第二十四話 部屋には一人
やばい、pt全く入らないですねぇ.....。まぁ、初作品はこんなもんだよね。
「いやぁ~、ありがとう! おかげで、瑶璃様に怒られずに済んだよ~」
気楽な声で彗蓮は寛いでいた。ひんやりとした書庫とは違い、日差しを浴びた風が肌を包み込む。
「そういえば、月華はもう行かなきゃじゃない? もうそろそろ、儀式が始まると思うけど……」
彗蓮は日の位置を確認しながら、そう言う。けれど、僕は首を振った。
「まだだよ。皇帝の不在でちょっと遅れるって。瑶璃がそう言ってた」
僕がそう言うと、星蘭は眠たげに口を開く。
「まぁ、遅れるって言っても二時間程度じゃないか?」
僕は短く息を吐く。星蘭はつまらなそうにあくびをしていた。今日の朝はいつもより早かったからなのか眠そうにしている。
書庫のせいで冷えた身体を、陽光が暖めてくれていた。けれど、日差しが強く、心地よさはすでに薄れつつある。
一時間前くらいに広場へ向かうつもりだったが、早めに行って損はないだろう。そう結論を出すと同時に、僕たちの影がゆっくりと動き出した。
「そっちに運べ~!」
「飾り付けはこっちよ!」
下働きの人が多く、最終調整の真っ最中らしい。ゆっくり歩く僕達の目尻を、役人たちは慌ただしく行き交っていた。
ふと顔を上げると、中央に鎮座する巨大な塔が視界に移る。
「あれって、乞巧楼?」
僕の質問をきっかけに、彗蓮は堰を切ったように細かく解説し始めた。
「そう! 乞巧楼! 本来は後宮の私的な祭りなんだけど、今年は天の子が居るから設置されるらしくてね。御披露目と神託の儀式が兼ねているから―――――」
喋り出したら止まらない彼を、僕は据わった目でじっと見つめる。星蘭はもう慣れっこのようで、つまらなさそうに地面に視線が移っていた。
僕は諦めの混じった溜息をもらす。その時、僕の背後から少しだけ影が落ち、風が涼しく感じた。
「すみません~。貴方が噂の天の子でしょうか」
太い声が聞こえ、僕は身体をひねる。視界に広がったのは、青色の漢服であった。その男性は腰を低くしながら申し訳なさそうに言葉を濁していた。
「はい、僕が天の子ですが……もう準備を始めた方がいいですか?」
僕の言葉の重みを測るように、その男性は深く頷いた。僕は『わかりました。すぐに準備致します』と言葉を返してから、星蘭に目配せする。
そのまま僕は星蘭と彗蓮に背を向けて、別行動に移った。
広場では、五色の飾り紐や日よけや風よけのための美しい幕が幾つにも張り巡らされていた。
(陰陽五行説……なのかな?)
寺院で過ごしていたというのもあって、その辺りの知識は知り尽くしている。青、赤、黄、白、黒の長い飾り紐が風によって、波打つように一斉にひらひらと泳ぐ。
いたるところに宮灯が視界に広がっており、ざっと数えて、数千――――数万。
「ここが控室です」
男性はそう言って一礼し、後ずさる。
交互に差してくる光を突き進むと、紅い扉が飛び込んできた。その紅い扉にそっと触れて、力を加える。ざらっとした扉を押すと、中から甲高い声が耳に入った。
(使用人……?)
けれど、会話の内容的に少し変な感じがした。
「今、わたしの悪口言った? ひどい! 傷ついた! 傷ついた!」
「い、言っておりません……!」
薄暗い室内の中心、怯える使用人をまるでおもちゃのように弄んでいた。雪色の漢服をきた白髪の女性が一人。鮮やかな赤色の瞳が僕を捕らえる。彼女は『あ』と言葉を漏らし、くすくす、と笑いだす。
「もう、いいや。飽きたから下がって!」
子供のように無邪気で不気味さがあった。瑶璃とはまた違う感じの不気味さに、僕は目尻を下げる。
どんどん近づいてくる彼女に、僕は冷ややかな目線を向けた。お香のほんのり甘い香りが擽りながらも、僕はそっと口を開いて、一礼した。
「すみません。まさか、先客がいらっしゃったとは思いもよらず……。すぐに退出致します」
僕は頭を上げて振り返り、そのまま出口に向かおうとしていた時、女性に引き止められる。
(……振り払いたい)
退出を阻むように、僕の手首は彼女の細い指に固く握られていた。
「待ってよ。わたし知ってる、知ってるよ!」
「一体、何を?」
僕の問いに彼女は喉の奥でくす、と笑う。口を隠すその袖には、白すぎる肌を更に際立たせていた。
「わたし、知ってるもん! あんたが、偽物の天の子だって!」
眩暈するほどに、差し込む光が更に強くなっている気がした。
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