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核戦争から二百年、人類に嫌われるグールの俺だが、なぜか少女にだけ懐かれたので最後まで面倒を見ることにした  作者: R666
第三章

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第25話 足りない物資

「あとで耳を沢山、舐めますからね! べろべろっと!」


 大介を睨みつけるアンナは突然、何かを思いついたように、悪戯じみた笑みを浮かべた。

 その言葉は彼女の羞恥心を隠す為のものであるかのように響く。


「お前、本当に馬鹿だな。そんな脅しが効くと思ってんのか?」


 アンナの言葉に思わず吹き出すと大介は、自身の額に手を当てながら笑みを零す。

 そして一頻り笑い腹部に痛みが生じ始めた頃、そろそろこの平和特区から出るべく大介は、積み上げられた物資へと近づいて中身の確認を行う。


「……おっと、薬品と食料が足りねぇな」


 独り言を放つように大介は呟く。

 その声は低く、乾いた空気に登るように、拡散してゆく。


 しかし、その場に居た全員が確かに、それを聞き得た様子。

 そして大介の手は自然と腰の拳銃嚢へと伸び、いつでもマグナムピストルを抜けるように構える。


「おい、カナエ。こりゃぁ、一体どういうことだ? あれだけ俺にミュータントを殺させておいて、約束した物資がこれで全部かよ?」


 冷ややかな視線をカナエへと向ける大介だが、その言葉には明確な怒気が含まれていた。


「そうなのかい? いやぁ、きっと物資を準備している時に、なにかミスがあったんだろうね。まっ、こういう事もあるさ」


 軽く肩を竦めて薄い笑みを浮かべるカナエ。

 しかし、その言葉を聞いた瞬間、大介の動きは一気に加速した。


 彼は迷うことなく拳銃嚢から、マグナムピストルを引き抜き、カナエの顔へと向ける。

 その動作は、あまりにも迅速で周囲の者たちが、反応する間もないほどだ。


「俺を騙そうってか?」


 そんな大介の声は低く、しかし明確に怒りを孕んでいる。

 目には冷たい光が宿り、銃口の先で震えるカナエの顔を、確実に捉えた。


「おいおい、自殺志願者か? 俺を出し抜こうなんて、そりゃぁ浅はかだな」


 怒気を含んだ軽口を彼は言い放つと一瞬だけ、この場の空気が凍てつく。

 周囲に居たカナエの部下たちが、慌てて突撃銃を構えるが、その動きは何処かぎこちない。

 全員が大介の行動を警戒している事が明らかだ。


「待て、落ち着け。……そんなつもりじゃないさ。ただ、ちょっと手違いがあっただけだ。ほら、冷静になってくれ」


 両手を挙げてカナエは、穏やかな声を口にして、彼を窘めようとする。

 しかし大介は全くと言えるほど動じない。

 銃口を一ミリも動かさず、カナエの目を見据えたまま、再び口を開く。


「冷静だぜ、充分にな。だが、俺は物資が足りない状況を許せるほど寛大じゃねぇんだ。さぁ、どうする? 今すぐ足りない分を持ってくるか、それともここで皆殺しに遭うか、選べよ」


 口元に浮かぶ大介の薄い笑みが更に、ここの場の緊張感を高めた。

 カナエは息を呑み、一瞬視線を泳がせる。


 その動きが大介の緊張を、更に高めたかのように、銃口が微かに動く。

 カナエは諦めたように息をつき、部下達に目配せした。


「……わかった。キミの言う通りだ。……はぁ、気づかれないと思ったんだけどなぁ。流石だね、キミには負けたよ。ほら、そこのキミ。貴重な薬品と食料を直ぐに持ってきて。じゃないと僕の脳みそが、そこら中に飛び散る事になりそうだ」


 自嘲気味に笑いながらカナエは言うと大きく肩を竦める。

 しかし彼の部下達は、大介に銃を向けたまま、一瞬動くのを躊躇した。


 だがカナエの再度の指示に、ようやく動き出す。

 街の倉庫へと向かうべく駆け出した彼らを見送りながら、大介は銃を構えたままカナエを睨み続ける。


 それから暫くして重たい鞄を抱えた者たちが次々に戻ると、彼らは侮蔑の表情を浮かべながら物資が詰め込まれた鞄を大介の足元へと放り投げ捨てた。


 そして最後の一人(若い男)が場に戻り震える手で鞄の彼の元へと投げ捨てたが、その者は明らかに恐怖の感情を抱いている様子。


 そんな相手の態度を見て大介は揶揄うように、足元に転がる鞄に視線を落とすと鋭い笑みを浮かべながら、それを拾い上げて鞄に顔を近づけゾンビ(グール)のように噛みつく仕草を見せる。


「ははっ、俺がマジもんのグールだったら、お前の腕も持っていく所だったぜ」


 冗談めかした口調で大介は言うと、それを聞いて男は飛び退くように、その場を離れた。

 そんな些細な嫌がらせをした後、彼は鞄を手早く開き、その中身を一つ一つ確認し始める。


 乾パン、簡易医療キット、注射器セット、数本の水筒、一つ一つの確認を終える度に、軽く顎を引いて満足そうに大介は頷いていく。


 そして全ての中身を確認し終えた後、彼は無言で銃を下ろした。

 だが、その安堵は一瞬で崩れ去る。


「……これで全部だな?」


 唐突に大介は言い放ち、銃口をカナエに再び向けて構え直した。

 その動きは滑らかで、迷いの欠片も感じさせない。


「おいおい、もう済んだ話だろう? キミが欲しい者は全部渡したんだ。これ以上なにを――」


 苦笑いを浮かべたまま、カナエは一歩後退する。


「侮辱だ。足りない物資を渡して、帳消しになるとでも思ったか? 俺を舐めた代償は、それだけじゃ済まねえよ」


 低い声で放つ大介の言葉には、有無を言わせぬ力が宿るようだ。

 そして、その言葉を聞いた瞬間、カナエの顔から血の気が引いたように白くなる。


 次の瞬間、銃声が空気を裂くように響く。

 マグナムピストルから放たれた銃弾は、正確にカナエの両腿を撃ち抜いた。

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