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おねえさんはエコバックを肩に原付で異世界を爆走中  作者: 浦 かすみ


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第二話 原付バイクとふたりボッチ

宜しくお願いします。

 



「ひぃ……ふぁ……や、やっと……停まった」


 森を爆走して、川辺に出た所で原付が急停車した。


 原付のタッチパネルモニターから警告音は聞こえなくなったので、多分逃げ切れたんだと思う。


 狼っぽい未確認物体……でもあれって野犬だよね?だって日本は大昔に、狼は絶滅したはずよね?


 日本……だよね、ここ?


 エンジンが完全停止している原付バイクを見た。


 さっきまで私の原付に、こんな変なモニターはついてなかった。原付が勝手に動くなんて有り得ない。さっき、転んだのに車体はどこも壊れてない。


 私も怪我すらしていない……


 ぐぅぅぅ〜〜〜


 自分のお腹が空腹を訴えている。そういえば晩御飯、まだだった。


 晩……今、ここって日が高い。夜なのにおかしいじゃないか?


 辺りを見渡した。


 あの森の中で、速度は六十キロ以上は出ていたはず、結構長い時間走ってたよね。森の広さが何十キロもある場所。そんな自然環境近くにはない、絶対ない。


「お腹が空いてるから、夢じゃない」


 消去法で可能性を一つ一つ潰していって、最後に残った荒唐無稽な可能性に辿り着いた。


「……まさかの異世界?」


 まさかまさかの……こんなこと自分に起こるなんて。


 原付バイクのモニターに映る、強張った自分の顔を見詰めた。


 知らない世界……怖いっちゃ怖い。


 でも不思議なもので、自分の原付バイクと一緒に異世界に来ている……たったこれだけで若干安心している自分がいる。


 ただのバイクだし機械だけど、一人じゃないってなんか心強い。


 でも異世界ならなおさらだ。土地勘がない今、無闇に動き回るのは危険だ。


「まずは……ここ、どこなんだろ」


 思わず呟いたら、原付のタッチパネルモニターの電源が入った。


 さっき見た地図と似たような、世界地図っぽい縮尺が画面に出ている。地図の真ん中で辺り、黄色のマークが点滅している。


 これが現在地かな?


『グラナダラス王国、バスタス領、真奥の森、ヒーマラ河川沿い』

 

 世界地図の下に国名や地名っぽい説明が出ている。


 それにしてもだ……私の原付バイクが音声検索機能付き、に進化してるだと?


 改めて、画面の世界地図を見てみた。


 やっぱり大陸そのものが見たことないものだった。


 ……まあ異世界だもんな。なんでもありだな。


「さぁて、どうすっかな〜」


 思わず空を仰ぎ見た時に、背中に何か当たった感触があった。


 振り向いて後ろを見たら、原付の荷台が目に入った。


 荷台のリアボックス……そうだ!


 慌てて原付バイクの、リアボックスの周りの紐を解いた。括り付けていたエコバッグが無傷なのに、まず驚いた。


 荷物がいっぱいでリアボックスが閉まらなかったんだった、転んだ衝撃で中身が飛び出しちゃったかも?


 リアボックスを開けてみた。


 通勤鞄はある、携帯雨傘は無い。もう一つのエコバッグも、中は無事っぽい。


 通勤鞄の中を見てみた。


「あ〜スマホないや、ハンドタオルはある。化粧ポーチはある。携帯除菌シートはある。パスケースも無い、長財布も無い……家の鍵と小銭入れはある」


 リアボックスの隙間から、厚みの無いものは全部飛び出ちゃったんだな。


 リアボックスの中に入れていた、エコバッグの中を覗いた。


「わさびのチューブ、大根一本、玉ねぎ三玉……お米五キロ、ボトルタイプの減塩醤油一瓶、山食パン五斤……買ったの全部無事だ……良かった」


お米買ってて良かったぁぁぁ!食パン買ってて良かったぁぁ!


「とりあえず食べ物があるって有難い」


 最後に、リアボックスの外側に括り付けていたエコバッグの中を覗いた。開けるとヒンヤリした冷気を感じる。


 入れてた保冷剤、まだ効いてる良かった!


「私のアジちゃん、サバちゃん、イワシちゃん!よくぞ無事で!ん?ハマチの刺身ちゃんも無事なのね〜良かったぁぁ」


 主食と魚と野菜があれば、暫くは飢える心配はない。


「とりあえず、鮮魚のハマチの刺身を食べとこうかな」


 このまま放置してたら、明日になってハマチが腐ってたら、一生後悔する!


 もう、ハマチ食べられないかもしれないもんね。


「!」


 自分で考えておいてその可能性があることに、今更気が付いた。


 原付バイクから降りて、側の川の水で手を洗った。 


 これが人生で最後のハマチの刺身、かもしれない。


 ハマチの刺身、六切れが乗ったトレイの外装を丁寧に外していった。ゆっくりと透明な蓋を開けて、綺麗に切られたハマチの刺身をじっくりと観察した。


 こんなにじっくりとハマチの刺身を見るの初めてかも。


 醤油のボトルを開けて、慎重に刺身にかけていった。


 この醤油も使い切ったら無くなってしまう。でも食べるの勿体ないなんて言っていられない。食べて無くなってしまうのは悲しいけれど、生きる為だ!


「ハマチさんよ、命を美味しくいただきます。この身の糧にさせていただきます」


 手でハマチの刺身を摘んで、口に入れた。


「おぃひぃぃぃ」


 ……あ、わさびつけるの忘れてた!




活動報告のコメントでおかえりのお声がけ、本当にありがとうございます。こちらでお返事失礼させていただきます。


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