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核戦争から二百年、人類に嫌われるグールの俺だが、なぜか少女にだけ懐かれたので最後まで面倒を見ることにした  作者: R666
第三章

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第5話 ヴォイダーのアジトへ

「……知らねぇな。お前も余計な詮索はやめとけよ。命が惜しいならな」

「そうか……知らねえか。なら、少しばかり思い出して貰う必要があるな」


 男の返答を聞いて溜息をつきながら大介は、太腿の拳銃嚢からダガーナイフを取り出すと、それを軽く宙に投げてから掴む。


 その突然の言動に男は呆気に取られて、僅かに反応に遅れるが、慌てて銃を構えようとする。

 しかし大介は、その反応の遅れを見逃すことなく、一瞬の隙を突いてナイフを振るう。


 男は手にしていた銃を勢いよく弾かれて地面に叩き落とされ、次の瞬間には彼の近接戦闘術を受けて腕を捩じ上げられ無力化された。


「待てッ! やめろ! 話せば分かる!」


 悲鳴を上げながらも、彼は必死に許しを請う。


「だったら話してくれよ。ジェシカのアジトはどこだ?」


 大介の声は冷たく低く、少しの情けすらも感じさせない。


「……街の西側だ。古いクラブの地下に隠れてる! 赤いネオンが目印だ!」


 恐怖に怯えながらも男は答える。


「そうか、ありがとよ」


 ナイフを拳銃嚢に戻すと大介は彼を路地の壁に押し付け、すかさず相手の首を締め上げると失神状態に陥らせて無力化した。


「へっ、この借りは何時か返してやるよ」


 無力化した男が地面に倒れ微動だにしない光景を見て、大介は感謝のお辞儀を軽く披露してから、その場を後にする。

 そしてジェシカが潜伏するアジトの情報を得た大介は街の西側へと足を向けて進む。


「……ったく、世話の掛かるネオテックスガールだぜ。……事と次第によっては、このまま見捨ててやる所だ」


 アジトへと向かう道中、薄汚れた路地や廃墟と化した建物の間を抜けながら、彼は独り言を呟いた。

 ネオンが薄暗い街路を照らし、歓楽街の騒音が徐々に遠のいてゆく。


 大介の足取りは重くも確実で、その視線には揺るぎない決意が宿っていた。

 ――そして時刻は真夜中を迎えると大介の頭上では夜空が出迎えており、未だに周囲に漂う空気は湿気を含んでおり全体的に重苦しい。


 路地裏を淡々と進む彼の足音は、舗道に散らばる硝子片に微かに反響する。

 古びたクラブの建物は、赤いネオンを眩く光りながらも、その輝きには何処か薄汚れた不気味さが漂う。


 建物は一見、廃墟に見える。

 外壁にはひび割れと苔が大量にこびり付き、かつては賑わっていたであろう、派手な看板は半分以上が消えかけていた。


 入り口の(ドア)を半開きで、内部からは低い音楽が漏れ聞こえる。

 だが、その音楽は何処か不自然に場違いな明るさを帯びており、この場所の危険さを逆に際立たせていた。


「……随分と趣味の悪い隠れ家だな」


 小声で皮肉を呟きながら、大介は建物へと近づいた。

 コートの裾を軽く払うと、太腿の拳銃嚢から、ダガーナイフを引き抜く。


 刃の鈍い光が微かな街灯の明かりを反射する。

 入り口の内側では一人の若い男が警戒する素振りもなく座り込み、粗雑な銃を膝の上に置いて煙草を吹かしていた。


 大介は物影に身を潜め、その男の動きを観察する。

 彼の視線は鈍く、頭の中は煙草の香りに、埋もれているのだろう。


「まるで警備になってねぇな……。こりゃぁ、楽勝だ」


 心の中で嘲笑しながら大介は呟くと、一気に相手との距離を詰めて殺しに掛かった。

 ナイフを握る手は一切の迷いを見せず、鋭く頑丈な刃は男の喉元に突き刺さる。


 音が漏れないように彼は相手の口を押さえつけ動きを止めた。

 やがて魂が抜け落ちたかのように、男の体が静かに崩れ落ちると、大介は周囲を警戒しつつ次の標的を探す。


 クラブ内部への潜入に成功した大介は、臆することなく廊下を突き進むと、奥の部屋では二人の中年の女性が小声で会話していた。


 古びた長椅子(ソファ)に腰掛けた一人が笑い声を上げ、もう一人は床に腰を落ち着かせ、飲料水が注がれたボトルを口につけている。


 無防備さが隙だらけで、まるで得物を待つハンターの目を試しているかのようだ。

 大介は息を殺して、ゆっくりと足を進める。


 床板の軋む音すら細心の注意を払いながら、まずは長椅子に座る女の背後に忍び寄った。

 そして一瞬の隙を突いて、首を捻り上げて骨を砕く。

 

 次に立ち上がろうとした、もう一人の女に目掛けて飛び掛かると、瞬時に床に押さえつけナイフで喉を切り裂く。


「ふぅ……まずはここまでか」


 血の匂いが濃厚に香るが、大介は眉一つ動かさずに冷徹な眼差しを維持したまま、周囲の安全を確保する。


 そして再び足を進めて、彼は移動を開始すると建物の奥へと進むが、そこには階段へと続く重たい鉄扉があった。


 周囲に目を配りながら、大介は慎重に手を合わせる。

 錆びた金属の冷たい感触が指先に伝わるようだ。


「さてと、まずはアイツらの目的を確かめねえとな」


 扉に耳を当てると、彼は中から漏れる音に、意識を集中させる。

 すると、その中からは複数の話し声や微かに聞こえた。


 その話し声の中にアンナという言葉が含まれている事を、大介の耳は確実に捉えると相手に気づかれないように、音を最小限に押し殺して扉を僅かに開けて中の様子を伺う。


 そして大介の視界に映りし光景としては、全体的に薄暗い部屋の中に一個の裸電球が天井から垂れ下がり、壁には無数の汚れや血痕が散りばめられ、床には鉄錆の匂いと汗の匂いが入り混じる。


 さらに、その薄暗く物騒な部屋の中央では、アンナが木製の古びた椅子に縛り付けられていた。

 腕と足は粗雑な縄で拘束されており、今の彼女に逃げる術はない。


 アンナの顔には恐怖の色が濃く浮かび、唇は震え目には涙が浮かんでいる。

 彼女の純白の髪は乱れ、その美しい顔立ちは汗と絶望に歪んでいた。


 ネオテックススーツの肩口が裂け、白い肌が覗くのは手厚い歓迎を受けた痕跡である。

 一方でジェシカは、その対照的な姿で部屋の壁に背を付けて優雅に立つ。


 周囲には彼女の他にも、数人のヴォイダーたちが待機している。

 相手の戦力は多く更に室内が狭いという事もあり、大介は即座に突入して全部を終わらせる事は出来ず、一旦は傍観者となることを選んだ。

最後まで読んで頂きまして誠にありがとうございます。

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