第二話 未来視
まだまだあるど〜。
「ボクは、次期皇帝。月華と星蘭を雇うためにここに来た」
書類を提示して、にこりと笑っていた。もし、次期皇帝だとしたら今の状況はかなり可笑しい。
だって、護衛が見当たらない。一人で宮廷から抜け出したというのだろうか。
「……本当に?」
思わず口から出る。子供は少し首を傾げた。
「何が?」
「……普通、皇帝ってこんなところに一人で来るものなの?」
「ボクにとっては、これが普通だよ」
目線を下に下げて、そう言った。僕と星蘭は目を合わせる。
「まず、その書類を見せてもらえるか?」
子供は軽く頷き、星蘭に書類を渡す。紙を捲り、目を走らせている。
「うーん……少なくとも、偽物ではないな」
低い声でそう言うため、現実味が増す。子供は小さく笑い、書類を懐に仕舞った。星蘭は一礼する。
「……無礼を働いてすみませんでした」
「いいよ。なんなら、敬語無しの方がボクとしては嬉しい」
その子は肩をすくめた。敬語なしでいいとの事で、僕たちは普段通りに話す。
「その……どうして、僕たちを雇おうとしたの?」
そう尋ねると、子供は少しだけ間を置いた。
「噂で、未来が視える人がいるって聞いたから」
僕のことをじっと見つめる。
「そのまま放っておくのは勿体ないと思ってね」
にこにこしながら、そう言う子供。
なんだが、損得を気にしそうな子だなと思う。
「勿体ないって……。多分、その噂の人物は僕だよ」
一瞬、場の空気が止まった気がした。
子供は驚く様子もなく、ただ軽く頷いた。
「うん。知ってる」
「……知ってるの?」
思わず聞き返す。
「うん」
それだけだった。あまりにも簡単に肯定される。
逆に、こちらの方が戸惑う。
困惑する僕を置いてって話はまだ進む。
その子は、小さな石板を懐から取り出した。しかも、二枚。
「ボクの属官になる前に、これやってもらわないと」
「え、僕たちに拒否権は――――」
「ないに決まってるでしょ?」
「あ、はい」
星蘭は苦笑いをする。皇帝の命令には、逆らえない事は分かっている。せめての足掻きで、まったりスローライフの可能性を考えていたが、駄目だった。
「それにしてもこれ、なんだ?」
星蘭は石板を受け取り、首を傾げる。僕も受け取るが、只の石の板にしか見えない。感触もざらざらしていた。
「これはね。能力の皆無があるか、それとも強いのかを測る物だよ」
能力……? あまり聞きなれない言葉に眉をひそめる。星蘭も理解できていないようだ。
「能力って例えば、未来視を持ってたりとか――――そういう、能力の事だよ」
『もちろん、能力は豊富だよ』と、その子は付け足した。この石の板が……? と半信半疑になりつつも、その子の言う通りに手をかざす。
「わ!」
突然、石の板が割れて白い光が溢れた。けれど、それは一瞬でその後、何も起きない。
「う、うーん」
子供は腕を組み、首を傾げるのみ。一方、星蘭の石板は何も起こらなかった。
「あちゃぁ……」
その子は頭を掻き、困っていた。
「この石板、不良品なんじゃないの?」
「うーん。そんなはずはないんだけどなぁ」
その子は『まぁ、いっか』と言って、気を取り直していた。そして、こう言った。
「まぁ、属官としては合格だから、バシバシと働いてもらうよ」
あまりにも強引な雇い方だが、高い給料が貰えるため、文句は言えない。
あれ、そういえば……いろいろ、ありすぎて忘れていたが………。
「さっき、『国を救う事に興味ない?』って言ってたよね。あれはなに?」
「あれ? あれはそのままの意味だよ」
腰に両手とも当てて、当然の如く言った。
「ボクの見解だとこのまま進めば、この国は死ぬ。だから、君達、二人に阻止を頼みたくてね」
「他の人でも良かっただろ?」
「駄目だよ。未来が視える人がやった方が、阻止できるかもしれないじゃん」
何故、国が滅亡すると断言できるのか。僕ですら、まだ視えていないのに……。
「まぁ、要するに……その未来を止めるために、雇ったんでしょ?」
「そうそう! だから、君達の主な仕事は事件性の高い任務をこなす事になる」
星蘭がため息を吐き、腰に手を当てる。
「......要するに危険な仕事だよな?」
「そうなるね」
ズバリと言われて、僕らは返す言葉もなくなる。
「危険だけど、給料は……お高いよ?」
指で丸を描くその子供に、僕たちは目を合わせた。
つまり、僕たちはちょろかったのである。
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