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核戦争から二百年、人類に嫌われるグールの俺だが、なぜか少女にだけ懐かれたので最後まで面倒を見ることにした  作者: R666
第二章

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第26話 ブラッド・パックのお嬢様、現れる

「ちょ、ちょっと待てや! 俺達はそんなつもりじゃ――――!」


 周囲に佇む者達の中で、一人の男が慌てて声を荒げた。


「黙れ。お前の言葉なんて、鼻糞ほどの価値もない」


 冷たく鼻で笑いながら大介は返す。

 そして彼は、そのまま拘束した男の指を、一本ずつ力強く捻り始めた。

 骨が歪む不快な音と男の悲鳴が響き渡り、他の者たちは動揺した表情を次々に浮かべる。


「ちっ……! それを今すぐ辞めて仲間を解放しやがれ! ふざけんな、くそったれグール野郎!」

「あ~ん? 聞こえなかったのか? 俺は武器を収めろって言ってんだぜ?」


 仲間が拷問されて狼狽える男に対し、大介は抑制のない低い声で言い放つ。

 そして彼に拘束されている男は苦痛に喘ぎながらも、仲間たちに視線を向ける事で助けを必死に訴え掛けている。


「生憎と、この姿になってから理性っつうのを失い掛けていてな。お前の指を切り落とすのも、腹を裂いて心臓を抉り出すのも、容易いことよ」


 銃口を押し付ける力を強めながら、大介は言葉を続けた。

 その冷たい声には一切の誇張もなく、ただ残酷な事実だけが込められている。

 

「や、やめてください! そんな残虐なこと……!」


 一連の出来事を傍観していたアンナだが、彼の言動が紛うこと無き本気である事を本能で理解すると、恐怖に顔を歪めながら叫んだ。

 しかし彼女の声が、大介の耳に届いている様子はない。

 

「さぁ、どうする? 仲間が惨たらしく死ぬ所を見たいか、それとも大人しく引き下がるか。俺としては全然、前者でも構わねぇがな!」


 寧ろ彼は目の前の状況を、楽しむかのように表情を緩めた。

 大介の狂気的な言葉を聞いて、周囲の男たちはたじろぎ、次第に武器を手放して放棄していく。

 その一瞬、静寂が訪れる。


「ちっ、賢明な判断だな」


 軽く鼻を鳴らして大介は、拘束していた男の背から膝を退けて立つが、矢継ぎ早に蹴りを相手(地に伏せる男)の脇場に一発だけ打ち込んだ。


 脇場を抉るように蹴られた男は、恐怖に顔を歪めながら苦悶とした悲鳴を漏らし過呼吸気味なると、その場から一刻も早く逃げようとして、震える手足を使い立ち上がろうとするが、なんども路上に倒れ込む。


 そして周囲に立つ他の者たちは、頭の螺子が全て外れている大介の言動を見て、それ以上の動きを見せることはなく静観している。


「くそっ、不完全燃焼だぜ。……おい行くぞ、アンナ」


 そう無表情で言い放つと、大介は再び歩き始めた。

 そんな彼の背中を追い掛けるアンナの顔には、未だに怯えと困惑の色が残る。


 そして二人が橋の中央を越えて数十分が経過した頃。

 灰色の雲が重く垂れ込み、僅かに湿り気を含んだ風が吹き抜けている。


 アンナと大介は橋を渡り終える為に只管に足を進めていたが、その場には瞬く間に新たな緊張感に満ち始めていた。


 モバイルメイドを巡る一触即発の事態は、大介の冷徹な威圧により一時的に収束したものの、今度は橋の奥から新たな厄介事の気配が漂う。


 それは明らかに異質であり、場の雰囲気を更に重々しいものへと変えてゆく。

 そして――足音が響いた。高く、冷たく、規則的で、ヒールが硬い地面を叩く音。


 その音は近づく者の存在を、明らかにするものの、何とも言えない不気味さをも伴う。

 やがてアンナと大介の前に現れたのは、ただの人間(女性)ではなった。

 

 そう、彼女は――全てのブラッド・パックの頂点に立つ存在であり絶対の女王である。

 一目見た瞬間に、その場の誰もが息を吞むほどの、存在感を主張しているのだ。


 この女性の美しさは、見る者を惑わせる、魔性の輝きを放つ。

 漆黒の髪は絹糸のように艶やかで腰まで流れ、その長さの先端は滴り落ちる鮮血を思わせるほど、深紅のグラデーションに染まる。


 髪は歩く度に波打ち、闇の中で輝きを放つようだ。

 彼女の瞳は宝石のように美しい真紅。

 だが、その奥には狂気と支配欲が宿り、見つめられる者は足を、すくませずにはいられない。

 

 陶器のように滑らかな白い肌は、完璧なまでの化粧により、さらに引き立てられている。

 血のように鮮やかな赤い口紅が、微笑む度に敵の恐怖を煽るかのようだ。


 頬を掠めるほくろや首筋に漂う甘い香りが、彼女の妖艶さを更に際立たせ同時に、危険な魅力の裏に潜む残忍さを予感させる。


 そして彼女の腰の拳銃嚢にはリボルバーらしき物が収められており、その銃は念入りに磨き上げられているようで全体的に銀色の眩い光を放つ。


 グリップ部分は、血のような赤いベルベットで覆われ、彼女の美しい手元を更に引き立てる。

 銃身には彫刻が施され、そこには『美は力、力は支配』という言葉が刻まれているようだ。


 さらに太ももの帯革には、投げナイフが幾つか装備されている。

 ナイフのデザインは流麗で、柄の部分にはルビーらしき宝石が、嵌め込まれているようだ。


 それから彼女の服装は、貴族的な品位と狂気的な美学が、融合したもののようである。

 洋服(ドレス)は濃紺を基調とし、胸元は大胆に曝け出され、ふっくらとして柔らかな谷間が際立つ。


 コルセットは細身のウエストを更に引き締め、鮮血のような赤い刺繍が細部を彩る。

 裾はタイトながらも深いスリットが入り、歩く度に彼女の滑らかな太ももが覗く。

 その動きには挑発的な美があり、見る者の目を釘付けにするようだ。


 黒いサテンの長手袋は彼女の指先まで覆い、その滑らかな光沢が手元を更に妖艶に見せる。

 指輪にはルビーやガーネットが嵌められ、赤い石が動く度に揺れていた。

 足元にはハイヒールのロングブーツ。


 艶やかな黒革が女性の脚線美を際立たせ、ヒールの先端は鋭く装飾としてだけでなく、武器にもなる構造を持つ。


 首元にはダイヤとルビーで装飾されたチョーカーが輝き、その中央には彼女の象徴とも言える血滴のペンダントが揺れる。


 耳元のイヤリングは小ぶりなルビーがあしらわれ、女性が動く度に僅かな音を立てて周囲を魅了した。

最後まで読んで頂きまして誠にありがとうございます。

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