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おねえさんはエコバックを肩に原付で異世界を爆走中  作者: 浦 かすみ


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第九話 初めての魔法



 リライさんは食パンをしげしげと眺めてから、フォークで刺して一口食べた。そして無言で頷きながら、食パンを噛み締めておられるようです。


「不思議な食感のパンだな〜パンって固くて飲み込めないパンしか食べたことないけど、これはまた……うん、子供でもそのまま食べれそうだな。柔らかくて甘くて、すごく美味しいな」


 リライさんが、異世界メシの食レポしてくれてるけど……ごめん!そんな高級食パンじゃないんだ、特売の安売り五枚切りパンなんだ!


 どうせだったら、地元で有名なパン屋の本バター入りのお洒落ディニッシュとか買ってたら良かった。


 ……異世界人に見栄張ってどうするだい!

 

 一人ツッコミをしている間に、リライさんは食パン五枚切りを完食してしまった。


 パン無くなったな……そうだ!


 空になった食パンの外装袋と留め具を、そっと保冷エコバッグ様に入れてみた。


 どうか、食パン五枚切りも復活しますように!


 「あ〜自己紹介まだだったな、リライだ。冒険者をしているランクはBだ。本当に助かった、ありがとう」


 リライさんの自己紹介から、新たなワードが飛び出してきた。


 冒険者ランク、そんなのあるの?Bが上なのか下の方なのか、さっぱり分からない。


 後で原付バイク様に聞いてみよう。


「あの……魚はこれなんですが、食べられそうです?」


 先ほどの食パン事件?を踏まえて、いきなり異世界食を渡すのは驚かせてしまうと思い、リライさんにパックから取り出したアジの開きを差し出した。


「おお、魚だ!これは……干し魚かな?焼いてもいいか?」


 良かった、アジの開きに異世界製品の違和感は感じなかったみたいだ。


 リライさんは改めて座り直すと、私に向かって深々と頭を下げた。


「腹が空き過ぎて気が急いていた。もしかして、君の食材を食べ尽くしてしまったのか?今、持ち合わせがない状態なんだが、必ずお礼はさせてもらう!あ、ギルドカードを見せよう」


 そう言ってリライさんはウエストポーチから、カードっぽいものを取り出して、私に差し出してきた。


 カードには……


『リライ 冒険者ギルド ランクB』


 象形文字みたいな異世界語?が書いてあるのだけど、読めましたー!私ってば読めてまーす!


 もう、驚かないぞ。


「で、君の名前は?」


「ナカ……え〜と、ハズキです」


「生まれはこの近くなのか?」 


 リライさんに出身を聞かれて、冷や汗が一気に出てきた。


 私の出身設定とか全然考えてないよ!?異世界小説あるあるで、よくあるじゃないか。親が死んで孤児設定?いやいや、アラサー女が孤児設定はさすがに無理がある。更によくある、記憶喪失ここは何処設定……これも麦茶や食パン渡してるし、意識しっかりあるのがバレててこの段階で使えない。


 「あ……えっと、ずっと田舎で暮らしてて、都会に……働きに出ようかと思って!!」


 これだっ!この言い訳しかない!これなら田舎っぺ丸出しで、何もかも知らない分からない、で通せるはずだ。


 「そうなのか……どこも田舎は大変だよな。俺もそう思って田舎から出てきたんだけどね。あ、火を起こそうか」


 火を起こす?え、もしかして火打ち石とか?


 リライさんはウエストポーチの中から、薪を数本とフライパンを取り出した。


 わ〜薪まで持ってるんだ、凄いね。


 私が取り出したものを見つめていると、リライさんは薪を組み立てながら説明してくれた。


「俺、ダンジョンを潜る時のチームの荷物持ちの仕事しててな。ダンジョン内で野営する時の最低限必要なものは持ち歩いてるんだ……それに、ダンジョンから帰ったばっかりだしな」


 ダンジョン帰りの冒険者きたーー!!その割には倒れてたけど……後で聞いてみたら教えてくれるかな。


 リライさんは薪を組み立て終ると、薪に掌を向けた。


『炎』


 リライさんが短く呟くと、手から火の玉が飛び出て薪に火が点いた。これが、火魔法なんだね。


 ファイヤーボールや変なポージングをかまして、呪文唱えてた自分が恥ずかし過ぎるわ、全然ポージングいらないよ。


「この鍋で魚、焼けるかな?」


 リライさんの指示通りに、アジの開きをフライパンに置いた。お醤油もあるし、食べる時の味付けは大丈夫だろう。


 あ〜大根あるけどおろし金ないよ。大根おろしでアジの開き食べた〜い。


「魚なんて久しぶりだな。魚の日干し持ってるってことは、ハヅキはキーネラ王国の出身なのか?」


「!?」


 し、知らない国名きちゃったぞ?でも、前後の文脈から察するに魚介が捕れる地域のことだと思う!


「ま、まあ大体その辺りかな?」


 曖昧に濁したけど、リライさんは特にそれ以上ツッコむことはなかった。


 アジの開きが香ばしい匂いを発してきたので、醤油を回しかけた。


「それ、香辛料?」


「醤油といいます」


「へ〜ショーユね。それもキーネラ独特のものなのかな?」


「も、もしかするとうちの田舎だけで使ってるものかも?ですね」


 醤油の発祥にも曖昧に濁しておいた。


「あ〜そうか!だったらもしかしたらこれの使い道分かるか?ダンジョンで手に入れたんだけど、何だか分からなくて困ってたんだ。他国の人なら知ってるかな?」


 そう言ってリライさんがウエストポーチから取り出してきたのは、おろし金だ!正真正銘おろし金だった!!


「おろし金ぇぇぇ!!」


「あ、分かる?良かった。多分武器じゃないし、何の道具か誰に聞いても、分からないって言うし困ってたんだ」 


 何処かにいるかもしれない、神様っ神様っ!!ありがとうございますぅ!


 おろし金をリライさんから受け取り、天高く掲げ持って神様にお礼を心の中から叫んだ。

 


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