表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
核戦争から二百年、人類に嫌われるグールの俺だが、なぜか少女にだけ懐かれたので最後まで面倒を見ることにした  作者: R666
第二章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
25/102

第11話 ジェネリラムネ

「う”っ”……! す、すみません……グールさん……少しだけ休憩を……」


 乾いた風が吹いてゆく中、突如としてアンナが青白い顔を晒しながら、横腹を抑えつつ苦し気な様子を見せる。


「なんだ、腹痛か? それとも、女の日ってやつか? ……まっ、どっちにせよ休憩は必要そうだな。無理をして歩いて倒れられても俺が困るからな」


 彼女の全身を一見してから大介は様々な可能性を考えて肩を竦めると、一旦休憩を取るべく周囲を見渡した後、少し離れた位置に屋根の一部が吹き飛んだ廃墟を見つけ、そこへ向かう。


 その廃墟は見るからに一軒家の残骸であり、二人が建物に近づいていくと、至る箇所に戦闘の痕跡が鮮明に残されている事が分かった。


 そして、さらに建物との距離が縮まると、血の痕跡と焦げた金属の臭いが微かに残留しており、大介の鼻をつく。


 二人が廃墟の前に着いて中に入ると、直ぐにでもアンナは体を休ませたいのか、顔を引き攣らせながら背中を壁に預けて地に腰を落ち着かせ、大介は食べ物や使えそうな物資を探すように、戸棚や衣装棚を次々に開けて荒らしてゆく。


「はぁはぁ……。く”っ”ぁ”ぁ”ぁ”っ”……!」


 横腹を強く押さえながらアンナは、呼吸を大きく乱しつつ呻き声を上げる。


「おいおい、本当に大丈夫か? ……ちっ、しゃあねぇな。ちょっと見せてみろ」


 額に脂汗を大量に滲ませ全身を震わせるという尋常ではない彼女の姿に、流石の大介も違和感を覚えると部屋の物色を途中で辞めるように戸棚へ伸ばした手を下げた。


 今現在のアンナは右手で左の横腹を強く押さえており、顔を常に顰めて苦悶とした唸り声を出し続けている。


 そして大介が彼女に接近して小さく溜息を漏らしてから、その場に屈んで手を伸ばして状態を確認しようとした。


 しかしアンナは横腹を確認される事を拒否しているのか、抵抗するように右手に力を込めると決して退かそうとせず、頭を左右に振る事で前髪が乱れて顔を隠し、額からは雨のように汗が滴り落ちてゆく。


 そんな僅かな抵抗に対し大介は苛立ちの感情を抱くと、優しくするのは早期に辞めて強引に彼女の右手を掴み、小娘の力を屈服させるように無理やり横腹から退かせると、乱暴に服を捲り上げた。


 するとアンナの白き肌の横腹には――銃弾が貫通したような痕が赤黒く広がり、それはV.R.Lとの戦闘に巻き込まれていた事を意味する。


「あぁ~、なるほどな。被弾していやがったのか。どおりで、あんなにうるさかった口が急に静かなわけだ。……まっ、面倒事に変わりはないがな」


 患部の状態を確認して大介は何度も小さく頷くと、先程までの彼女の不審な言動にも納得が出来て、徐に右手の人差し指を立たせると、それを敢えて傷口へと近づけ優しく撫でるように触れた。


「ん”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”っ”!」


 その刹那、部屋の中に置かれていた破損した冷蔵庫やカビの生えた食器類が、大きく振動する程のアンナの断末魔が、その場に木霊する。


「ははっ、痛いか? まあ、痛いだろうな。なんせ俺の指が、お前の傷口を抉るように、入ってんだからな」


 人差し指を穴の空いた患部へと刺し入れて、ゆっくりと前後に動かす事で彼女が痛みに悶えて苦しむ姿を見て、大介は気分が高揚とすると自然と笑みが零れて声色も愉快なものとなった。


 その後も暫くの間、アンナを利用して存分に遊び尽くして娯楽が満たされると、彼は非常に穏やかな気分のまま懐から、細長く錆びついた銀色の(ケース)を取り出して、そこから一本の注射器を取り出す。


 それは大介が『ジェネリラムネ』と呼ぶ、戦前の技術の結晶だ。

 ジェネリラムネは、戦前の科学が生み出した奇跡の治療薬である。

 

 この注射器の中には、興奮剤と治癒剤が、詰め込まれているのだ

 それを体内に注入すると血液を介して全身に行き渡り、細胞の自己治癒力を一気に引き上げるという仕組みである。


「おい、動くんじゃねえぞ。今から注射する。これは退屈な俺に、娯楽を提供してくれた礼だ。有難く受け取りやがれ」


 そう言うと大介は慣れた手付きで患部へと狙いを定めて針を深々と刺し込み、反射的に暴れるアンナを片腕のみで押さえつけながら中身の薬剤を入れてゆく。


「はっ、これがなけりゃ失血死していたかもな」


 容器に満たされていた薬剤を全て彼女の体内に入れ終えると、素早く針を抜いて空の注射器をごと適当な場所に投げ捨て、彼は不敵な笑みを浮かべながら腰を上げて立つ。


「げほっ……ごほっ……はぁはぁ。それ……本当に大丈夫なんですか……?」


 痛みに耐えているのか、額に大粒の脂汗を滲ませつつ、顔を歪めながらもアンナは問い掛けた。


「あー、絶対の保証はないな。お前に使ったジェネリラムネは、川の水で薄めた粗悪品だし。まっ、だから後は自分の治癒能力を信じていろ」


「わ、わかりました……」


 何処か適当な雰囲気を全身から醸し出している大介の言葉を聞き、アンナの表情に不安の色が濃く滲むが、その言葉を呟いたあと口を閉じて再び俯いた。


 そして数分が経過すると、アンナは身震いを起こし始め、その直後にジェネリラムネの効果が現れる。

 生々しい傷痕から溢れ出る出血が止まり、皮膚も再生が始まり痛みが治まりつつあるのか、彼女の顔から歪みが消えてゆく。

最後まで読んで頂きまして誠にありがとうございます。

宜しければ評価とブックマーク登録をお願い致します。

活動の励みとなり更新が維持出来ます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ