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核戦争から二百年、人類に嫌われるグールの俺だが、なぜか少女にだけ懐かれたので最後まで面倒を見ることにした  作者: R666
第二章

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第4話 隊長と部下

「おう、佐々木葛葉ジュニア・ガード(一等兵)。随分と遅かったな。それに、お前達もな。そんな体たらくでは全員教育隊からやり直させるぞ。取り敢えず遅れた罰として、佐々木には後で部隊全員分の、パワーアーマーを磨いて貰う。勿論、鏡のように自分の顔が映るまでな。他の者については、あとで罰の内容を伝える。楽しみにしておけ」


 視線を彼や他の兵士たちに向ける事なく女性は、静かに苛立ちを含んだ口調で淡々と語るが、その視線は依然と大介に力強く一直線に向けられている。


「ぎょえっ!? ぜ、全部っすか! 木村ナターシャ、ヴァイス・リーフ(上級曹長)! そそ、それはちょっと流石に厳しいんじゃ……」


 ナターシャから告げられた罰の内容が想像を絶するもののようで、すぐさま葛葉は表情を驚愕のものに変えて珍妙な声を上げると、視線を物凄い速度で泳がせながら罰の緩和を求めた。


 しかし他の兵士たちは既に諦めているのか、まだ見ぬ罰を既に受け入れているかのように、重たい表情を晒して口を固く閉じている。


「上官命令だ。貴様に拒否権は存在しない。……それよりも、気になる事がある。あのグールの顔、何処かで見たはずだ。佐々木ジュニア・ガード。直ちに指名手配書、並びに重要人物の書類を確認しろ」


 交渉の余地は一切ないようで、彼女は規律の在る声を出して罰の緩和を却下するが、矢継ぎ早に険しい表情を晒すと右手で葛葉の肩を軽く叩いて、一つの指示を出して物々しい雰囲気を全身から醸し出す。


「うげぇ、今から一枚ずつ確認するんっすか? だりぃぃ~。……まっ、まー、でもやりますよ。一応、仕事なんでね」


 確認作業を強いられた事で、葛葉は露骨に嫌な顔を見せて気怠い声を出すが、ナターシャから放たれる威圧感に気押されたようで、真面目に与えられた仕事を実行するべく、鞄から書類の束を取り出して一枚ずつ確認を始めた。


 その書類には似顔絵と対象の名前が記されているのか、彼は書類と大介の顔を交互に見ては忙しなく手を動かしている。


「……おい、佐々木ジュニア・ガード。あのグールについて記されている書類はあったか?」


 銃口を大介の顔から逸らす事なく只管に向けながら、ナターシャは再び彼の肩を軽く叩くと確認作業を急かす。


「少々、お待ちくださいっす~。……お、おっと! これっしょ! ええ、ありましたよ隊長。はい、どうぞ」


 手と首を忙しなく動かす葛葉の顔には、脂汗のようなものが滲んでいたが次の瞬間、先程まで高速で動いていた手と首が同時に止まり、書類の束から一枚の黄ばみの強い古びた紙を抜き取り、それを彼女に手渡す。


「……ほう? これは、また随分と古株のグールのようだな」


 劣化の激しい一枚の紙を彼から受け取ると、ナターシャは漸く大介から視線を外して、意識を紙に向け目を鋭くさせた。


「おい、そこの指名手配中の犯罪者! 速やかに武装を放棄して両手を挙げやがれ! 妙な真似だけはしてくれんなよなぁ! それと抵抗の意志とかも見せんなよ! ここで銃撃戦を始めたら、俺の隊長が黙ってねぇからな! このクズ野郎(グール)! ……まっ、覚悟が決まってんなら話は別だが」


 何を考えているのか唐突に葛葉が声を大にして荒げると、即座に散弾銃を構えて銃口を大介の胴体に向け、他人の力を借りる前提で強気な発言を繰り返すが、最後は不敵な笑みを浮かべて些細な煽りを行う。


「……ははっ、覚悟か。ああ、そうだな。覚悟っつのは大事だ。何事においてもな。――はっ、覚悟なんざ、とっくに決まっているさ。お前は逆に、どうなんだ? チェリーボーイ」


 散弾銃を突きつけられても何一つ動じることなく、大介は肩を大きく竦めると余裕の笑みを零しつつ答えるが、すぐさまダブルバレルショットガンを構えて銃口を葛葉に向けた。


 そして彼のその行為が決定的となり、明確に戦闘の意志ありと判断されたようで、ナターシャが額に青筋を張ると、


「賞金稼ぎの危険因子(グール)を直ちに排除しろッ!」


 力強く右手を挙げて、その場で部下全員に聞こえるように、敢えて叫び声を上げて対象の抹殺任務を指示する。


 そして戦闘行為へと段階が進んだ事で、ナターシャは腰に下げていたヘルメットを即座に被ると、パワーアーマー完全装備状態となり、圧倒的な存在感と重厚感を全身から漂わせた。


「おい、アンナァ! この街は今から、銃弾が飛び交い硝煙が香る、賑やかなパーティー会場だッ! 死にたくなけりゃ、俺についてこい!」


 そう言いながら大介は懐から幾つかの視認妨害用発煙手榴弾(スモークグレネード)を取り出すと、慣れた手付きで安全ピンを抜いて即座に足元に転がし、それから濃い白煙が勢いよく放出されると同時に走り出して誓うの建物の影へと逃げ込む。


「は、はい! どこまでも付いて行きます! こんな所で私は死にましぇええええええん!」


 彼が走り出すと同時にアンナも身を低くして動き出すと、恐怖ゆえにか既に目からは大粒の涙が絶えず流れているが、絶対に生き延びるという確固たる意志を叫び散らかす。


 そして二人が建物の影に身を隠す事に成功すると、大介は即座にダブルバレルショットガンの状態を確認してから構え直し、アンナは自身の頭を両手で押さえて屈み込むと小刻みに震えていた。


 だが急に突風のようなものが吹くと、周囲に立ち込めていた煙幕が全て流れ消え、その瞬間に最初の銃声が鳴り響く。


 葛葉が所持していた散弾銃の弾丸が、建物の外壁の一部(煉瓦)を撃ち抜き粉砕すると、大小様々な破片が各所に散る。


 そんな中、大介は冷静に狙いを定めて応戦する姿勢を見せると、静かに引き金を引いてショットガンの咆哮を轟かせるが、放たれた弾は葛葉ではなく別の新兵らしき者に直撃し、その者は後方に吹き飛ばされた。

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