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核戦争から二百年、人類に嫌われるグールの俺だが、なぜか少女にだけ懐かれたので最後まで面倒を見ることにした  作者: R666
第三章

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第27話 某ホテル

「ああ、そうだ。ちゃーんと部屋の鍵は閉めておいて下さいよ。でないと貴方のケツは、ただでは済まないかも知れません。僕はグールでも喜んでやりますよ、ふふっ」


 大介の傍に一歩だけ近づくと、カナエは声を潜めて囁いた。


「ちっ、くそ野郎。ブービートラップを仕掛けて待っといてやるよ。一緒に熱い夜でも過ごそうぜ、ははっ!」


 彼の言葉と奇妙な笑みが重なり大介は、一瞬だけ目を細めるが次の瞬間には、いつもの軽妙な調子で返して見せる。


 それから二人は部下達に案内されて某ホテルに到着すると、その日はVIP待遇の特権を余す事無く使用した。


 普段の旅では冷えて栄養価も低い缶詰食しか食べられていなかったが、ここでは高級な肉料理を思う存分に堪能し酒を浴びるように飲み、長旅とミュータントとの戦闘で疲労困憊気味の体を解す為に健全なマッサージを数時間ほど受け、地上世界を徘徊して体に付着した様々な有害物質を大浴槽にて洗い流し長風呂を堪能したのである。


 そうしてアンナと大介は平和特区で、極楽浄土の気分を一日掛かりで思う存分に味わうと、瞬く間に次の日の朝を迎えた。


 平和特区の街の朝は静寂に包まれている。

 朝の冷たい空気が、街全体を覆う。


 大介とアンナは完璧な体調で、その朝を迎えていた。

 昨夜はカナエの手配でVIP扱いされ、豪華なもてなしを受け、最高級の部屋に泊まる事が出来たのである。


 二人で同じ部屋に割り当てられたが、別段気まずさを感じるような関係ではない。

 

「この部屋のベッドは相変わらずふかふかで最高ですね! なんど体験しても飽きません!」


 ホテルに在籍する一流のシェフ(料理人)が作る朝食を余す事なく堪能して部屋に戻ると、アンナは無邪気な笑みを浮かべたままベッドに飛び込んだ。


「ほんと、こんなに贅沢しちゃっていいんですかね?」


 ベッドの上に置かれていたクッションを抱えて、アンナはうっとりとした顔を見せる。

 彼女の容姿は何処か艶っぽさもあり、その長い純白の髪はベッドに広がるように垂れ、その動きには無防備としなやかさが混在していた。


 身体に密着した軽装の襯衣は、その曲線美を際立たせており同時に、女性らしい柔らかさを秘めている。アンナの大きな瞳は、何かを期待するように大介を見つめていたが、(大介)はただ軽く肩を竦めるだけだ。


「まあ、今日は思う存分、贅沢っつーのを堪能しておけよ。俺達には明日から、また地獄みたいな道のりが待っているんだからな」


 そう言いながら大介は、簡単な身支度を整える。

 

「そう言えばよ、昨日カジノに行ったんだが……」


 部屋の窓際に置かれていた椅子に腰を掛けると、彼は美味い朝食のおかげで気分が良く、徐に昨日の出来事を話し始めた。


 ――昨晩、大介は部屋に荷物(武器以外)を置くと即座に外出し、街のカジノへと足を運んだのである。

 夜の賑わいを求めて、スロット台の前に立ったのだ。

 カジノのネオンは暗い街の中で異様に輝き、大介の顔に青白い光を投げ掛けている。


『一攫千金ってのは、夢があるもんだな』


 そう呟きながら大介は、スロットにコインを次々に投入してゆく。

 だが結果は散々だ。最初のうちは手元にあったコインが増えたかと思えば、次第に飲まれていき、気がつけば全てを失っていた。


『おいおい。これじゃぁ、ただの募金活動だな』


 苛立ちを隠せない大介はスロット台に一瞥をくれると、ショットガンを取り出して、その台を一発で破壊する。

 銃声が轟き、カジノ全体が凍りつく。


 スタッフが慌てて駆け寄ると、大介は無言でその場を立ち去った。

 しかし彼が店を出ると同時に、スタッフたちが”出禁”の張り紙を、店の入り口に張り付けていたのである。


「ほぇ、それは残念でしたね。でも、お店の物を壊しちゃ駄目ですよ!」


 相槌を打ちながら話を聞いていたアンナは、人差し指を立たせて注意を口にした。


「ああ、そうだな。お前に言われるまでもない」


 肩を竦めて口をへの字にして、適当に受け流す大介。


「……あっ! ねぇねぇ、グールさん! 私の話も聞いてくださいよ!」


 突然、何かを思い出したかのようにアンナ両手を叩くと、口を半開き状態にさせて彼へと顔を向けた。


「勝手に喋ってろ。子守唄代わりにしてやる」

「やったー! えっとですねぇ、私は街の女性たちと色々とお喋りしたんです! 戦前の映画も見させて貰いましたよ。ロマンチックな話しが多くて、つい泣いちゃいそうになりました!」


 適当な返しをされても動じることなく、アンナは身振り手振りを交えながら話を始める。

 その表情は生き生きとしており彼女が昨日の昼間を、どれだけ楽しんだのかが容易に大介には想像できた。


「……それでですね。夜中に街を散策していたら、ちょっと危ないことがあったんですね」


 話が進むにつれてアンナの口調は少し曇り気を帯びてゆく。


「危ないこと?」


 肩を竦めると大介は、崩していた姿勢を僅かに戻す。


「えっと、トイレで用を足してたんですけど……急に変な男が入って来て、襲われそうになっちゃって。さすがに焦りましたけど、すぐに銃を出して撃っちゃいました!」


 そう言うとアンナは、自身の腰に下げた拳銃を、見せびらかすように主張した。


「もちろん、股間を撃ち抜いてやりましたよ! 変態野郎には、お仕置きしないと駄目ですよね!」

「はっ! やるじゃねぇか、ネオテックスガール。見直したぜ。だがよぉ、そいつ今頃どうしてるんだろうな? 女にナニを撃ち抜かれたなんて、恥ずかしくて誰にも言えないだろうけどよ。まあ、家に引きこもって怒りと悲しみで発狂してそうだな。はははっ!」


 彼女の話を聞いて大介は再び姿勢を大きく崩すと、盛大に手を叩きながら相手を侮辱するように笑う。

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