ですね。これからの旅路も頑張ってください」


 白い歯を晒しながらカナエは僅かに頭を下げると、まるで彼らの未来に幸運が訪れるよう、祈るように自身の胸に手を当てた。


「本当に色々と、ありがとうございましたぁ!」


 そう言いながらアンナは手を大きく振ると、先に歩き始めた大介の後を追うように足を進める。


「気を付けて下さいね。また会えることを楽しみにしています」


 彼女の仕草に応じるようにカナエも、手を振りながら笑顔で二人を送り出した。

 そして大介とアンナは平和特区を出て数歩だけ足を進めると――突然カナエの通信機が騒々しく鳴り響く。


 その音に反応して大介とアンナは足を止めて振り返る。

 カナエの表情は柔らかなものから一変し、真剣な眼差しで通信機器を操作していた。


 彼の部下達も動揺を隠せず、緊張した雰囲気が場を包み込む。


「なにかあったんですか?」


 心配そうな表情でアンナは問い掛けた。


「ほっとけ」


 彼女の言葉を遮るようにして大介は、冷たく言い放ちながら興味を隠せない様子で、カナエの動きを観察している。


「こちら平和守護隊のリーダー、カナエだ。どうした? なにか問題ごとか?」


 通信機を手にすると、冷静な口調で彼は応答し、向こうからの報告に耳を傾けた。

 その間、大介とアンナは無言で彼を見つめている。


 通信が続くにつれて、カナエの表情は徐々に険しいものへと変わり、額に脂汗が滲み始めた。

 やがて通信を終えると彼は、ゆっくりと大介たちの方へと向き直る。


 その目には一種の緊張感が宿り、先程までの軽薄な態度は完全に影を潜めていた。

 

「なんだ?」


 冷ややかに大介は尋ねる。


「どうかしましたか? カナエさん?」


 アンナも少し不安気な声を添えた。


「……たった今、灰の(アッシュ・)信徒(ファナティクス)と呼ばれる組織に、内偵として送り出していた部下から連絡が入った」


 重々しく頷くとカナエはアンナに視線を向けるが、その目には奇妙な真剣さが宿り言葉を選ぶようにして話し始める。


「灰の信徒……?」

「ええ、そうです。部下からの情報によると、どうやらアンナさんの父親は現在、その組織に捕らえられているようです」


 首を傾げるアンナに対して、カナエは更に話を続けた。

 

「えっ!? お、お父さんが……っ!?」


 彼の言葉を聞いた瞬間、アンナの顔には驚きと喜びが入り混じる表情が浮かぶ。

 一方で大介は、その組織の名前に聞き覚えがあり眉を顰めた。


「灰の信徒か……あまり関わりたくない連中だな」


 彼の声には明らかな嫌悪が込められている。

 

「僕も彼女らのやり方には感心しません」


 大きく頷いてカナエは強気な口調で放つ。


「カナエさん! 父の情報を教えてくれて、本当にありがとうございます! ……でも、その灰の信徒って一体どんな組織なんですか? 名前からして怖そうですけど……」


 少し考え込むような仕草を見せた後、父親の存在に対する喜びを抑えきれず、瞳を輝かせながらカナエに感謝の意を伝えつつも同時に疑問を口にした。


「ふっ、流石にネオテックス生まれだな。何も知らねぇときた。……いいか? 灰の信徒ってのはな、簡単に言えば日本を再生するっていう、大義名分を掲げた連中だ。もっとも、そのやり方は正気の沙汰とは言えねえけどな」


 どこか投げやりな声で大介は説明していくが、それでもその語りには鋭い切れ味がある。

 アンナは真剣な表情で耳を傾けていた。


 その艶やかな髪が風に揺れ時折、陽の光を受けて滑らかな光沢を放つ。

 彼女の密着的な服装は、身体の曲線を際立たせながらも、妙に無垢な印象を与える。

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