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核戦争から二百年、人類に嫌われるグールの俺だが、なぜか少女にだけ懐かれたので最後まで面倒を見ることにした  作者: R666
第二章

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第35話 心配のアンナさん

「グールさん! 大丈夫ですか!? 返事をしてください!」


 アンナの声は悲鳴のようだ。

 震える手で大介の肩を掴むが、その体温は異様に高く触れた指先が、焼けるように感じている。

 彼の口からは低く唸る音と、名前を繰り返すだけの音声が、漏れ続けていた。


「どうして……こんな……」


 涙を堪えきれず、アンナの目尻からは大粒の雫が零れ、それを自身の手の甲で何度も拭う。

 今の彼女の心には、まるで底知れない絶望が渦を巻いているようだ。


 それは核が落ちた後の地上世界で唯一頼れる存在であり、共に戦い抜いてきた大介が目の前で理性を完全に失い掛けているからである。

 

 そんな事実が、アンナの胸を締め付けるように、重くのしかかっているのだ。

 そして大介は痙攣する手を地面に押し付け、何かを掴もうとするように指を曲げる。

 

 その動きは、もはや人間らしさを感じさせない。

 歯を剝き出しにして苦しげに息を吐きながらも、口からは相変わらず自分の名前が繰り返される。


 だが、その声は次第に弱くなり、獣じみた唸り声へと変化していく。

 眼は血走り、牙を剥き出しにして唸る大介の姿は、既に知性の宿るグールのそれではない。

 

「グールさん! 戻って来て下さい! 私を一人にしないで!」


 彼の隣でアンナは必死に声を掛けて、正気を取り戻させようとする。

 だがそんな声も、もはや彼には届かない。


 大介は完全に自我を失い、奇怪な呻き声を上げながら、フェラル・ゴウルの群れに向かい突進を仕掛けた。


 その動きは異常な程に遠く、まるで風そのものが姿を保つかのようである。

 フェラル・ゴウルを殴り倒し、噛みつき、引き裂く。


 彼の力は圧倒的であり、フェラル・ゴウルの群れを次々と粉砕していく。

 だが、その姿は余りにも異様で、アンナは恐怖心ゆえに、その場を動けずにいた。


「どうして……こんな……」


 狂気的な光景を目の当たりにし、彼女の瞳から涙が溢れると、その雫が頬を伝い落ちる。

 大介は発作を起こし、圧倒的な力を発揮すると、最後の敵を殲滅し静かに膝をつく。

 彼の呼吸は荒く、全身が血と泥にまみれていた。


 ――月は分厚い雲に覆われて、森は黒闇に包まれている。

 夜露が草葉を濡らし、冷えた空気が息苦しさを覚えた。


 風が木々の間を抜ける音は、まるで遠くから響く獣の呻き声のようで、不気味さを際立たせている。

 そして発作を起こした大介は、糸が切れた操り人形のように地面へ倒れ伏すが、その姿は異形そのものだ。


「……ホロコースト……ホロコースト……ホロコースト……」


 全身が痙攣し、手足を虫のように地面に這わせながら、彼は自分の名前を繰り返す。

 その声は、か細く途切れ途切れであり、不気味な執拗さを持ち、森の静寂に響く。

 

 濁りにまみれた赤黒い瞳が虚空を彷徨うように動き、皮膚は汗で光りながらも異常なまでに青白く変色している。

 血管が肌の下で動き出し、張り詰めた縄のように脈打つ。


「グールさん! 大丈夫ですか!? 返事をしてください!」


 アンナの声は悲鳴のようだ。

 震える手で大介の肩を掴むが、その体温は異様に高く触れた指先が、焼けるように感じている。

 彼の口からは低く唸る音と、名前を繰り返すだけの音声が、漏れ続けていた。


「どうして……こんな……」


 涙を堪えきれず、アンナの目尻からは大粒の雫が零れ、それを自身の手の甲で何度も拭う。

 今の彼女の心には、まるで底知れない絶望が渦を巻いているようだ。


 それは核が落ちた後の地上世界で唯一頼れる存在であり、共に戦い抜いてきた大介が目の前で理性を完全に失い掛けているからである。

 

 そんな事実が、アンナの胸を締め付けるように、重くのしかかっているのだ。

 そして大介は痙攣する手を地面に押し付け、何かを掴もうとするように指を曲げる。

 

 その動きは、もはや人間らしさを感じさせない。

 歯を剝き出しにして苦しげに息を吐きながらも、口からは相変わらず自分の名前が繰り返される。


「……ホロコースト……ホロコースト……」


 その声は徐々に低く、濁りにまみれたものへと、変化していく。

 それと共に彼の呼吸は、ますます荒く、動きは獰猛さを増していくのである。


「……ああ、そうだ! ……薬……薬さえあれば……! グールさん! 待っててください! 必ず助けますから!」


 薬の存在を土壇場で思い出すと、アンナは地面に転がる彼の鞄を手に取り、必死に中を漁り始めた。

 彼女の指先は焦りと恐怖で震え、必要なものに直ぐには辿り着かない。


 やがて必要な物が見つからない事にアンナは苛立ちを覚えると、鞄の中身を地面にぶちまけて手で不要な物を捌けると、ようやく見つけた注射器を手に取る。

 その瞬間、彼女の胸は少しだけ希望に満たされたのか、表情に明るい光が差し込む。

 

「大丈夫……大丈夫だから……! 絶対に!」


 必死に自分に言い聞かせながら、アンナは彼の元へと駆け寄る。

 だがその時、大介が突然大きく体を反らし、咆哮にも似た声を上げた。

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