第6話 パワーアーマーは高機能
「はっ! パワーアーマーを完全装備した我に、近接戦闘を挑むつもりか? この身の程知らずがッ!」
冷笑気味な笑い声を上げながらナターシャは、ガトリング銃を投げ捨て放棄すると両腕を大きく振る事で、腕の部位に格納されていたブレードを展開した。
そして大介はマグナムピストルをホルスターに戻すと、即座にダブルバレルショットガンを引き抜いて構え、発砲する事で相手との間合いを更に詰める。
しかしナターシャの動きも俊敏であり、彼女のブレードが一閃し、彼の肩をノコギリ状の刃が掠めた。
「ぐぁっ……!」
肩を切られた事で苦悶とした声が漏れるが、それでも痛みを堪えながら大介は太腿のホルスターから、ダガーナイフを引き抜き反撃に転じる。
そして二人の近接戦闘での攻防戦は暫く続き戦いが変化していくと、唐突に大粒の雨が降り出して足場の土が多くの水分を吸収すると、泥の状態と化して非常に場が不安定な状況となった。
そんな中、さきほど大介に撃たれた兵士たちが冷たい雨を全身に浴びた事で、次々に失神状態から覚醒して起き上がり始めると、その中には当然ながら葛葉も含まれている。
覚醒したばかりの葛葉は呆然としていたが、周囲を見渡して場の状況を伺うと兵士として、やらなければならない事を思い出したのか、声を荒げて他の生き残りの者たちと共に銃を構え、制圧射撃を行いながら大介を包囲しようとした。
けれど大介は瞬時に葛葉たちの動きにも意識を向けると、巧みに遮蔽物を利用して数多の弾丸を避け続ける。
「逃げ場はないぞ! 大人しく投降しろ!」
彼が自身の傍から離れた事でナターシャは叫ぶと、泥の上に転がるガトリング銃を手に取り構えた。
だがその瞬間、大介は最後の手段として、一個の手榴弾を懐から取り出す。
「これで幕引きだ! ブリキ人形と、その兵隊たちよ!」
叫ぶように言い放つと彼は安全ピンを抜いて、狙いをナターシャへと定めて手榴弾を投擲した。
すると、その数秒後に路地を揺るがす程の爆発が起きて、瓦礫や泥や一部兵士たちの肉片が同時に舞い上がる。
濃い煙が立ち込める中、即座に大介はアンナが身を隠している場所へと走り寄った。
「今しかチャンスはねぇ! さっさと、こっから離れるぞ!」
「は、はい……っ!」
大介の顔を見て震えながらも頷くと、アンナは彼の後に続くように物影から飛び出して走り出す。
「ごほっ……! ま、待てッ! 絶対に逃がさんぞ! お前を必ず殺して、その腐った首を頂く!」
パワーアーマー装甲は伊達ではないようで、手榴弾の直撃を受けようとも死亡しておらず、煙を掻き分けて立ち上がると尚も声を荒げて、圧倒的な殺意と怒りを全身に滲ませた。
そして大介とアンナがV.R.Lの兵士たちから離れると、今現在は瓦礫が散乱する街の広場に居る。
この街に足を踏み入れた時は全体的に晴れていた空も、今では灰色の雲が低く垂れ込め空からは冷たい小雨が降り注いでいた。
広場を囲む建物の壁は銃痕で穴だらけで廃墟同然の店や倉庫が雨に打たれている。
そんな中、二人は近くの廃墟に逃げ込み、そこで息を殺して身を潜めるが、大介はダブルバレルショットガンから空の弾を抜き取り投げ捨てると、弾薬帯革から新しい弾を取り出して装填し、銃本体を強固に握り締めた。
彼の顔には泥と血の跡が混じり、その鋭い目付きは敵の動きを、一瞬たりとも見逃すまいとしている。
そして大介が顔を物影から出して外の様子を伺うと、その視線の先には雨の中を勇者のように、ゆっくりと突き進むパワーアーマーを纏うナターシャと、手榴弾の爆風を受けても生存した数人の兵士たちの姿が映った。
V.R.Lの兵士たちは銃を構えて周囲を警戒しながら、雨音と共に重々しい足音を混ぜて地面を震わせた。
「アイツの装甲は厄介だが、弱点は分かっている。あれは旧型と比較して、性能面は強化されているが、基本の型は旧型と一緒だったからな。……ああ、至近距離で見たんだ。間違えるはずがねぇ」
独り言を呟くように、大介は低い声で吐き捨てた。
彼は過去に日本防衛軍に従軍していた経験があることから、パワーアーマーという技術に触れた事がある。
それ故にパワーアーマーが、どれほどの脅威を持つかや、どの部分が脆弱なのかも熟知していた。
そして雨が降り続ける中、部下達を率いるナターシャは大介たちが隠れている廃墟に近づくと、その堂々たる風貌を晒す。
パワーアーマーの光沢が、雨に濡れて鋭い輝きを放つ。
背中にはガトリング銃が装備され、その姿はまるでブリキの女王だ。
「必ず見つけ出して仕留めろ! 我の許可は必要ない! 各自の判断で殺せ!」
ナターシャの大声が広場全体に響く。
その命令に従うように部下達は散開して各自が自由に動きだす。
そしてパワーアーマーのヘルメットから、赤いライトが射出されると広場をスキャンし始めた。
大介は身を潜めた廃墟の中で呼吸を整えながら、頭の中で即興の作戦を練る。
彼の目に映るのは、近くに転がる古びたドラム缶、壊れかけのクレーン、そして瓦礫の山。
状況は明らかに不利だが、この環境を利用して打開する手段は残されていた。
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