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未来視の月華は選べない  作者: もんちょ
第一章 始まりの時
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第六話 変わり

がんばりました。


 宮廷の一角で、瑶璃は微笑む。


「報告ありがとう」

 

 ボクには聞こえる。


 運命が、わずかに噛み合いを変える音が。


 この世には、数えきれないほどの力が存在する。

 

 心を読む力。

 意志を操る力。

 人を纏める力。



 けれど――それらすべてを、静かに覆す能力があった。

 それは、運命そのものを書き換える力。

 

 未来を視る力。

 過去を見る力。

 過去へと遡る力。


 ……そのすべてを持つ者たちが、今、この宮廷に集っている。

 もしも、それらが一つの場所で交わったなら。

 運命は――どこへ転ぶのか。

 破滅か。それとも――まだ、誰にも選ばれていない結末か。


「……頑張り屋さんだね」



星蘭が立ち去る背を、横目に見送った。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 もう生臭い匂いが薄れてしまった部屋で、僕は扉の方へ身体を向ける。


「困るもんね? 君にとっては」


 そこに居たのは、軍の者であった。貯蔵庫を守るために配置された二人の軍の一人。僕の事をやたらと警戒していた記憶がある。


「いえ……違います」


 一拍、遅れて返ってくる声。


「ただ、管理人の無事を確認したくて――」

「へえ」

 

被せるように、遮った。彼の発言に僕は、確信する。


「なんで逆に、無事じゃないかもって思ったの?」

「それは……噂で」

「誰に?」

 

 視線を落として、唇を噛む姿が見えた。そして、長柄武器を強く握る。


(未来でも視えてたけど、僕を殺そうとするんだよねぇ……)


 思った通り、武器を僕に向けた。先は鋭利なため、触れただけでも切れるだろう。


「僕を殺すの?」

「そうだ。早くその帳簿を――――」


 彼が言い終わる前に、僕は木窓の縁に手をかけて外に逃げる。けれど、目の前は沢山の林が佇んでいるため、逃げ場としては不利であった。


(うーん。大丈夫かな。これ)


 未来では無事とは言えど、それまでの過程全てが視えるわけではない。重要な所だけを視る感じだ。


 逃げ惑っていても、どんどん背後から敵は迫ってくる。


 背後に影ができる。

 パキ、枝が踏まれる音と共に、風を切る音が聞こえた。

 

(あ、あぶなっ)


 武器を振っていた。頭の上に通り過ぎ、僕は転ぶ。受け身を取り、衝撃を弱める。

 土の匂いが鼻を掠め、見上げる頃には――――。

 目の前に刃があった。


 その時。

 高い音が響き渡った。

 紅い髪の毛が視界に広がる。


「大丈夫か?」


 星蘭は短剣をくるりと回し、軍の武器を流す。


「うん、まぁね」


 付いた土の跡を払い、立ち上がる。舞った砂埃は、下に沈んでいった。


「こいつが犯人か?」

「そうだよ。証拠もあるし、未来を視た時もそいつだった」

「じゃあ、とっ捕まえるか」

 

 星蘭は短剣を構え、低く身を沈める。僕は一歩下がり、成り行きを見守った。


「戦っても無駄だと思うけどね」


 男が片眉を上げた瞬間、すでに星蘭はその襟を掴んでいた。短剣は攻撃ではなく、防御のために使われる。


「ぐっ……!」


 男の武器が弾かれ、地面に落ちる。


「拘束完了っと」


 星蘭は慣れた手つきで縄をかける。暴れる相手にも関わらず、その手際は早い。安堵しかけたその時、男が吐き捨てた。


「これだから、未来視を持つ人間は嫌いだ……!」


 まるで他にも知っているかのような口ぶりだ。


「未来で視たっていうのもあるけど、君、証拠残しすぎでバレバレだよ?」


 その言葉を告げると、彼は悪態をつく。


 やがて複数の足音が近づいてきた。他の軍の者たちが、慌ててこちらへ向かってくる。

 おそらく、星蘭が瑶璃に報告したのだろう。

 男はそのまま連行され、二度と姿を現すことはなかった。


 ただ『未来視を嫌う理由』だけは、まだ分からないままだった。





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