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核戦争から二百年、人類に嫌われるグールの俺だが、なぜか少女にだけ懐かれたので最後まで面倒を見ることにした  作者: R666
第三章

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第8話 グールさん!腕が!

「……まあ、いいわ。部下達の代わりは幾らでもいるもの。それよりも、この部屋に入って来るなんて、随分と勇気があるじゃない」


 崩れていた表情を戻すように、彼女は薄い笑みを浮かべながら、彼を値踏みするように目を細める。

 

「へっ、お前の趣味は理解できねぇが……その無駄に整った顔も見飽きた。さっさと地面に転がる準備でもしてろ」


 そう言いながら大介は銃口をジェシカの眉間へと向けた。

 だが次の瞬間、先程の発砲音を聞いて駆けつけたのか、彼の背後から騒々しい複数の足音と、けたたましい雄叫びが響き聞こえる。


 そして大介は直感的に、それが(ヴォイダー)の増援である事を察すると、その後の動きは速い。

 瞬時にナイフを口に咥えて、マグナムピストルから空薬莢を排出し、新品の弾を装填して振り返ると、背後から迫り来る敵の姿を視認して、引き金を引き銃声が短く響く。


 すると釘バットを手にして、先頭を走り抜けていた一人の中年の男が、眉間を正確に撃ち抜かれて即死し場に倒れ込む。


 しかし一人倒されただけで、野蛮な連中の動きは止まらない。

 更に一人の若い男が、ククリナイフを振り上げ大介に迫る。


 だが大介は敢えて即座に敵の懐へと潜り込むように接近し、その腕を掴んで捻り上げ逆の手に持つナイフで喉を一閃した。


 血が床に飛び散り男は呻き声を上げながら崩れ落ちる。

 一方でジェシカは、その光景を見ても先程みたいに動じることなく、寧ろ冷静な態度を維持したまま楽しげに微笑んでいた。


 戦いが終わると大介は部屋を見回してナイフを握り直すと、死亡したヴォイダーの一人に近づいて相手の人差し指を切り落とす。


 それを自身の衣嚢に入れると、今度は床に転がるアンナの白い指を拾い上げ、それを舐め回して味を確かめた。


「ほーん、確かに意外といけるな。悪くねえ味だ」


 小さく笑うと大介は、その指も乱暴に衣嚢へと入れ込む。


「ぐ、グールさん……貴方って人は本当に……」


 瀕死気味のアンナは荒い息遣いのまま、彼の言動を目の当たりにするとか細い声で呟いた。


「はっ、俺が来たらパーティーが盛り上がったな! ……それで? 次はどうするんだ、赤髪の姐さん?」


 大介の軽口は敵の注意を散らす為の作戦であり、極自然な流れでナイフに付着した血を自身のコートで拭き、矢継ぎ早に回転弾倉から空薬莢を捨てると新しい弾を装填する。


「あらあら、アンタなかなかやるじゃない。ちょっとばかし、見直したわよ。……でも、ここからよ。楽しい楽しい、殺し合いの本番は……ね」


 軽い拍手を行うとジェシカは冷ややかに笑いながら、自身の胸の谷間に手を入れてステルスキャンディを取り出した。


 そして包装を解いてキャンディを口に放り込むと、瞬く間に彼女の姿が神隠しに遭遇したかのように、全身が霞んで消えてゆく。


 ステルスキャンディとは、微細な光学粒子を混ぜ込み口に含む事で、体表の光を調節し屈折面を人工的に生成する特殊な菓子デバイス。


 元は中国軍が誇る最新のステルス技術を、戦争中の日本の技術者たちが密かに解析し、携帯性を最優先に再構築した産物である。


 それは甘く溶ける味わいに反して、その効果は驚異的。

 使用者は”三分間”完全に姿を消す事が出来る。


 ただし効果が切れると同時に光学粒子が一斉に弾ける為、淡い閃光を放ち周囲に存在を悟られる危険があるのだ。

 戦場では命を繋ぐ切り札、裏社会では高額で取引されてる幻のキャンディとされている。

 

「おい、まじかよ! まるでマジックショーだな!」


 警戒しながら大介は周囲を見渡すが、ジェシカの姿は当然の如く何処にも見えず。

 だがその時、彼の耳元で銃声が響き、壁に弾丸が跳ねる音がした。


 反射的に大介は身を伏せて回避行動を取るが、それは僅かに遅れて足元に血のりを感じる。

 それは自身の肩を撃ち抜かれていた事を意味していた。


「ちっ、ステルスと跳弾の組み合わせは反則だろ!」


 マグナムピストルを乱射しながら大介は、周囲の気配を探るように忙しなく動かす。


「反則だなんて、お前みたいなゴミに言われたくないわね!」


 ジェシカの怒鳴り声が虚空から聞こえる。

 そして次の瞬間、ステルス効果を自らの意思で解除したのか、彼の目の前に姿を現すと彼女は悪魔のような形相を晒したまま、二丁のトンプソン・マシンガンを構えた状態で引き金を引き一斉射撃を始めた。


 銃弾が壁や床を削り、転がる死体に着弾したりして、ありとあらゆる破片が部屋中に飛び散る。

 

「ははっ! 派手なのは嫌いじゃないぜ!」


 咄嗟にダガーナイフを手放して、空いた片手で傍に倒れていた金属製の棚を盾に使い、大介は彼女の猛攻を必死に凌ぐ。


 しかしトンプソンによる、数発の(強化弾)が彼の腕を直撃し、血しぶきが上がる。

 腕に無数の穴が空くような感覚と共に吹き飛ぶような衝撃と痛みを受け大介は一瞬だけ大きくよろめいた。


「くそっ! 痛み何て久しぶりだぜ! だが、まだ終わらねぇぞ!」


 トンプソンによる銃撃を諸に受け、片腕を破壊され失いながらも大介は、マグナムピストルを持つ手に力を込めて確実に構える。


 ジェシカの動きを読み、狙いを定めた。

 そして彼女の瞳を貫くように弾丸を放つ。

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