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核戦争から二百年、人類に嫌われるグールの俺だが、なぜか少女にだけ懐かれたので最後まで面倒を見ることにした  作者: R666
第二章

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第15話 フェラル・ゴウル

「うぐあぁぁぁぁ……!」


 頭蓋骨が締め付けられるような痛みも生じると、大介は右手で喉を押さえて左手で頭を抱え、その場で膝をついた。


「えっ、な、なんですか!? ど、どうしたんですか急に!?」


 彼の突然の変化に、アンナは驚き動揺した様子で、大介に駆け寄る。


「ああ、まじかよ……このタイミングでかよ……! はぁはぁ……っつうことは、あのラジカル・サプレッサー……紛い物だったわけだな……。ははっ……クソがッ!」


 熱を帯びたような荒い息を吐きながらも店内の床を拳で叩く。

 その声には明らかに、苦悶と焦燥が混在していた。


「何のこと!? ねぇ! 一体何が起きてるんですか!? グールさん!」


 苦しむ彼の顔を横から覗き込むとアンナは、露骨に取り乱しつつも必死に声を掛け続ける。

 だが彼女の問い掛けに応える余裕もなく、大介は右手で自分の首筋を押さえながら呻き声を上げた。


 その手は小刻みに震えており、全身が膠着している。

 その間にも店内の奥から聞こえる機械音は止むことなく、ついには店内の壁際に不自然に設置されていた鉄扉が、騒々しい音を立てながら開かれた。


 そして次の瞬間――開かれた鉄扉の奥からは、隔離されていた大量のフェラル・ゴウルが次々と解放され、その醜くも完全に自我を喪失し、生者を食らう事だけを本能とする怪物が二人の前に姿を晒す。


 フェラル・ゴウル――それは大量の放射線を長期に渡り浴び続け、結果として理性を失い本能のままに動く怪物と化した、グールの上位種であり異形の存在。


 全身が灰色で肌が裂けて肉や骨が至る部位から露出し、腐り果てた肉体を引きずりながら姿を現した、フェラル・ゴウルたちの目は空洞のようで、焦点の定まらない動きが不気味さを際立たせている。


「え、えっ!? 嘘でしょ……こんなの……!?」


 アンナの声は震え、眼には恐怖の色が滲む。

 その場で立ち尽くしながらも、彼女は後退りする事しか出来ない。


「武器を……武器を取れ!」


 呻きながらも大介は、腰の拳銃嚢からマグナムピストルを取り出して、それをアンナの前に突き出す。

 銃を持つ手も大きく震えており、目の奥には焦燥の色が濃く浮かんでいる。


「むりむりむりむり! こんなのどうすればいいんですか!?」


 頭を抱えてアンナは叫んだ。

 目の前に迫り来る異形の群れに、完全に圧倒されている様子。


「俺が……戦えねぇ今……お前がやるしかねぇんだ!」


 苦しそうに顔を歪めながらも大介は怒鳴る。

 その声には普段の冷酷さを凌駕する迫力があった。

 

 そしてアンナは恐怖心に体が支配され掛けると、震える手で銃を受け取り両手で構えると、狙いを目の前のフェラル・ゴウルの胸部に定めて引き金を引く。


 爆発的な銃声がマーケット内に響き渡り、一体のフェラル・ゴウルの胸部に銃弾が命中すると、赤い鮮やかな花が咲き誇り、その場に背から倒れ込む。

 しかし、そのフェラル・ゴウルの背後からは、続々と新たな個体が現れる。


「うわああああっ! なんでこんなに、いっぱい居るんですか!? 全部倒すなんて無理ですよぉぉぉ! 私たち、ここで死んじゃいますぅぅぅぅ! た”す”け”て”ク”ー”ル”さ”ん”ん”ん”!」


 今にも泣きだしそうな顔で、弱音を思う存分に吐き捨てながら、アンナは銃を乱射した。

 彼女は後退りしながら弾を撃ち続けるものの、フェラル・ゴウルたちは怯むことなく進み続ける。


「頭を狙え! 体を撃っても意味がねぇ!」


 地面に伏せていた大介は、必死に体を這いずらせて近くの陳列棚へと近づき、それを背もたれとして使用し、楽な姿勢を取りながら指示を飛ばす。


 彼の声は掠れながらも、その力強さを喪失してはない。


「頭って簡単に言いますけど! 揺れるし怖いし……うわぁっ!」


 目の前に迫るフェラル・ゴウルの一体を撃ち抜きアンナは必死で距離を取る。

 しかし、その動きで姿勢が不安定になると、弾丸が(頭部)を外す事も多い。


 店内にはフェラル・ゴウルの呻き声と銃声、そしてアンナの叫び声で埋め尽くされている。

 そんな中、大介は自分の衣嚢の中を探り、発作を抑える薬を必死で探した。


「頼む……どこだ……!」


 彼の指先は大きく震え、視界はぼやけている。

 それでも大介は意地で、懐から錆びついた銀色の箱を取り出すと、そこから一本の注射器を取り出し腕に突きたてた。


 薬液が体内に流れ込む感覚と共に、彼は一瞬息を吐き捨てる。

 しかし、完全に回復するまでには時間が必要だ。


「アンナ! 少しの間でいい! 持ち堪えろ……!」

「こんなの聞いてませんよ! ていうか、絶対おかしいでしょ! グールさんは、こんな世界で一体今まで、どうやって生きてきたんですか!」


 彼の声に応えるように、アンナは涙目で叫び返す。


「俺は死なねえから生きているだけだ……てめぇもそうしろ!」


 マグナムピストルの弾薬を懐から取り出すと、次々に投げ捨てるように彼女へと渡しながら大介は怒声を吐く。


 ――そして時間を掛ける事で、フェラル・ゴウルたちは続々と撃ち倒されていくものの、その数は明らかに多すぎた。

 ついには弾薬が尽きかけ、アンナの息は次第に荒くなっていく。

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