表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
未来視の月華は選べない  作者: もんちょ
第二章 七夕の願い編
PR
20/39

第十八話 この国の軸として

とりあえず、頑張るという精神



「僕、三日も寝てたって聞いたけど……それ、ほんと?」


 瑶璃の表情は一切変わらない。そして、淡々と言葉を綴る。


「……本当だよ。未来視の使い過ぎで、回復するのに時間が掛かったんじゃないかな?」


 自分の黒髪に手を通しながら、何でもないようにそう言う。そんな瑶璃に、僕は少し苛立ちを覚えた。


(殴ってやろうかな)


 『三日間、目を覚まさなかった』という状況に、慣れているような雰囲気であった。

 瑶璃は謎が多い。星蘭がループしている事を知っていたし、彼の能力も知らない。

 星蘭と瑶璃は秘密を言える仲なのだろうか。

 それに対して、僕と星蘭の間は壁だらけ。


「はぁ……」

「だ、大丈夫か?」


 僕は笑顔を取り繕い、大丈夫だと言い張った。そして、瑶璃に向き直り、口をそっと開く。


「……天の子じゃないって説明しなかったの?」

「誰に?」

「民だよ。皆、勘違いしてる」


 瑶璃はクツクツと笑い、流れるように星蘭を見た。僕もつられて星蘭を見ると、気まずそうに下を俯くばかり。

 瑶璃は言葉を続ける。


「……天の子として、このまま突き通そうと思ってね」

「バレたらどうするの?」

「バレる事はないよ。だって、君……そもそも、天の子だし」


 時が止まったかのように、僕は固まる。星蘭も顔を上げて、驚いていた。いや、厳密に言うと『驚くフリ』をしていた。


(……僕が天の子って、正気?)


 困惑する僕を差し置いて、瑶璃は言葉を続ける。


「天の子って、未来視を持つ人達の事を指すんだよ」


 『民は、その事実を知らないけどね』と言葉を溢す。僕は頭が痛くなった。


 思い悩む僕に構わず、瑶璃はこの三日間の事について言葉を続ける。

 米を盗んだ敵は今、御史府の監視の元で働いているらしい。


「なんか、『天の子の為ならしっかり働いてみせます』とか言ってる始末だったよ。いや~見物だった」


 満面の笑みでキャキャ、と口を手で覆っている。『天の子って案外、便利だよ』と嬉しそうに言葉にしていた。

 太陽が窓から徐々に差し、瑶璃の黒髪が茶色に染まる。彼の金色の瞳が際立って目立った。


「――――って事で、天の子として働いてもらおうかな」


 瑶璃は静かにお茶を啜っていた。僕は横目で星蘭に助けを求めるが、彼はそっぽ向く。

 二人のその仕草に、イラっとする自分が居た。けれど、天の子として、僕を仕立てあげるのも何か意味があるはず。星蘭が反論しなかったことが、なおさらそれを裏付けていた。

 

 少し開いている窓の隙間から、夏風が流れてくる。まるで、僕の背中を押しているような感覚。

 小さく息を吐き、腕を前に組み、暖かな風が雪を連想する僕の髪を揺らす。


「……天の子として承りました」


 喉を鳴らす小さな音が耳に届く。一礼して、見上げた時、瑶璃は目を細めていた。星蘭の袖が僅かに揺れた。



面白いと思ったら、反応お願いします!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ