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核戦争から二百年、人類に嫌われるグールの俺だが、なぜか少女にだけ懐かれたので最後まで面倒を見ることにした  作者: R666
第三章

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第14話 交渉

「……さてと、それじゃあ面談といこうか」

「面談だと? おいおい、勘弁してくれよ。お前は俺を、ここに縛り付けたいのか?」


 彼が淡々と告げる言葉に、大介は溜息をついて返す。


「そんな事はないさ。ただ、話をする時間ぐらいは付き合って欲しい。それくらいの礼儀はあるだろう?」


 そう言うとカナエは回れ右をして平和特区の中へと戻るべく足を進めるが、三歩ほど足を進めた所で振り返ると大介に向けて軽く手招きを行う。


「まったく……面倒なことにならなきゃいいがな」


 気だるい感情を抑えつつも大介は、重たい足を前に進めて彼の後を追うように、平和特区の中にへと入る。


 そして大介はカナエから一方的に話し掛けられつつも、適当に聞きながら済ませると平和特区内を観察してゆく。


 この平和特区の街は、かつて戦火に焼かれた廃墟街を修復し、人々の手により再び命を吹き込まれた場所である。


 外緑は木製の棚や鉄屑を集めた防壁に囲まれ、所々に見張り台が設けられているようだ。

 街の内部は秩序立って、整えられているわけではない。


 瓦礫を取り除いた広場を中心に、市場や簡易な宿屋、鍛冶場や医務室が並ぶ。

 建物の多くは崩れ落ちた煉瓦造りの壁に、木材を組み合わせた再利用の産物であり、屋根は波板や布切れで補強されている。


 それでも内部には温かな灯かりが漏れ、荒野に慣れた旅人でさえ思わず胸を撫で下ろす程の安堵感を与えていた。


 市場では干し肉や保存食、ろ過した水、時には珍しい旧世界の遺物までもが売買されている。

 子供たちは裸足のまま走り回り、笑い声を響かせ、母親たちは洗濯物を干しながら、穏やかな眼差しを向けていた。


 そして広場の一角には、旗が掲げられている。

 風に揺れる、その旗印には平和守護隊の象徴が描かれていた。

 それから大介とカナエは、他愛もない話をしながら、街の市場の一角にて足を止める。


 そして広場の一角には、旗が掲げられている。

 風に揺れる、その旗印には平和守護隊の象徴が描かれていた。

 それから大介とカナエは、他愛もない話をしながら、街の市場の一角にて足を止める。


「ほらよ、この街で揃えられる分だけ揃えてくれ。どうせこの先、旅はもっと厳しくなるだろうからな」


 徐に懐へ手を入れると大介は、ピンバッジ(お金)を取り出して、無造作に彼の足元へと投げ捨てた。

 冷たい金属の塊が、地を転がり金属音が周囲に響く。


「なるほど、了解しました。ですが、これだけのピンバッジで街の物資を、お渡しする訳にはいきません。いくつか条件を付けせて頂きます」


 足元に転がるピンバッジを拾い上げるとカナエは、それを手のひらで確かめながら表情を緩ませつつ交渉を持ちかけた。


 だが、その一言を聞いて大介は眉を顰める。

 

「はぁ? 条件だと? おいおい、金は渡したんだぞ。それが気に入らねぇなら、金を返しやがれ、このホモ野郎」


 肩を竦めながらわざとらしく大きな溜息をつくと、大介の言葉は辛辣そのものだが、その表情には何処か余裕が漂う。


「おっと、それはできません。これは前金として受け取っておきます。……それでキミに物資を譲る条件についてですが――――」

「めんどくせえ前置きは無しだ。さっさと本題のみを話せ」


 カナエがピンバッジを衣嚢に入れる所を見つつ、大介は両腕を組みながら威圧的な雰囲気を全身から放つ。


「はいはい、分かったよ。まずこの街の外れにある廃墟街、そこにミュータントどもが住み着いている。アイツらが若い女を攫ったり、家畜を殺したり、この平和特区に害を及ぼしてるんだ」


 そう話しながらカナエは、背後に控える隊員に手を振り、廃墟街の地図を彼の前に広げて見せた。


「ここだ。ミュータントの巣窟になってる所だが、そこに潜り込んで全て駆除して貰いたい」

「……なるほどな。そのミュータントどもを俺が根絶やしにすれば、無事に報酬(物資)を手に入れる事ができるって訳だな」


 目の前に広げられた地図を眺めながら大介は無表情のまま言い放つ。


「そういう事だね。キミが欲しがっている物資は無論のこと、アンナさんの指の治療費も負担してあげるよ。ちなみに、こんな世界だからね。再生医療は値段が凄く高いよ。いくら賞金稼ぎのホロコーストと呼ばれていても、今のキミの持ち金で足りるかな?」

「……いいだろう。その条件を飲んでやる。ただし、約束を反故にした時は、この街が無くなると思え」


 カナエから脅しに近い言葉を聞いて、大介は苛立ちの感情が込み上げるが、ここでの争い事は最も必要のない行為だとして抑えると、条件を受け入れつつも唾を地面に吐き捨てた。


「素晴らしい。実に賢い選択ですよ」


 自身の胸に手を添えつつ、カナエは僅かに頭を下げる。


「けっ、何が賢い選択だ。その条件を飲まなければ、お前達は物資も売らないうえに、アンナの治療もしないで、武力を行使してでも俺たちを街から追い出す気だったんだろうが」


 睨みつけるような視線を相手に向けつつ、大介は握り固めると何時でも彼を殴れるように構える。


「ええ、そうですよ。理解が早くて助かります。まあ条件は確かに厳しいですが、平和特区を守る為にはキミの力が必要なんですよ。……そして、信じてください。キミとの約束は必ず守ります。それが、この街を統治する僕の責務ですから」


 真剣な眼差しを大介に向けつつもカナエの声は非常に穏やかで、その口調には何処か力の込められた説得力がある。


「へぇ、それは随分と立派な責務とやらだな。……けどな、俺にはもっと大事だ責務があんだよ。それは――アイツがちゃんと治療を受ける事だ。それと、もしもだ。俺がミュータントをぶっ倒している間に、お前の部下が俺の得物――アンナに手ぇ出したらどうなるか、わかってんだろうな?」


 拳を握り固めて徐に、それをカナエの目の前に突き出すと大介は、普通に脅しの言葉を投げ掛けて、相手の気持ちを強制的に引き締めさせた。

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