第3話 美少女との電話
―『電話できる?』
僕は二択を迫られた。許可をするのか、断るのか。僕はそれぞれの状況パターンを考えた。
―許可した場合
おそらく彼女は長電話に持ち込むだろう。そうした場合、妹にバレた時がめんどくさいのだ。しかし早めに切り上げれば対策できる。
―断った場合
なんで、などと質問攻めをされたり何らかの理不尽な理由をつけてジュースを追加で奢らされる可能性もある。財布にとっては非常に痛い。この二つの場合どちらかと言えば許可したほうが良い結果にはなる。
―ちなみにこの思考を回すのに1分を要していた。そのためもう一通。
『既読無視〜〜〜〜〜!?なんで返信くれないの?』
ここは許可することにしよう。
『僕は構わないよ』
返信がくるのには数秒もかからなかった。
『やった〜!ちょっと待ってね〜』
すると数秒後メッセージアプリ内の通話機能から電話がかかってきた。僕はその電話に対して応答ボタンを押した。
『もしも〜し起きてる?』
「起きてなければ桜知さんと電話できてないんだけど?」
『それもそっか!あははっ!』
電話越しに彩乃の甲高い笑い声が聞こえてきた。さすがだと思った。なぜなら夜10時、この時間帯でそのテンションで電話できることに驚きよりも尊敬している。
「ところで、何用?」
まずは用件を聞きたかった。彼女が僕に電話しようと話を持ちかけた理由を。
『なにそれ?電話したいに理由なんて要る?私がしたいからしただけ、それが理由』
その考えを理解するのは非常に簡単だったが逆に聞きたい。ならば何を話せばいいのだ?率直な質問である。理由がないのは分かった。だがせめて会話くらいはしたかった。
「用がないのになにを話すんだ?」
『小鳥遊くんって結構クールだよね』
突然何を言われたかと思うとこの女、いきなりトンデモないボールをぶん投げてきた。だが実際そうである。僕自身、陽キャ・陰キャ関係なく平等に接するタイプであるため一見コミュ力オバケに見えるだろう。しかし本当の性格はどちらかといえば陰キャよりである。彼女からすればクールに見えたのかもしれない。
一言で言うなら空気が読めるといえば良いのだろうか。その人その人によって口調などを変えている。我ながら苦労人である。
「桜知さんから見たらそう見えるかもね。実際わちゃわちゃするよりは安定した静かさがある方が好きかな」
『私も意外と静かな方が好きだよ。意外かな?』
「かなり」
正直意外である。でもよくよく考えるとその可能性がなかったわけではない。『恋愛攻略ゲーム』のせいで陽キャの男子から良く話しかけられ、女子からは囲まれている。そのため、恐らく彼女が休息を取れる時間は少ないのだ。
「桜知さんも大変なんだね」
『そうなのかな?』
本人は苦労を理解しているのか、理解しているのに知らないふりをしているのか、僕には分からない。少なくとも同情というか理解はしている。
「きっとそうだよ。桜知さんは苦労人だよ」
勝手に解釈して彼女のことを理解しているつもりだが味方になってあげないよりはマシだろう。こっちが間違った解釈をしていた場合相手にとっては余計なおせっかいかも知れないが、そんな物は気にしない。
『えへへ/// 小鳥遊くんに言われるとちょっと恥ずかしいな、』
なんだこの可愛い生物は、と僕は思ったがその想いは心の奥底に封印しておく。
「じゃあそろそろ寝ようか」
『えーー!もう?』
「時間的にな」
実際10分も話してないが妹にバレた時がめんどくさいので適当に言い訳を作っておく。もちろん彼女とはもっと話したいけど家庭の事情というものがうるさいのである。
『ちょっと心残りあるけど、仕方ないか』
「意外と聞き分けいいんだな」
『意外とってなによ!相変わらず毒舌っていうかひどいよね』
「悪かったな」
実際意外だったんだもの仕方がないだろう。
「じゃあ、おやすみ」
『おやすみ〜!』
僕は電話を終えた。収穫があったと言えばいいのか、いろいろなことを知ることができた気がする。つまり彼女に一歩近づいたということだ。
明日の朝も早い、今日は早めに寝るか…そう思い僕はベッドの上に横たわって瞼を閉じた。
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