第13話 人肉ジャーキー
「時には、もっと過酷な選択を強いられる事もある。食わなきゃ生き残れねぇ世界ってのは、そういうもんだ」
焚き火にジャーキーを掲げながら彼は薄く笑う。
そしてアンナは焚き火を挟んで大介を見つめた。
彼女の純白の髪は月明かりを浴びて美しく輝き、水色の瞳が揺れる炎を映し出している。
その表情には不安の色が浮かび、少しだけ眉を寄せていた。
「……それは、なんのお肉なんですか?」
小さな声でアンナは、素朴な疑問を口にする。
それに対して大介は答える代わりに、ジャーキーを一本だけ手に取り、ゆっくりと自身の口へと運んだ。
顎を動かしながら噛み締める度に、ジャーキーが千切れ軽い音が夜の静寂を破る。
「これか? まぁ……お前の想像に任せるさ。だが、覚えておけ。飢え死にするくらいなら、時には人を食わなきゃいけない時もある」
肩を小さく竦めながらも大介は、にやりと笑みを浮かべて返す。
「ま、まさか……。それって、人肉じゃないですよね……?」
彼の言葉を聞いてアンナは、青ざめた顔を晒すと、震える声で真実を問う。
「はっ、そんな大それたもんじゃねぇ。ただの獣肉だ。……そうだな、具体的に言えば放射線の影響で、突然変異を起こして頭が二つある牛のだ」
再びジャーキーを噛みながら大介は首を横に振ると、この肉が人間の一部ではない事を伝える。
そんな彼の口調は軽いものだが、どこか含みを持たせている様子。
その態度にアンナは何処となく疑問を覚えたようだが、深く追求する事を躊躇ったようだ。
「……本当ですか?」
恐る恐るという様子で彼女は尋ねる。
「信じるか信じないかは、お前次第ってところだな。まあ、お嬢ちゃんが嫌っつうなら、ここにある食料は全部、俺が食うだけの話だ。へっ、助かるぜ。こんなくそったれの世界だと、食い物は何よりも貴重だからな」
焚き火にジャーキーを掲げながら、揶揄うように大介は不敵な笑みを浮かべた。
そしてアンナは小さく唇を噛み締めながら、焚き火を凝視するように見つめる。
彼女の顔には迷いが滲んでいるが、それでもアンナは一言も発さずに、ただ地面に置かれていた缶詰を静かに持ち上げた。
すると意を決したように、彼女は再び突き匙を手に取ると、嫌々ながらも缶詰の中身を掬い上げて口に運ぶ。
一方で大介は焚き火越しにアンナを観察しながら、淡々とジャーキーを食べ続けていた。
そんな彼の目は何処か遠くを見ているようにも見え、炎に照らされた横顔には複雑な感情が浮かんでいるようであった。
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