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未来視の月華は選べない  作者: もんちょ
第二章 七夕の願い編
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第十九話 初代

次で二十話か〜えへへ。


 僕たちは自分の部屋に戻り、身体を癒す。冷たく心地良い空間に思わず頬が上がった。


「はぁ……外、あつすぎ」

「俺も限界……」


 昼間は特に暑い。まだ初夏だから、これからもっと暑くなるかと思うと……。

 僕は大きくため息を吐く。


「そういえば、七夕って明日?」


 星蘭は『あぁ』と小さく返事をし、頷く。七夕って何をするのだろうと疑問に思った時、扉の向こうから声が聞こえた。


「夕飯、持ってきましたよ〜!」


 元気な声が聞こえて、すぐに梨花だと分かった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「七夕、ですか?」


 僕たちは属官になってから、まだ一か月も経っていない。だから、行事についてはまだ疎い。


「一応、次期皇帝から話は聞いているけど……梨花から見て、どんな雰囲気とか聞きたくてね」

「うーん。いつもより忙しくて、緊張した記憶があります……」

 

 彼女は、斜め上を見上げた。そんな彼女に構わず、箸を進めて食べる。栄養バランスの良い食事をそっと口に運んだ時だった。

 手の平にポン、ともう片方の手を乗せる彼女はこう言った。


「そういえば宴の時に、天の子の儀式があるはずです!」


 僕は思わず、箸を落としそうになった。星蘭は落ちた時のためなのか、手をかざす。

 僕は食べ物をごくりと呑み込み、彼女を見上げた。


「……ちょ、ちょっと待って。天の子の儀式って何……?」


 『あれ、皇太子から聞きませんでしたか?』と彼女は言葉を漏らす。僕は勢いよく頷く。

 僕たちの影に隠れ、膳が暗さを増した。暖かな膳はもうとっくに冷えており、皿の底が寂しく見える。


「天の子が降臨する際、古より伝わる『神託の試練』が行われるんですよ」


 僕は視線が自然と足元へと移る。喉に通ったはずの食べ物が引っ掛かっている気がした。


「未来視を使えば、いけるんじゃないか?」

「はぁ…? 未来視は万能じゃないって、この前も言ったはずだけど」


 僕は星蘭に言い返す。けれど、訂正する気はなかった。只、笑うだけ。


「大丈夫さ! 月華ならいける!」

「……」


『何を根拠に』と言いそうになり、僕は留まる。


(うーん。星蘭が大丈夫って言うなら……)


 何度も過去に戻っている星蘭なら、この先の未来は僕よりも詳しいはず。しかも、結果だけでなく、そこまでの道筋まで完璧に。


「……わかったよ」


 溜息を吐き、再び箸を持ち食べ始める。僕の言葉を聞いた梨花は、嬉しそうにしていた。


「天の子が居るって広まった時、みんな大喜びでしたよ!」


 僕は淡泊に『ふーん』と相槌を打つ。匙に持ち替えて、ぬるい汁を掬う時、自分の水色の瞳が映った。


「……にしても、あれだな。こんなに民が騒ぐと思わなかった」


 星蘭はそう言う。もう何処までが本音か嘘なのかもう見分けが付かない。

 世間話の如く会話する梨花は、星蘭に言葉を返す。


「当たり前じゃないですか。だって、初代皇帝以来なんですよ!」

「初代皇帝?」


 僕は思わず聞き返す。


「はい! 初代皇帝は、未来視を持っていたと言われています」


 『月華様と一緒ですね!』と言い、笑顔を浮かべる。

 初代皇帝は確か、この国を作った人。彼女が言うには、未来視を持つ人は皇帝になり得る資格があるという。


「でも、どうして皇帝になり得るの? 未来視だけじゃ、無理なんじゃ……?」

「いいえ! そんな事ないんですよ。むしろ、初代皇帝の遺書で記されたぐらいですし!」


 何を記されていたのか聞く。すると、どうやら『未来視を持つ者は皇帝たる資格有』と書かれていたらしい。


(うわぁー……)


 いい迷惑だ。退職したら、ゆったりとした所で暮らしたいので、丁重にお断りしたい。


(……初代皇帝と同じ天の子だから、民は騒いでいたわけね)


 洞窟の時もそうだった。敵軍は『天の子』と言いながら、怯えていた。味方だったら、どれほど嬉しいだろう。

 もし、敵に『天の子』が居たら、戦っても無駄だと僕も感じる。


(……にしても、天の子って少なすぎない?)


 不思議に思いながらも、僕は箸をそっと置いた。



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