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2年1組、Go to アナザワルド 〜イチクミ、異世界へ〜  作者: くまの香


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92/124

92話 問題

 1月。


 帰還のための魔力石集めが完了したので、みんなにゆとりがうまれた。

 前より楽しそうだし、前よりずっと仲良しなっているグループが多い。

 ここに来た当初よりみんなの顔が明るい。


 聖壁グループはまだ忙しそうだけど、どっちみち帰還までに壁が完成しない事はわかっているので焦ったりはしていないみたい。

 国からも『出来るだけでいい』と言われているんだって。



「董明が作ったあの魔法陣が、国の魔術師にも使えそうって話だ」

「私じゃなくてみんなで作った、だけどね。それとポチャ次郎君の閃きのおかげね」



 えへへ。董明さんに褒められた。太郎君に首を絞められた。


 タガセンからは「とにかく怪我はするな」と言われている。あ、僕が、じゃないよ? みんなが。


 小グループでキャンプや買い物ツアーも行っている。

 と言っても、魔法移動持ちは壁グループと一緒なので、そっちの作業が無い日だけ。

 あとは地元での買い物や近場のキャンプ。


 実は班わけがあったけど、僕らの班はそのままだった。

 城之内君と漆原さんは魔法移動スキルを持っているので、壁班に移動しちゃうかと思ったけど、それはなかった。


 もちろん、たまに駆り出されたりはする。

 だけど基本はうちのまま。

 逆に壁班ではなくて他の人達に駆り出される事が多い。

 女子の買い物とか食い倒れツアーに。


 そしてうちの班で新しく行っている作業、それは養殖と養蜂だ。せっかく貰ったスキルなのに一度も試していないので試してみたいと梁井さんが言い出した。


 ちなみに、そのスキル『生産(養殖、養蜂、飼育)』を持っているのは、董明さんと梁井さん、佐々木先生と鈴木俊君。

 そこに鈴山田さんも加わった。


 養殖、養蜂は使い勝手がわからず、スキルも『育成』とか『テイム』と呼ばれる事がほとんどだった。

 本人達も忘れていたらしい。

 でも3国を割と自由に行き来できるようになって、養殖、養蜂に向いている場所を発見したんだって。


 コスタルの海岸から少し離れた平地に穴を掘って海から水を引いた。そこに獲れたての魚を泳がせる。



「養殖ってそんなもんじゃないよな? わからねえけど」

「そうだね、わからないけど」

「そうね、私もわからないわ。でも、何となく……」

「そう。何となくなのよね? 実際に魚を育てるとかじゃなくて、育てる環境?を整える、みたいな?」

「ええ、そんな感じ」



 どんな感じか、さっぱり解らないです。

 たぶん、スキル持ちにしか理解出来ない感覚なのかな?

 あ、そっか。

 僕がお肉の解体をスルスルと出来るあの感覚と同じかな?



 それと似た感じで養蜂も行ってた。

 こっちはウッドランド近くの平原。

 董明さん達が『何か』をしたら、地面が花畑になった。

 いくつか種類の違う花畑が出来た。



「花の種類で取れる蜜が異なるからね」



 養蜂で使う木箱みたいなのも、やないさん達の指示で現地の人が作っていた。

 僕らが帰った後も、この地に住んでいる人が続けていけるように、董明さんがマニュアルを作ったんだって。



「漫画で解る簡単養蜂よ!」



 やないさんが、睡眠時間を削って描いていた漫画だ。……その、僕も見せてもらったけど、漫画としての盛り上がりはイマイチだった。

 やたらイケメンのエルフが出てきてハチミツを採っている漫画だった。




 僕らは浮かれていた。




-----(田川視点)-----


 ろく中、さか中、めぎ中の3校が帰還するための準備は整った。境の頂の塔の祭壇の使用方法も解り、帰還のための魔力石も必要な容量を集め終えた。

 あとは最後の日、360日目を迎えるだけだ。


 魔力石を前倒しで祭壇の溝へと入れていき、燭台の灯りが全て灯った時点で、もしかして前倒して帰還になるかもしれないと考えた。


 前倒しの帰還についての文献は見つかっていない。

 だが、万が一を考えて、ろく中の生徒をブリンクランドの『ストーンヘンジ』で待機させた。


 『ストーンヘンジ』とは我々が勝手にそう呼んでいる場所だ。

 俺らが召喚され、白い部屋でスキルを取得した後に出た、この国のとある場所だ。

 そこは地球で有名なストーンヘンジと似ていたので、生徒がそう呼び始めた。


 境の頂の塔の祭壇で召喚を行うと、召喚された者はその国のそこに現れる。

 もちろん、同じような場所がウッドランドにもコスタルにもある。さか中やめぎ中は、それぞれの国のソコに現れたそうだ。


 そして、ソコから地球に帰る。

 360日目には、それぞれの国の宰相や関係者が塔で操作をしてくれる。

 我らはストーンヘンジで帰還を待つだけだ。

 帰還の手順については、過去の文献をいくつか発見した。



 問題は、人数だ。


 ブリンクランドが召喚したろく中は生徒と俺で25名。

 ウッドランドが召喚したさか中は生徒と佐々木で25名。

 コスタルが召喚しためぎ中は生徒22名と先生2名と用務員で25名。


 だが、今、ブリンクランドにはそれ以外に3名の生徒がいる。


 ディサートが召喚した本郷中の生徒、蒼井、木田、瀬戸の3名だ。



 帰還人数について、董明達が探した文献では、召喚以上の人数が帰還したケースは見つかっていない。

 まぁ、そうだろうな。来た人数が減って帰る事はあっても、来た以上に増えて帰る事はないだろう。


 過去の召喚でも召喚人数のマックスは25人だった。それ以上を召喚した時に起こる事故については、いくつか文献に残っていた。

 恐らく、あの塔の召喚システムで呼べる最高人数なんだろう。


 ブリンクランドだけでなく、ウッドランドやコスタルでも過去の文献を探してみたが、それについての記載は見つからなかった。




 25人の召喚で、28人帰還をしたらどうなるのか。


 それは何度も他の先生とも話し合ってきた。だが、答えが出ない。



「蒼井達は……ディサートへ帰すしかないのでは?」



 植原先生は、3人を本郷中、ディサート国へ戻すべきだと言う。



「でも、そこから逃げて来たんですよね? 戻ったら、その、捕まるとか酷い事をされるんじゃ……」


「だけど、このままここに居ても、彼らの帰りの切符は無いんですよ」


「そんな……植原先生……」


「佐藤先生だってそう思うでしょ? 高田さん、田川先生も、彼らをあちらに帰すしかないとわかっているはずです」


「帰還に必要な魔力石を、本郷中の分まで貯めたらどうでしょう」


「貯めて、塔の祭壇にセットする事は出来る。でも蒼井達が帰還するにはディサートのストーンヘンジに行かないとならない」


「3人をそこに連れていって、帰還日まで待たせておけば……」


「それは、本郷中の、他の生徒を置き去りにするという事ですか? 佐々木先生」


「そ、そんなつもりでは……」



 大人の会議、教師の会議はいつもこんな感じで揉めて終わる。子供らより頼りない。自分も含めて、だが。


 ディサートだけでない。

 今回の召喚は7ヶ国が同時に行った。いまだに、ほかの国がどこの中学を召喚したのか、判っていないままだ。

 本郷中以外に、あと3校が召喚されたはず。


 ブリンクランド、ウッドランド、コスタルは地理的にも比較的近く、商人の繋がりもあった。

 だが、他の国は遠い。


 国同士の交流が無いだけでなく、商人もそちらまでは行かないそうだ。あちらはあちらで商人の繋がりはあるかもしれないようなことは言っていた。

 宰相に頼み、4国を探ってもらったが、国領に近づくどころか、国からの場所すら怪しいらしい。



「田川先生、結局、残り2ヶ月じゃもう我らにうてる手は無いですよ。僕は芽木の2-1の生徒を無事に連れて帰ります。佐藤先生も賛成ですよね」

「ええ……。それしかない、かな」


「そんな! 蒼井君や瀬戸さんは置き去りですか?」


「佐々木先生、彼らは僕らの学校の生徒じゃない。あなたの学校の生徒でもない。あなたは境井戸中学の生徒を連れて帰る責任があると思いますよ」


「そうですが……。そうです、けど……」



 植原先生と佐藤は会議をしていた部屋から出て行った。話し合いはいつも同じ場所から進まない。これ以上話しても時間の無駄か。


 佐々木先生も項垂れて出ていった。残ったのは高田さんだ。



「3名かぁ。どうしたもんですかね」


「ふぅ」


「生徒達は、本郷中の分の石も集めとりますよ。良い子達ですな、ろく中の生徒さんは」


「魔力石は多分集まるでしょう。塔も問題ない。問題はディサートまで行けない事、だ」


「生徒さんのスキルを使っても? ウッドランドやコスタルへ来たときのように」


「危険すぎるんです。ディサートまでの道のりが。宰相にお願いして何度か騎士を派遣してもらいました。が、どれもディサートへは辿り着けなかった。蒼井達がブリンクランドに辿り着けたのが奇跡としか言えないそうです。まぁ、途中でふたり、亡くなっていますが……」


「田川先生……」

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