第四十八話 危険と隣り合わせ
コンテストって何が良いんだろ。
「次期皇帝様の弱点を、一つ教えてもらいましょうか」
僕はその言葉に息が張り付いて、上手く吐けなかった。星蘭は表情を崩さず、その女性を真っ直ぐと見るのみ。
「……あぁ、いいぞ」
僕は思わず星蘭の肩をずっしりと掴んで、声を張り上げた。
「……っ、負けた時どうするの?」
星蘭の髪が揺れて、盤の上に影が落ちた。彼の髄から染み出る空気感は何かが違う。いつもと何かが違っていた。心の底から焦る僕に対して、星蘭は呑気に喉を鳴らす。
「大丈夫だ、月華」
星蘭はそう言って、盤に目線が流れる。僕の視界にもその盤が映った。
(囲碁……?)
「随分な自信なのね。私は店一番売れているから、頭脳戦は結構得意のよ?」
彼女の扇子から口の端がちらりと見える。僅かにその口が上がっていた。もう片方の手で白石を掴んでいる。続けて、星蘭も黒石をやんわりと握っていた。
「そこの白髪の青年」
ふいにその女性に話しかけられ、僕の肩はびくっと揺れる。扇子を広げる彼女の視線が刺さる。
「審判をお願いするわ。あと一応、ルール説明して。その方が、公正でしょ?」
僕は奥歯を噛みしめる。
(……っ。この人、遠回しに星蘭に余裕で勝てると言っている)
次期皇帝様の弱点を言ってしまえば、僕たちの首が飛ぶ。比喩ではない。物理的に首が飛んでしまう。それを分かってて承認しているのだろうか、星蘭は。
僕は下唇を嚙みながらも、覚悟を乗せて声を放つ。
「黒先、白後で交互に石を打ち、相手の石を囲んで取るのが基本です。」
僕は盤に視線を落とし、星蘭の手元を見ていた。震えておらず、ただ石をくるくると器用に回している。僕はその手元から視線を逸らし、盤に向けて続けて声を吐く。
「点数の数え方は、自分の生きている石の数と囲んだ陣地の数の合計点です」
僕は黒石を持つ星蘭に横流しで見た。目を伏せており、顔を上げていない。ただ、盤を見ていた。僕は静かに言葉を空気に落とす。
「……では、試合開始と致します」
誰か私を見つけて〜




