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核戦争から二百年、人類に嫌われるグールの俺だが、なぜか少女にだけ懐かれたので最後まで面倒を見ることにした  作者: R666
第三章

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第6話 拷問

「それで? 貴女の父親は一体どこにいるのかしら?」


 ジェシカの声は優しく、まるで幼子を諭す母親のようである。

 その微笑みには冷たさと毒が同居していた。


「……知らないです」


 小さな声でアンナは答える。

 震える声は必死に、強がろうとする意志を感じさせたが、その目は怯えていた。


 しかし彼女の返事を聞いてジェシカは短く溜息をつくと、自身の傍に置かれていた机の上から鋭利なナイフを手にする。


 そのナイフの刃は銀色に光り彼女が、それを手にしただけで部屋の緊張感が一段と増す。

 

「正直になった方がいいわよ。痛い思いをする必要なんてないんだから」


 アンナに近づきジェシカは、ナイフの先を自身の指先で軽く弾いた。


「私には、なにも……言うことなんてない!」


 唇を強く噛み締めアンナは、涙を堪えながら必死に首を左右に振るう。


「あら、強情ね。でも、いいわ。アタシには忍耐があるもの」


 彼女の反応を見て途端に、ジェシカの顔が冷笑に変わる。

 そして次の瞬間、彼女は空いている片手でアンナの右手を鷲掴む。


 その動作は余りにも滑らかで、一切の迷いを感じさせない。


「ま、待って! うそでしょ、やめてよ! 本当に知らないの!」


 アンナの目が恐怖で見開かれると、声を上げて必死に体を捩じらせて抵抗した。

 しかし、それは縄が強く食い込むだけで、逃れる事はできない。


「いいえ、貴女は知っているはずよ」


 そう淡々と言い放つジェシカは、ナイフの刃先を人差し指に押し当てた。


「やめて……お願いだから!」


 冷たい刃の感触にアンナの全身が硬直すると同時に泣き叫ぶ。

 その声には純粋な恐怖と、絶望が滲んでいる様子。


「これで少しは素直になれるかしら」


 彼女が恐怖で流す涙すらも、まるで楽しむかのように、ジェシカは微笑みを深めた。

 そして彼女がナイフを一気に押し上げると、アンナの指は鮮やかな血飛沫と共に切り落とされる。


「ぎゃあああああっ!」


 彼女の断末魔の叫び声が部屋中に響き渡り、その音は壁に反響して不気味な調和を作り出した。

 その悲鳴は胸を締め付けるような痛みと恐怖を彷彿とさせる。


 アンナの瞳からは涙が溢れ、全身が震え続けていた。

 そしてジェシカは指先で遊ぶように、彼女の切り落とされた指を摘まみ上げると、その形を何処か愛おしそうに眺めている。


「ふふっ、随分と良い音がしたわね。まるで焼きたてのウィンナーを齧った音みたい」


 ゆっくりと唇が開きジェシカは、微笑みながら言葉を吐く。


「硬さも丁度いいし、血の匂いも悪くはないわね」


 そう言うとジェシカは、指を口に運び噛みついた。

 肉を噛む音が部屋に響く度に、アンナは椅子の上で身を震わせる。


「……少し筋張ってるけど、それもまた味があっていいわね」


 ジェシカは目を閉じ、ゆっくりと咀嚼したあと、満足気に笑う。

 アンナは、その言葉を聞いて歯を食いしばるが、涙が頬を伝い落ちてゆく。

 その目には激しい嫌悪と怒りが滲んでいた。

 

「……化け物……っ!」


 彼女は低く呟いた。

 その声に怒りが滲んでいたが、その震えは恐怖から来ている様子。


「ありがとう、褒め言葉として受け取っておくわ」


 アンナの顔を覗き込みながら彼女は微笑んだ。

 その笑顔は狂気そのものである。


「さてと、もっと楽しむ為の準備をしようか」


 徐に指を鳴らすとジェシカは先程から部屋の隅で大人しく待機していた数人のヴォイダーへと視線を向けて小汚い中年の男を指差した。


 その男は見るからに彼女の部下であり、年齢は三十ほどで身長は百六十ほどぐらいである。

 体格としては、やたらと筋肉質で粗野で、武骨な雰囲気を纏わせていた。


 服装は乱雑で無精髭が、その顔に影を作るほど。

 既に彼の目には、獲物を見つけた捕食者のような、光景が宿されている。


「このお嬢さんを、ちょっと躾けてあげてちょうだい」


 ジェシカは不敵な笑みを浮かべ男に命じると、自らは近くに置かれていた木製の椅子へと腰掛け腕を組み、その様子を観察する体制へと入った。

 その姿は、まるで舞台の観客のようである。

 

「うっす! お任せください、ボス!」


 にやりと笑いながら男はアンナの傍に近づく。

 その足音が床に響く度に、アンナの心臓の鼓動は速まるのか、呼吸が荒くなる。


「おいおい、怯えるなよ。可愛いお嬢ちゃん。俺はただ、お前の悲鳴が聞きたいだけさ」


 嘲笑を浮かべながら彼は彼女の頬へと手を伸ばした。

 

「触るな!」


 激しく頭を振りアンナは、その手を拒絶する。

 だが、その動きも虚しく、拘束された手足は自由を奪われていた。


「まったく、素直じゃないな。まあ、そっちの方が興奮するが」


 低く笑うと男は徐に自分の洋袴(ズボン)帯革(ベルト)に手を掛ける。

 そして勢いよく、それを外して一気に下ろした。

 

 彼の下半身が大胆に顕わになると、アンナは一瞬だけ目を見開く。

 その後、唇が僅かに緩み、鼻で笑う音を立てた。


「……ぷっ、なにそれ? そんなの……豆粒以下じゃない。お人形さんにでも付いてたの?」


 彼女の声には冷たい侮辱が込められている様子。

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