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核戦争から二百年、人類に嫌われるグールの俺だが、なぜか少女にだけ懐かれたので最後まで面倒を見ることにした  作者: R666
第三章

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第13話 チェリーボーイ

「全員、武器を下げろ。これは命令だ」


 人差し指を立たせて低い声で周囲に指示を出すと、その言葉には不思議な威圧感があるのか、それを聞いた隊員たちは次々に武器を下ろしてゆく。


「さて、ここに何をしに来たのか……話を聞かせて貰えるかな? ホロコーストさん?」


 彼の深い青の瞳が大介へと向けられる。その視線には警戒心だけでなく、どこか探るような鋭さが潜んでいる様子。


「おいおい、チェリーボーイ。人に何かを求めるなら、まずは自己紹介からじゃねぇのか?」


 周囲の隊員が武器を下げた事により大介もダブルバレルショットガンを下げるが、引き金から指を外すことなく不敵な笑みを浮かべながら煽るように質問を質問で返す。


「……おっと、そうですね。これは失礼。僕とした事が、うっかりしていました。……こほんっ。お初にお目にかかります、僕はここの平和特区の実質的なリーダー、加藤カナエと申します」


 大介の返しに苛ついたのか僅かに眉間に皴を寄せるカナエだが、甘い表情を崩す事なく軽く謝罪をしてから自己紹介を行う。


「おう、そうか。よろしくな。加藤カナエ。それと俺は……まあ言わなくても分かんだろ。……んで、こっちは指無しの少女だ。覚えておかなくていいぞ」


 自身の自己紹介を適当に済ませると、大介は先程から自分の隣で口を堅く閉じて、無の状態を貫いているアンナを紹介するべく、ダブルバレルショットガンの銃口で彼女の巨乳(おっぱい)を小突く。


「ちょっ、やめてくださいよ! グールさん! 普通に危ないでしょうが! ……えーっと、私は東雲アンナと言います……。よ、よろしくお願いいたします……」


 乳を突かれた事でアンナは意識を取り戻すと、頬を赤く染めながらもダブルバレルショットガンを右手で払い除けつつ、弱々しい声で自己紹介を行い僅かに頭を下げる。


「ふーむ、ホロコーストさんにアンナさんか。なるほどね。……それじゃぁ、改めて貴方たちは何が目的でここへ?」


 右手を自身の顎下に当てながら、カナエは悩ましい声を出しつつ首を傾げた。


「はぁ……さっきも言ったんだがな。俺に同じ事を二度も言わせるな。いいか? これが最後だ。よ~く聞いておけ。俺がここに立ち寄った理由は、薬と弾薬……あとはこの馬鹿女の指を治す為だ。理解したな?」


 頭を掻きながらも大介は、非常に面倒な気分のまま再び目的を告げるが、それと同時に自身の親指で包帯が巻かれたアンナの手を主張する。


「……そうか。どうやら、不運な目に遭ったようだね」


 そう短く答えるとカナエの視線が彼女に向かい、その痛々しい姿に一瞬だけ眉を顰めた。


「しかし……あの冷徹な男が、こんな可愛らしい女の子を連れて、終末世界をデートとはね」


 両腕を組みながらカナエは、皮肉交じりに笑いながら言葉を続けた。

 その声には敵意はなく、むしろ軽い挑発のようである。


「ははっ、ごめんごめん。……よし、いいよ。キミの頼みを聞き入れよう」


 涙を浮かべて笑い声を上げるカナエだが、その途中で手の甲で涙を拭うと周囲の隊員に目配せし、半分ほどの兵士が頷くと即座に離れてゆく。

 カナエの統率力は何げない仕草からも確固たるものがあるようだ。

 

「おい、アンナ」


 衣嚢から小さく透明な袋を取り出すと大介は、それを無造作に彼女へと目掛けて投げ渡す。

 その袋の中には何時ぞやの、ヴォイダーの指とアンナの指が、氷漬け状態で保管されている。


「きゃっ!?」


 慌てて受け取ると、アンナは小さな手で、それを握り締めた。

 彼女は青ざめた顔で大介を見上げるが、彼は相変わらず飄々とした表情である。


「それをちゃんと医者に渡せよ。俺達の旅路の成果だ」

「は、はい……」


 大介の言葉に困惑しつつもアンナは、指が保管されている袋を大切そうに抱えた。

 そして彼が、その場に留まるとカナエと正面から向き合う。


 そのあとカナエが顎をしゃくると、周囲に居た数人の隊員たちは小さく頷き即座にアンナを取り囲むと、まるでVIP待遇のように彼女を病院へと案内するべく、その者達は平和特区の中へと足を踏み入れて消えてゆく。


「さてと、キミの要望通り指の治療は手配した。それで……キミ個人としての真の目的は一体なんだい?」


 緩い表情を晒しながら、柔らかな口調で、カナエが問い掛ける。

 その声には敵意は感じられないが、どこか核心を探ろうとする鋭さが滲む。


「はっ、そんなのは簡単だ。アイツの父親を捜している」


 肩を竦めながら大介は短く答えると、懐から男の似顔絵(アンナの父親)が描かれた紙を取り出して見せつける。


「……ああ、なるほど。そうかそうか。全て繋がったぞ。東雲アンナ……その東雲という苗字には聞き覚えがあったんだ。……ふっ、今や何処の組織もキミと同様に、彼を追っているからね」


 目の前に突きつけられて似顔絵を見て、カナエの表情に理解の色が浮かぶと彼も他の者と同様に、アンナの父親について知り得ている様子。


「うーん、こうやって絵を眺めていると、やっぱり似ているね。特に目元がそっくりだ」


 右手を自身の顎下に添えながらカナエは呟いた。


「もちろんだけど、僕たち平和守護隊も、平和の為に彼を探しているよ」


 右手を自身の胸に当てながら、大介を見つめ直すとカナエは、穏やかな笑みを浮かべる。

 だが、それを聞いて大介は一瞬眉を顰めたが、アンナの件もあり事を荒げない為にも、直ぐに気を取り直して軽く頷いた。


 そして、そんな会話しているとアンナを預けた隊員たちが小走りで戻り、無事に彼女が病院に着き適切な処置を受けている事を報告し、それを聞いてカナエは満足げに頷く。

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