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核戦争から二百年、人類に嫌われるグールの俺だが、なぜか少女にだけ懐かれたので最後まで面倒を見ることにした  作者: R666
第三章

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第28話 アンナさん、下着姿を公開

「ですよねぇ! 自業自得ですよ!」


 笑顔で答えるアンナだが、その目には何処か緊張の色も微かに残されていた。

 そして彼女の話が終わり室内に静寂が訪れると、大介は静かに目を閉じ全身の力を抜いて椅子の背に全てを預け楽な姿勢を取ると、改めて昨日のホテル内での出来事を思い返す。


 まずはアンナが浴槽で繰り広げた騒動が脳裏に鮮明に蘇る。

 

『久しぶりに、こんなに大きいお風呂に入れます! グールさんも、一緒にどうですか?』


 笑顔を浮かべながら、浴室の扉から顔を覗かせたアンナの姿は、湯気の向こうで艶やかな輪郭を描いていた。


 濡れた髪が彼女の首筋に沿って滑り落ち、肩越しに垣間見える白い肌が眩しい程である。

 水滴が滴る、その様子に一瞬視界を凝らした大介だが、すぐに肩を竦めながら答えた。


 彼女の天真爛漫な提案は冗談半分だったのかもしれないが、大介からすればあまりにも突拍子もない話である。


 湯船に浸かる音が聞えたあとアンナが、どれほどその時間を満喫していたのかは、一人のような喜びの声から容易に想像がつく。


 さらに彼女が、カナエの粋な計らいで、支給された新品の下着を、手にした時のことだ。

 久しく触れることのなかった清潔で、高品質な布地にアンナは感動し、その感情を隠そうともしないのである。


『ねえ、グールさん! これ、どうですか? 似合いますかね?』


 新品の下着を手に持ちながらアンナは、部屋の中心で優雅に一回転してみせた。

 その動きに合わせて、ふわりと彼女の髪が揺れ、柔らかそうな笑顔が大介を直撃する。


 アンナが持つ下着の色はクリーム色で麗糸(レース)の装飾が施された繊細な見た目(デザイン)だ。

 それを彼女が身に付ける事で、さらに女性らしい魅力が引き立つようである。


『どうでもいいが、そんなもんの感想を俺に聞いてどうすんだよ」

『だって、女性の美的センスって男性の意見も大事だって、戦前の雑誌で読んだんですよ! ほら、率直にどう思うか教えて下さいよ!』


 大介はわざとらしく目を逸らしながら肩を竦めて答えたが、アンナは尚も真剣な眼差しを晒して熱心な言葉を投げ掛け続けた。


 そして朝食の時間も印象的である。

 特にアンナにとって久々の”まともな食事”が特別な体験となったようだ。


『これ……人肉じゃないですよね?』


 彼女は目の前に並べられた料理に、目を輝かせながら一口一口味わい、そのたびに小さな感嘆の声を漏らしていたのである。


 パンやスープ、野菜が添えられたシチュー、それらはこの世界では貴重な贅沢品であり、アンナの口に久しく届かなかったものだ。


『本当に神様、ありがとうございます! こんな幸せがあるなんて、私……生きててよかったです!』


 両手を合わせて感謝を捧げるアンナの姿を横目に、大介は淡々と自分の分を平らげていたのである。

 しかし、彼が最も困惑したのは就寝の出来事だ。


 夜が更けて部屋の明かりを消した後、ようやくベッドの上で横になった大介だが、不意に耳元に感じる濡れた感触に目を開けたのである。


『……なにしてんだ、アンナ』

『いやだなぁ、グールさん。せっかく一緒に寝てるんですから、もっと仲良くしましょうよ!』


 大介に低く静かな声で問い掛けられ、アンナは小悪魔のような笑みを零しながら返事をした。

 けれど、その言葉と共に彼女は手を相手の股間へと伸ばしてきたが、大介は素早くその手を捉えたのである。


 そして、しばらくの押し問答の末に大介は、アンナを縄で亀甲縛りにして、ベッドに投げ入れ文字通り”拘束”状態にした。

 そのあと平和を手に入れた大介は再び眠りに就くと、無事に安眠することが出来たのである。

 

「ったく……無駄な記憶を思い返しちまったな。やれやれ」


 うなされるように閉じていた目を開けて記憶の振り帰りを中断すると、大介は片手で自身の頭を抱えて重たい息を吐き捨てた。


 しかし、彼が記憶の振り返りをしていた間に、容易に数時間も経過していたようで、旅立ちの時が迫る。


「はぁ……。俺の旅は、まだまだ終わらねぇってな。おい、アンナ! この街を出て行く準備をしろ」


 小さく溜息を吐くと椅子から腰を上げて立ち、大介はベッドの上で涎を垂らして寝ていた彼女に視線を向けて大声で指示を出す。


「んひゃっ……!? は、はい! わかりまひた~……」


 突然の大声で起こされるとアンナは、目を閉じたまま自身の手の甲で涎を拭い、寝ぼけた返事をしながらベッドから降りようとしたのだが、その途中で重心が崩れたようで転がり落ちると、悲鳴すら上げることなく床に倒れた。


 大介は、そんな彼女を横目で見つつも無視を決め込むと、自分の身支度を手早く済ませてゆく。

 それから数十分ほど遅れてから、完全なる覚醒を果たしたアンナも、慌てて旅立ちの為の身支度を終わらせた。


 そして大介とアンナは全ての身支度を終えてホテルを意気揚々と出ると、当初の目的を果たす為に旧東京へと向かう為に平和特区の門前へと足を進めたのである。


 だが二人が平和特区を出ようとした瞬間、突然として街の奥から複数の足音が鳴り響いた。

 それを聞いて大介とアンナは足を止めると、二人の視線は自ずと音の方へと向けられる。


 そう、その複数の足音の正体とは、彼らの旅立ちの時を察したカナエが、部下を引き連れて現れたからだ。

 カナエは相変わらず飄々とした態度で、軽い笑みを浮かべながら歩み寄る。

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