第5話 ネオテックスガール
「……へぇ、その人について何か知りたいんですか? でも……ちょっと待ってくださいね」
スピーカー越しに聞こえる少女の声は、少しだけ興味が引かれている様子。
そしてネオテックス内で何が起きているのか分からないが、大介は無駄な時間を過ごす事には慣れていた。
彼としてはネオテックスの中で、人々がどういう反応をしているのかは、興味の範疇にない。
ただ、仕事を進める上で必要な情報を得られるかどうか、それだけを大介は気にしている。
やがて数分の時が経過すると、突如として警告音のような想像しい音が鳴り響き、それと同時に銅鉄性の門が重々しく開かれて、その中から一つの足音が近づいてきた。
「やっぱり、直接話した方が早いと思いまして!」
開け放たれた銅鉄性の扉を越えて、ネオテックスの中から出て来たのは一人の女性であり、彼女の外見的な年齢は十八ほどで、小さく手を振りながら大介に話し掛ける。
そんな彼女の明るい声は、彼の無表情な顔と対照的で一瞬、場の空気が奇妙なもの変化した。
だが、それでも女性の声はスピーカー越しに聞こえていたものと同じで、どうやらこの女性こそがアンナ本人のようである。
彼女の容姿としては、淡い白色の髪は三つ編みのおさげで、柔らかな絹糸のように軽やかに揺れ、頬に掛かる前髪が朧げな印象を与えた。
髪の先端には、軽いグラデーションが施されており光を浴びると、まるで雪が舞い落ちるように見える。
顔立ちは非常に整えられており、大きな瞳は透明感のある水色だ。
身長は百六十ほどで細身の体型をしながらも、曲線美が強調されたその体付きは、女性らしい柔らかさと均衡の取れたプロポーションが際立つ。
華奢な肩から引き締められたウエスト、そして控えめながらも形の良い胸元、全てが魅力的に整えられている。
アンナの肌は陶器のように白く滑らかで、微かに浮かぶ血色が命の温もりを感じさせた。
首筋から鎖骨に掛けてのラインは特に美しく、繊細で上品な色気を醸し出している。
服装としては、彼女が纏うのは肌密着型のネオテックススーツ。
夜の闇のように暗い黒と銀色に煌めくラインが映えるデザインは、彼女のスタイルを余すところなく引き立てている。
肌に張り付くような素材感が、引き締められたウエストや、丸みを帯びたヒップラインを更に強調。
スーツの胸元部分にはジッパーが付いており、少しだけ開いた状態でアンナの鎖骨や肌が覗いているのが、さりげないセクシーさを生み出している。
しかも、そのスーツの横腹の辺りには小さく『810』という数字が銀色で刻まれており、アンナがネオテックス出身である事を示しているのだ。
そして彼女の脚には、太ももを包み込むように、ピッタリとフィットするスーツが続き、つま先の形が覗くほどのデザイン。
これがアンナの曲線美を更に引き立てている。
さらに小物として、左の手首には黒い革性のブレスレットををつけ、右の手首にはネオテックスエッジ製の、モバイルメイドと呼ばれるアイテムが装着されていた。
そのモバイルメイドの見た目は、通常のスマートフォンに似ている。
そして彼女の腰には、鎮静ガンのような武器が備え付けられており、最低限の武力は有している様子。
「……東雲和真。その名前は、確かに聞いた事があります。でも、貴方って外の世界の人なんですよね?」
「ああ、そうだが……。それが、どうした」
「やっぱり外って凄いんですか? 危険なんですか?」
初めてネオテックスを出たようで、アンナの目には好奇心に満ちており、大介に歩み寄りながら質問攻めを行う。
「……凄いも何も、地獄だ。ただ、それだけだ」
子供のように無邪気な質問を口にする彼女に対して、彼は鼻で軽く笑うように答えた。
「えっ、それだけなんですか?」
少し肩透かしを受けたような顔を晒すアンナだが、次の瞬間なにかを思い出したかのように笑みを浮かべた。
「……それでもっ! 私は外に出てみたいです!」
「外の世界を甘く見るなよ。お前みたいなネオテックス育ちのモヤシが生きていける場所ではない」
眉を顰めながら冷めた目で彼女を見下ろしつつ、大介は核が落とされた後の日本の過酷な現状を話す。
「そうは言いますけど、現に貴方は生きているじゃないですか。それに……私には外に出る理由があるんです」
彼からの威圧に怯えるどころか、アンナは真剣な表情を見せながら、さらに一歩近づいて来た。
「理由だと?」
「はい、理由があるんです。私は……”お父さん”が、このネオテックスを出て行った理由を知りたいんです。私を見捨ててまで……外に出て行った理由を。それを探す為なら、どんな危険でも覚悟の上です!」
真剣な眼差しを晒しながら、アンナは右手を自身の胸に当てると、確固たる意識が込められている様子の声を出す。
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