第3話 若きチャラ男の兵士
「おい……ったく、まじかよ。よりにもよって、パワーアーマーかよ。しかも、ありゃ……俺が現役の時よりも進化していやがる。……はぁ、しゃあねぇ。おい、アンナ! 俺に付いてこい!」
物陰から相手の様子を観察していた大介は本能で身の危険を理解すると、即座に背中に装備していたダブルバレルショットガンを手に取り構える。
「は、はい! どこまでも、ついて行きます!」
彼が武装した事で物々しい雰囲気を察知したようで、アンナは即座に緊張感の込められた返事をした。
そうして二人は、すぐさま行動を開始すると狭い路地を小走りで突き進むが、大介の横では彼女が終始不安そうに周囲を見渡している。
「グールさん! こんな路地に居て、本当に大丈夫なんですか?」
「ああ、大丈夫だ。むしろ、こういう場所こそ戦い向きだ」
アンナの問い掛けに対して、大介は視線を前方に向けたまま、歩みを確実に進めながら答えた。
しかし、そんな彼の声色には僅かな緊張が滲んでいる。
「おい、そこの二人、直ちに止まれ。ん……そこの女、貴様ネオテックスの者か?」
「おっと……これはこれは……実に厄介だな」
突如として若い女性の声が前方から聞こえてくると、大介の視界にはパワーアーマーを装備した者が堂々たる姿で立ち塞がるが、それは先程メスプレイから降りた人物で間違いない。
まるで瞬間移動でもしたかのように現れた、この女性はパワーアーマーという機動性の高い兵器を装備しているからこそ、大介たちの前に瞬時に姿を見せる事が出来たのであろう。
「そ、それは……わわ、私に聞いているんですか!」
異様な見た目をした兵士が、急に目の前に現れた事でアンナは動揺の姿を晒すと、すぐさま大介の背に隠れて僅かに顔を覗かせながら答えた。
「ああ、そうだ。他に誰か居る? こんな辺境の地で、そんな服を着ている者は、そう多くは居ないからな。さぁ、我の質問に答えよ」
パワーアーマーを装備している女性が静かに頷き反応すると、質問の答えを早期に求めているのか、両手で抱えていたV.R.L支給の突撃銃を構えて、その銃口を彼女の顔へと向けた。
「ひぃっ! ……そ、そうです! 私はネオテックスエッジ出身です! だから銃を向けないで下さい!」
銃口を向けられた事で恐怖心が一定の度合いを瞬時に超えたようで、アンナは短く悲鳴を上げると青白い顔を晒しながら、即座に両手を挙げて自分の出身について明かす。
「ほう、それは実に運がいい。貴様には後で尋問を受けて貰う。勿論、拒否権はない。拒否すれば直ちに、尋問は拷問へと変わる。それを肝に銘じておけ」
彼女の返答が自身の求めていたものと合致したのか、女性は先程まで向けていた銃を静かに下ろすと、何処か軽い声色を出しながら脅しのような言葉を口にした。
「ひ”ぃ”ぃ”い”! 私は何も悪い事はしてませんよぉ”ぉ”ぉ”!」
拷問という言葉を聞いて色々と想像したのか、大介の背でアンナは汚い悲鳴を上げると両手で自身の頭を抱えて、その場に蹲ると歯を小刻みに痙攣させて恐怖の音を鳴らす。
「……それで? このグール風情は、一体ここで何をしている? なぜネオテックスの者と行動を共にしている? さっさと答えろ」
全身に鈍い光沢を放つパワーアーマーを装備している女性は、艶やかな黒髪を風で揺らしながらも鋭い視線を大介へと向けると、低くて冷たい声色で幾つかの質問を行う。
「あ? 俺が何処に居ようが、なにをしていようが、アンタには関係ないだろ。さっさと失せな、チェリーガール」
質問の対象が自分へと移行した事で、彼は面倒事に巻き込まれた事を確信すると、敢えて陽気な笑みを浮かべながら返すが、右手の人差し指はダブルバレルショットガンの引き金へと確実に添えられている。
「ふむ、中々に言うではないか。よろしい、貴様には尋問ではなく拷問を適応する。大人しく従順に従っていれば、痛い思いをせずに済んだと言うのに、愚かなものだな」
大きく何度も頷きながら女性は彼の言葉を聞き入れると、即座に下ろしていた銃を再び構えて、苛立ちを含んだ態度を見せつつ銃口を向ける。
「……うぷっ、き、気持ち悪い……。……はぁ……はぁ、ヘリ酔いで準備に手間取りました……。ほんっと、申し訳ないっす……隊長」
突如として青白い顔を晒して、吐き気を催した様子の一人の若い男性が彼女の背後から現れると、短く敬礼の仕草を取りながら謝罪を述べた。
その男性の容姿としては、身長が百六十八ほどで外見的な年齢は二十歳ほど。
銀髪のミディアムレイヤーに、赤や黒のハイライトが入る派手な髪型が特徴的。
軽く寝癖がついたような無造作感が、チャラ男らしさを強調している。
切れ長の目元は笑みを浮かべる度に軽薄さを醸し出すが、その奥には鋭い眼光が隠れているようだ。
病気的な程に白い肌は細身の体格をしており、それはまるで長年引きこもりをしていたような風貌であり、筋肉などは皆無。
右耳にはシルバーのフープピアスが付けられており、見た目には一応の気遣いが窺える。
彼の服装はV.R.L規定の灰色のタクティカルジャケットを着用しているが、本人はそれを普通に着る事を『ダサい』とでも考えているのか雑に着崩していた。
袖を肘の上まで捲り、襟元は大きく開かれ、だらしない印象が強い。
胸元にはアクセサリー感覚なのか、弾薬ポーチが付けられている。
黒いタクティカルパンツは膝に擦れた跡や傷があり、裾をスニーカーに無造作に押し込んでいるようだ。
靴は黒のスニーカーで、動き易さを優先しているようだが、よくみれば泥汚れなどが目立つ。
右手には指なしの革製の手袋を装着。
左手にはラフなブレスレットを付けており、武装感とカジュアルさが混在していた。
ヘッドセットや簡易ゴーグルを首にかけ無線通信に備えている。
そして今現在、若き男性が右手に持つ武器としては『ウィンチェスター・M1919』であり、それはV.R.Lから支給されたであろう古典的なポンプアクション式散弾銃。
その銃は状況に応じてスラッグ弾や、貫通弾や、火炎弾を使い分ける事が可能。
しかし彼が所持する散弾銃はカスタムされているようで、グリップ部分は黒い皮革で巻かれていて握りやすい仕様。
銃身には自ら彫り込んだのか不規則な傷痕がある。
そして若い男の兵士が現れた事で、その後に続くように他の兵士たちも慌てた様子で一斉に、その場に現れて集結完了させた。
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