第7話 晩餐の席で2
彼が行ってしまってから、私も手短に食事を済ませると、メイドに付き添われて自室へ戻った。
すると部屋に入るなり、そのメイドが私に小声で話しかけてきた。
「……お嬢様は、一体何者ですの?
旦那様に触れられても……なんともないのですか?」
「……え、どういうこと?
あなたの方こそ、さっきは一体何があったの?」
顔を上げると、それは先ほどユリウス様に触れて食器を落としてしまったメイドだった。
思わず私が逆に問い返して詰め寄る。
するとメイドはあからさまに目を泳がせて一歩引き下がった。
「い、いえ……失礼いたしました。旦那様のことに関して、私から言えることは何もございません。
ただ……お嬢様が無事でいらっしゃるのであれば、それでよいのです」
そう言うと、メイドは深く頭を下げて、そのまま部屋を下がってしまった。
***
翌朝。
私は昨日の一件が気になって仕方がなく、執事のアルバートにも同じことを尋ねてみた。
執事もまたメイドと同じように、ユリウス様の呪いについては多くを語らなかったが、彼は以下のようなことを言った。
「旦那様は……かつて有能な魔法使いでした
通常、人はひとつの魔力を授かるだけでも稀なこと。ですが旦那様は、生まれながらにして複数の能力を操ることができる、類稀なる逸材だったのです」
私は思わず息をのんだ。
確かに、この世界は魔法の力を持つ者が現れるだけでも相当稀なことだ。
幸運にも、私のように魔力を授かれたものがいたとしても、その能力は通常一人につきひとつだけ。複数の力を持つ者など、これまで聞いたこともない。
すると、執事は更に続けた。
「旦那様は、若くしてその才能を開花させ、その卓越した力をもって瞬く間に領地を発展させてこられました。
しかし、大義を成し遂げる時、人は危険ともまた隣り合わせなのです。あの方の誠実さと前向きさが、あのような結果を招くなんて……」
「一体、彼に何が……?」
私が不安そうに畳みかけると、しかし、執事はそこで口を閉ざしてしまった。
「旦那様の置かれている状況について、私共は他言せぬようきつく申し使っております。
ですから、たとえ婚約者のあなたにであろうと、旦那様のことを申し上げることはできません」
執事は小さくため息をついた後に、こう付け加えた。
「しかしながら、あなたもまた旦那様と同じく、他にない特別な才をお持ちのようにお見受けいたします。
……もし真実をお知りになりたいのであれば、フェンネル様ご自身で旦那様にお尋ねになるのがよろしいでしょう」
そう言い残し、執事は恭しく一礼して部屋をあとにしてしまった。




