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核戦争から二百年、人類に嫌われるグールの俺だが、なぜか少女にだけ懐かれたので最後まで面倒を見ることにした  作者: R666
第三章

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第9話 害虫駆除・完了

「ッ”――――!」


 ジェシカの片目が弾丸で潰され、彼女は悲鳴を上げながら後退した。

 しかし、その体は徐々に力を失い、ついにはトンプソンを手放し、体ごと地面に崩れ落ちる。


「おいおい。泡を吹いて倒れるなんて、随分と派手なパフォーマンスだな。……でも、もう舞台は終わりだ」


 片腕の痛みに耐えながら大介は、ジェシカのに近づき冷ややかに見下ろす。


「……お前、覚えておきなさいよ」


 彼を睨みつけながら怨念に等しい言葉を漏らすが、それを最後にジェシカは動かなくなり部屋には静寂が訪れた。


 そして大介は戦闘を終えた事を確信すると、トンプソンにより吹き飛ばされた、自らの腕の感覚を確かめようとして動かそうとする。


 だが、そこには当然の如く何もない。

 切断された断面からは、依然と血が止めどなく流れ出し、床に赤黒い池を生み出していた。

 彼は口の端を僅かに吊り上げながらも、どこか皮肉めいた笑みを浮かべる。


「まったく、参ったもんだぜ。こんな大切なモノを失うとはな。俺の運も、ついに尽きたか?」


 その声は何処か軽薄だが、大介の瞳は冷静そのものだ。

 そのまま視線を周囲に巡らせると、視界にヴォイダーの散乱死体が映り込む。


 そして大介は暫し死体を眺めていると妙案を思いつき、その数多くの死体の中でも比較的新鮮で損傷のない少ない者を選び始めた。


 それから数分の時を経て選別を終えると、彼は一体の死体(ヴォイダー)の元へと近づく。

 そのヴォイダー()の死体の腕は、非常に筋肉質で大介の本来の腕よりやや太い。


 しかし、それが寧ろ強靭さを保証さえしているように見え、彼は床に落ちていたダガーナイフを拾い上げて柄を握り込むと、一切の迷いなく刃先を死体の肩関節部分に滑り込ませた。


「お前さんの腕、ちっとばかし借りるぜ。……まっ、もっとも文句は言えないだろうけどな。死人に口なしってわけだ」


 冗談めいた口調を放ちながらも、大介は優雅にナイフを滑らせると、刃が男の腕の筋線維を断ち切り骨に当たる。


 大介はナイフを力強く押し込みながら巧妙に肩の関節を外した。

 血の匂いが更に濃く漂い、鉄錆びた臭いが鼻をつく。

 やがて男の腕は胴体から切り離された。


「さて、手術終了だ。あとはこれを、どうにか俺の体に繋ぎ直してやらねぇとな」


 自身の傷口に目をやり、切断したばかりの腕を持ち上げた。

 その重さと質感を確かめるように、指を動かし少しだけ満足気に頷く。


 そして大介は徐に懐に手を入れて携帯用の医療箱を取り出す。

 箱の中には消毒用のアルコールと糸、そして針などが収められている。


 それらを目視で確認し、一通りの準備が整うと彼は、すぐさま行動を開始した。

 まず自らの傷口を清潔にし、切断面を整える。


 その後、ヴォイダーの腕の断面を適切に調節し、互いの神経と血管を慎重に縫い合わせてゆく。

 脂汗が頬を伝い何度も落ち、大介の視界を曇らせる。


 麻酔無しでの処置では、当然のように激しい痛みを伴うが、それに動じる素振りを見せない。

 むしろ今の彼は何処か愉悦すら感じているようだ。

 そして時間にして約十五分で、元ヴォイダーの太い腕は、大介の体に縫い付けられた。


「グールの体ってのは、便利なもんだな」


 ゆっくりと新しい腕を動かし始める大介。

 最初はぎこちないが、徐々に感覚が馴染んでゆく。

 指を一本ずつ動かし、拳を握り込む。


「おお、しっかり動くじゃねぇか。これなら実用性充分だ」


 軽く拳を振り下ろして、彼はコンクリートの床を叩いてみた。

 力強い衝撃音が部屋中に響く。

 その音に満足気に頷いた大介は次なる行動を移る。


 彼は再び死体(ヴォイダー)へと近づき、ナイフを手に取り握り込む。

 そして今度は死体の口元を無造作に掴むとナイフを歯茎に押し当てた。


「このくそったれな世界だと、お前達みたいな汚ねぇ歯でも価値があるからな。わりぃけど、拝借させて頂くぜ」


 ステーキ肉を切るかのように、大介はナイフを走らせて、一つずつ歯を抜き取る。

 それは力任せの作業ではなく、どこか手馴れた様子で慎重に行われた。

 抜き取れた歯は、その都度コートの衣嚢に、乱雑に収納されてゆく。


「専門の店で売れば、そこそこの稼ぎになる。……ったく、お前達の死体も、こうして社会の役に立つんだから、感謝してくれよな」


 皮肉めいた言葉を吐きながらも、大介の手が止まることはない。


 彼の動きには冷酷な効率性が宿り、一片の躊躇も見受けられないのだ。

 作業を終えた頃には、大介の衣嚢はヴォイダーたちの黄色の歯で満杯となり、一定の重量を持つ。


 そして徐に彼は立ち上がると、手にしたナイフを死体の服で、軽く拭いてから拳銃嚢に収めた。

 部屋の中は相変わらず濃縮された血の匂いが漂い、死体の山が無惨に床に転がされている。


「……おい、アンナ! 害虫駆除は終わったぞ。気絶していないで、さっさと起きやがれ」


 すべての敵を倒し終えて場の安全を確保すると、大介はアンナが座る椅子の横に屈み込み、ナイフを使い拘束具を外してゆく。

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