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核戦争から二百年、人類に嫌われるグールの俺だが、なぜか少女にだけ懐かれたので最後まで面倒を見ることにした  作者: 美味いもん食いてぇ
第二章

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第1話 スズキ補給所

 ちょっとした食事騒動の後、アンナと大介は腹が満たされた事で睡魔に襲われると、その辺りに落ちていたダンボールを冷たい地面の上に敷いて、さらに上から薄い布を被せて即席のベットを作ると、すぐさま深い眠りに就き、その日は瞬く間に終わりを迎えた。


 そして次の日の朝を迎えると二人は、塩味が凄まじい缶詰食を口にして簡単な朝食を済ませ、そのあと十分ほど大自然に囲まれた状態で諸々のトイレ事情を済ませると、すぐさま行動を開始させて道なりに沿うようにして歩き始める。


 今現在の天候は曇りが強いが、全体的に晴れで気温は低くもなく、人間の活動に適している温度だ。

 それから瞬く間に数時間が経過すると、大凡で昼時を少し超えた頃に、一つの中規模程の大きさを誇る、とある街の前に大介とアンナは到着したのである。


 その街は旧岐阜旧土岐市の旧駄知町に該当する場所であり、大介とアンナは、この先の長い旅路で必要になりそうな新たな物資の補給や歩き続けた脚を休ませるべく、その街に入ろうとした。


 しかし、その街に足を踏み入れた瞬間、鼻を刺すような金属の錆びた匂いが二人を出迎えたのである。

 この街は全体的に工業地帯であり、その中心部に位置するこの街は、薄暗い空の下に広がる煙突の群れで知られ、廃墟のような倉庫や古びた工場が所狭しと並んでいるのだ。


 そして天候が僅かに変化し、空が鉛色の雲に覆われると遠くの空に漂う煙が、その一部となっている。

 それから大介とアンナは街を見渡しながら歩みを進めると、細い路地や廃材が散らばる舗装の剥がれた道路が目の前に広がりゆく。


 そこに居る人たちの影はまばらで、たまに見かける住民たちは暗い目付きを晒すと、それはまるで余所者を歓迎していないかのような雰囲気であり、彼ら彼女らは二人に対して睨みを利かせて圧を掛けてきた。


「……この街、なんだが居心地が悪いですね」


 大介の隣を淡々問歩きながら、アンナは眉を顰めて小さく呟く。

 彼女の長い白髪は、工業地帯の薄汚れた風景の中で目立ち、艶やかに揺れている。


 その水色の瞳は周囲を警戒するように忙しなく動いていたが、それは同時に何処か怯えているようにも見えた。


 それに対して大介は、特に気にした様子もなく肩を竦める。

 だが彼の外見は、この場所においては異質そのものだ。

 

 肌は荒れた土のようにぎらついており、瞳の奥には年季が入り過ぎた風格が漂う。

 周囲の視線に対して微塵も感じさせない様子は、大介の生き抜いてきた過酷な日々を物語っていた。


「ここは物資の補給には向いているが、人情味がある連中が居ると限らねぇ。まあ、何処に行っても、そんな場所ばかりだがな」


 彼の声は低く、何処か軽薄さを含むようでありながら、実際にはその裏に深い現実感がある。

 

「それにしたって、さっきからずっと嫌な目で見られてますよ!なんでそんなに堂々としていられるんですか?」

「ふっ、簡単な事だ。俺みたいなグールに対して、歓迎の花束なんて期待しちゃいない。だがな、こう見えても俺は案外愛されているんだぜ」


 彼女の苛立ちが含まれた言葉に、大介は一瞬だけ笑いを浮かべると、周囲の視線を意を介さないように歩き続けた。


「ほら、見てみろよ。みんな一定の距離から見てくるだろ? 愛すべき隣人には、敬愛を込めて距離を取るのがマナーだ」


 口角を上げて不敵な笑みを滲ませながら彼は話を続ける。


「……それ、愛されてるって言わないです。たが怖がられてるだけじゃないですか!」


 彼の陽気な言葉を耳にして、アンナは呆れたように溜息をついた。

 だがそれに対して大介は答えず、ただ人形のような笑みを浮かべたまま歩みを進める。


 そうして二人の目の前に見えてきたのは、薄い色合いをした雑貨屋らしき小型の建物だ。

 錆びついた看板には辛うじて『スズキ補給所』と読める文字が刻まれている。


 窓から中の様子を伺う事もできず、その建物の扉は重厚な金属製だ。

 けれど大介は何一つ臆することなく、扉に両手を添えて押し開ける。

 

 すると建物の内部は薄暗く、カウンターの奥には白髪が目立つ小柄な男性の老人が、木製の椅子に優雅に揺られながら腰を落ち着かせた状態で、戦前の雑誌を気怠そうに読みながら一瞥をくれた。


 そして室内の壁際には、巨大な木製の棚が幾つも乱雑に置かれており、そこには雑多な部品や工具が、まるでコレクションを自慢するかのように、綺麗に等間隔で並べられていて微かに油の臭いが漂う。


「よお、道具を幾つか補充したいんだが?」


 軽く手を挙げながら、気さくな声を掛けつつ、大介はカウンターへと向かう。


「あんたみたいなのが来ると、商売の神様が拗ねるんだがね」


 彼を見るなり老人は先程まで読んでいた雑誌を閉じると、徐に丸めて後ろへと投げ捨て顔を露骨に顰めた。


「はっ、そうつぁ悪かったな」


 平然とした様子で返しながら、大介は棚の品物に目を向ける。

 そんな中、アンナは二人のやり取りを心配そうに見つめていた。


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