第八話 第一異世界人と接触
洞窟の暗闇の中、別の明かりが見えた。
タッチパネルモニターの明かりがついてる!?
慌てて覗き込むと、モニターに文字が……
『南西14メートル先に、未確認物体あり、スキャン中……種族、人間』
人間!?ここへ来て初めての人間だ。
原付バイクに乗ったまま、ゆっくりライトを南西に向けると、近くの木の根元で何かが光っている。
月灯りに反射して……人が倒れてる!?
「ど、どうしたら……」
原付バイク様が私の嘆きに反応してくれた。タッチパネルが起動した。
『鑑定スキルで生物の身体状態を確認可能』
「鑑定!?そうだ!」
迂闊に近づく前に、鑑定で遠くから容体確認してからにしよう。
そろりそろり、原付バイク様で近くまで行ってみた。
この人……まさか、亡くなってないよね?
「鑑定!」
『名前∶リライ=ルハーダ 24才(♂)LV025 体力0500
筋力0343 魔力0202 判断力0129 瞬発力0549
スキル∶火属性魔法LV3 身体強化LV3(隠蔽) 剣技LV3
ユニークスキル∶経験値譲渡(隠蔽) 幸運(隠蔽)
特殊スキル∶探索 アイテムボックスLV2
状態異常∶脱水症状あり、空腹状態あり、貧血状態あり』
す……すんごい濃い内容のステータスを持ってる人だ。
それはともかく、リライ=ルハーダさんは脱水症状おこしてんじゃん!
バイクを降りると、忍び足で木の根元に近づいた。
「大丈夫ですか?」
「……」
気絶してるのかも?
近づいて肩を軽く叩いてみた。
「大丈夫ですか?」
リライ=ルハーダさんは、薄っすらと目を開けてこちらを見た。
「み、水……」
水!?じゃないけど、ミネラルたっぷりの麦茶なら持ってる!
保冷エコバッグの中に手を入れて、水筒を出した。
やはり、魔法瓶は重たくなっている。麦茶が補充されているようだ。
本当に麦茶かどうか、一口飲んでみた。
大丈夫、麦茶の味だ。
「冷たいお茶です、飲めますか?」
リライ=ルハーダさんが体を起こそうとしたので、木にもたれられるように手を貸した。
水筒を渡そうとしたら、リライ=ルハーダさんの手が震えていた。
脱水症状がひどいんだ。
震える手に私の手を添えて、水筒を口元に近づけた。
水筒を傾けると、リライ=ルハーダさんはものすごい勢いで麦茶を飲みだした。
良かった!意識はしっかりしているみたいだ。
やがて、麦茶を飲みきったリライ=ルハーダさんは荒く息を吐きながら私を見た。
「た…助かった、ありがとう」
「いえいえ、ど……?」
ん?今、日本語が聞こえましたが?あれ?そういえば私もつい、日本語で話しかけてしまったけど、言葉通じてるような?
「それと、すまない。何か食べ物を分けてもらえないか?」
はい、リライさんは完全に日本語喋ってますよ!
……了解ですよ。異世界小説あるあるの、異世界語の自動翻訳ですね?もう驚きませんよ。
リライさんから空の水筒を返してもらい、エコバッグの中に戻す時にバッグの中を見た。
確か、リライさんは貧血状態ってなってたよね?
だったら、持ってる食材では、コレだー!
私はエコバッグの中からアジの開きを取り出した。
確かアジにはヘム鉄が含まれてたはず、貧血には鉄分を補給だよね。
「そのまま食べられるのは、パンがあります。後は魚かな……」
リライさんは、少し笑顔になった。
「パンか、助かる。魚は焼いて食べても構わないか?」
パンも魚も、この世界には存在しているみたいだね。
私は立ち上がると、原付バイクのリアボックスの中のエコバッグから、食パン五枚切りを取り出した。
それをそのままリライさんに渡そうとしたら、怪訝な顔をされてしまった。
「それ……何?」
「パンだけど?」
「その袋も見たことないけど、それってパンなの?」
「袋……はっ?!パンの外装ね!うわっプラ製品じゃん!」
さすがに、この世界にプラスチック製品はないよね。いきなりの大失態だよ。
リライさんはまだ怪訝そうな表情をしていたけど、ご自分のウエストポーチの中に手を突っ込んで、何かを取り出してきた。
「あっ!木のお皿とフォーク!」
ああっ!これって異世界小説界隈で超有名な、見た目より沢山入る魔法のアイテムバッグじゃないかな?
鑑定してみたい!
でも、さすがに今はリライさんの体調も良くないので、また後で鑑定してみよう。
リライさんがお皿を差し出したので、パン袋をパリッと割いて、食パン一斤を皿に出した。
「あの……食べ物を、とお願いしておいて聞くのはあれだけど、これって本当にパンなの?」
「食パンですよ?」
「食パンって?」
「え?」
「え?」
リライさんと無言で見つめ合ってしまった。
この世界に食パンはないのか!!
新たな発見だった。




