第七話 初のソロキャンは異世界で
「寝る所もだけど、もう我慢出来ない!!」
どうにも耐えられなかった。
急いでバイクを停めて、草むらに駆け込んだ。
乙女……じゃないけど、恥じらいつつ用を足した。
異世界小説あるあるじゃ、生理現象って無かったことになってるし、私にも適応されると思い込んでいた。
個室トイレが恋しい……
そういえば、洋式自動水洗のトイレつけたった!的な小説が最近は増えてたような気がする。
生理現象も生々しく描写するのが、異世界小説のスタンダードなのか?
その中でも私って便座も無い、囲いも無い、野外なんて、ヒロインなのに!?
……ヒロインちゃうやん。
「私ってば、主人公様達()のオマケだしなぁ〜待遇が悪いのは当たり前。それにしても寝る所どうしよう」
便意をもよおしている間に、辺りは真っ暗闇になってしまった。原付バイクのライトがないと、用も足せないぐらいの暗闇だ。
「はぁ〜困ったな。人生初のソロキャンが異世界なんて」
当たり前だけど、寝袋もテントも飯盒も簡易ランプも無いよぉ。
広い空間で寝るのは怖すぎるので、大木や大岩の陰で休もうとバイクのライトで辺りを照らしてみた。
あ、崖に割れ目があるかも?
ゆっくりと崖に近づいて、バイクのライトを照らしてみた。洞窟になってる!やった!
洞窟は入口は屈んで入れば、中は少し空間がありそう?洞窟も怖いけど、周りに壁の無い所で寝るのはもっと怖い。
バイクのライトの光源が届かない奥は怖いけど、バイクごと洞窟に入ってみた。
うん、原付バイクは警告音を出さないので、近くには動物はいないみたいだ。
とりあえず一安心だ。
バイクを目の前に停車させて、壁際に保冷エコバッグを抱えたまま座った。
あ、ヘルメット着けたままだったな。外すと、頭に風が入って気持ちいい。
……ん?バイクのライト付けっぱなしってバッテリー上がるんじゃ?バッテリーも魔素?とかで動いてるのか?
「あ〜魔素ってなんだ?」
洞窟の中で私の声が響いている。
原付バイク様のタッチパネルモニターが立ち上がり、淡く光っている。
私は立ち上がって、モニターを覗き込んでみた。
『魔素とは、この世界のコアを支えるエネルギーの一種。魔素が溜まると、魔素溜まりと呼ばれる場所が出来、そこから魔物が生まれる。魔物は魔素の塊。魔獣は魔素を吸収した元獣の総称。人間も魔素を使い、魔法を行使出来る』
「ほぇ……」
ガソリンや電気とかが無い代わりに、魔素があるのかな?ガソリン代わりの魔素で、魔法も使えるのか。
ん?私ってば魔法使えるのかな?いや?あったよ、あった!
「そうだ私の!ステータス、鑑定!」
『名前∶仲谷 葉月 26才 LV001 体力0010
筋力0005 魔力0010 判断力0020 瞬発力0005
スキル∶鑑定LV1 採取LV1
ユニークスキル∶原付バイクLV1
特殊スキル∶エコバッグLV1』
「ほらっ!あるよ、ねえ?」
謎にどこかに向かって、同意を求めてしまってる。
よ〜し異世界小説あるあるの定番、攻撃魔法とやらを叫んでみましょうかね!
「ファイヤーボール!!!……ル……ル」
……
……
洞窟の中に呪文がこだましていますが、炎は一切出ていません。
炎を出すような、カッコつけたポージングをしたまま数十秒経ちました。
「恥ずかしいぃ!!」
めっちゃ恥ずかしい!!誰もいなくて良かった!
「ファイヤーボールじゃないのか。え〜と、炎よ!我が意思に従え!!」
……
……
「恥ずかしいぃ!!」
めっちゃ恥ずかしい!!本当に誰もいなくて良かった!
『……』
気のせいかな?原付バイク様のタッチパネルモニターの光が強まった気がする。
チョロっとモニターを見ると文字が……
『属性魔法は適性が必要。詠唱は適性があれば自然に理解する。魔力消費量は5〜7必要』
「いやいや!?適性って!私、魔法一回使えるかな?ぐらいのレベルじゃないか!」
自分で自分の弱すぎレベルに、ガックリときてしまう。
まあ、でも変なポージングはしてしまったが、炎や火の適性が無いことは分かった。
「レベルってどうすれば上がるんだろう?」
原付バイク様から返事があった。
『複数選択肢あり∶戦闘で経験値を得る。ユニークスキル、レベル吸収で対象者から吸収する。特殊スキル、経験値譲渡でも習得可能』
う〜ん、よく分からないスキルで経験値を貰う以外は、戦ってレベル上げするしかないのか。
『尚、ユニークスキル原付バイクは操縦者のレベルと連動している』
「操縦者!?えっ私?嘘ぉ、レベルが連動してるなら、私が弱いと原付バイク様も弱いの?」
……いや、でもレベル1で原付バイク様はぶつかっても平気へっちゃらシールドとか、魔素ガソリンを自家発電してないかい?
やはりここは原付バイク様とエコバッグ様に、全力で寄りかかって行こう!
……やっぱりバッテリー上がったら怖いから、原付バイク様のライト消しておこうかな。
私は立ち上がった、その時……




