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核戦争から二百年、人類に嫌われるグールの俺だが、なぜか少女にだけ懐かれたので最後まで面倒を見ることにした  作者: R666
第二章

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第31話 人肉・公開解体!

「……それでは私たちブラッド・パック一同は、貴方様の旅路が幸福な光で満ちている事を、心より願っております。またこの辺りを通る事があれば、是非ともこの橋に立ち寄って下さい。肉体的にも精神的にも、最高級のおもてなしを約束致しますわ!」


 軽い会釈をして再び顔を上げるとサロメは、満面の笑みを見せながら軽く手を叩いて、待機していた給仕たちに命令を飛ばすと、彼女らは一斉に動き出して、閉じられていた室内の重厚な扉の施錠を解除し始めた。


 重厚な扉が、ゆっくりと開かれると同時に大介は、皿に盛られた肉料理と酒を全て口にしてから席を立つ。

 そして彼の隣では一刻も早く、この場を立ち去りたいのか、アンナも席を立ち表情を引き締める。

 

「どうか、ご無事で。ホロコースト様」


 深々と頭を下げてサロメは、丁寧に見送る仕草を見せた。

 その姿は貴婦人然としており、一見すれば完璧なホストとしての振る舞いに見える。


 しかし、その背後には大介への執着と名残惜しさが、透けて見えるようだ。

 そして大介は旅を再開させる為に、外に向かおうと一歩を踏み出すが、その瞬間サロメが駆け寄り彼の裾を強く掴む。


「あの……ホロコースト様……。どうか、あと一つだけ、私の願いをお聞きください」


 その声には哀願とも取れる響きがあり、彼女の瞳は切なさを浮かべていた。

 

「はぁ……。ったく、今度は一体なんだよ?」


 振り返りもせず、大介は冷たい声で問い返す。


「どうか、一度だけで構いません。私と今夜、濃密な時を過ごしては頂けませんか……?」


 サロメの言葉には、情熱が込められていた。

 それは純粋な願いのようなでありながら、どこか狂気じみた執念も感じさせる。

 そして彼女の背後では、机上に並べ折られていた冷めた料理を、給仕たちが次々と下げ始めた。


「……悪いが、そんな時間はない」


 短くも的確に答えると大介は、掴まれていた袖を強引に振り払い足を進める。

 すると彼の隣に居たアンナは、無言の状態を貫いて後を追うように続く。


「そうですか……残念です。どうか、ご無事で……ホロコースト様……」


 サロメの声が微かに震えた。

 そして大きく開かれていた重厚な扉は、二人を通してから給仕たちの手により、再び荒々しい音を立てながら固く閉じられるのであった。


 ――そのあと二人は再び橋を渡り終える為に、淡々と足を進め始めて数分が経過した。

 彼ら彼女らは橋の上の住民たちが働く生産エリアへと足を踏み入れたが、それと同時に大介の視界にはアンナの震える手が目に入る。


 彼女は怯えたように、彼の後ろを歩きながら時折、視線を周囲に巡らせた。

 冷たい風が吹き付ける中、アンナの顔色は青ざめて唇は微かに震える。


「これ……大丈夫なんですか?」


 彼女の声は震え、か細いものだ。

 アンナの瞳は目の前で進行中の、凄惨な光景に釘付け状態である。

 

 その視線の先では捕らえられた旅人(老若男女)たちが、鉄の檻の中で怯え必死に助けを求めて叫んでいた。

 その声は風に乗り、耳障りな悲鳴となり、橋全体に木霊している。


 大介は振り返ることなく歩みを進め始めた。

 だが彼の足取りは軽やかで、どこか楽しげですらある。


「ね、ねえ! ちゃんと聞いてますか! あ、あれを見て……!」


 大介の背中に向けて、アンナは絞り出すように問い掛けた。


「んー? ああ、大丈夫大丈夫。あれはただの……そうだな。ここでは”日常風景”みたいなもんだ」

「日常って……そんなの、おかしいですよ! 絶対に!」


 彼の軽口にアンナは、困惑の表情を浮かべた。


 すると彼女の目の前では、一人の中年の男が引きずり出され、手製のギロチン台に押し倒される。

 その男は泣き叫び周囲に助けを求めるが、ギロチン台を取り囲む処刑人(ブラッド・パック)たちは、まるで聞く耳を持たない。


 彼の首が切り落とされる瞬間、アンナは反射的に目を手で覆い隠す。

 

「ひっ……!」

「おいおい。そんな事をしたら、せっかくの面白いシーンが台無しだぞ。ああいうのは、割と珍しい”生パフォーマンス”だぞ?」


 彼女の小さな悲鳴を聞き逃さない大介は軽く肩を竦めながら振り返る。


「面白いって……どうして、そんなことが言えるんですか!」


 アンナの声や体は大きく震えていた。


「ああ……人が……人が……!」

「おい見てみろよ、あの技術! 解体師の手際の良さときたら、もはや職人芸だろ? それにほら、あのギロチンの刃、ちゃんと油が差してあって、まったく錆びていない。まさしくプロの仕事だ」


 目を細めて指で丸を作ると大介は、目の前の光景を望遠鏡のように覗く仕草を行う。

 

「そんな冷静に解説しないでください! 私……吐きそうです……」


 彼の言葉に驚愕の反応を晒すと、アンナは思わず大介の腕を掴んだ。


「吐くなよ、もったいない。いいか、アンナ。旅人たるもの、どんな状況でも冷静を保つのが基本だ。お前の教育係として一応言っとくけどな、こういう場面じゃ”吐かないスキル”を身に付けるのが大事だ」


 両の肩を大きく竦めながら彼は、冗談めいた言葉をお気楽な様子で言い放つ。

 そして大介のふざけた口調にアンナは、ただ呆然とするばかりだ。

 その間にも次の捕虜が、解体台に運ばれる。


 見慣れた様子の作業員(ブラッド・パック)たちは手際よく、その体を解体し始めた。

 四肢が切り分けられ、内臓が取り出され、どこかで待ち受ける調理場に運ばれてゆく。

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