90話 相性
「なるほど。ウッドランドは『武力』を要求した。だからさか中の渡邉の魔法武器は威力が劣った。だけど、『魔力』を要求したコスタル、めぎ中の鈴木の魔法武器は威力を増した」
「そう。拾った棒に纏わせた魔力が強かったので、草人形が倒せた」
日向君と董明さんの話は少し難しくて、僕にはピンとこなかったけど、さか中とめぎ中の何人かは呆然としていた。
「それって、さぁ、俺、この先ずっと役立たずじゃん」
「それは俺も一緒だよ。魔術系スキルを取ったやつ、全滅じゃん」
「そんな事は……」
「あるよっ! ウッドランドは魔術系の魔物が多い。なのに、俺らは草人形倒すのにも苦労するんだ。魔力石なんて集められないよ!」
「それ……コスタルも一緒か。こっちは武力系の敵が多いのに、俺の魔力が多くても倒せねえよ」
「その……」
「気を使わないでいいよ! 本音で話そうぜ。結局、さか中もめぎ中も半分以上は使いもんならねえって事だろ」
「第三条件がスキルにどのくらい補正を与えたのかはわからない。だが、確実にスキルに影響は出ている」
「影響は出ているけどスキルが使えないわけではない。結局今まで通り魔力石を集めていくしかないのよ」
「それでも、ろく中の2倍時間がかかるけどな」
「2倍じゃねえよ。ろく中は宝箱を6個見つけてる。ろく中は俺らの12倍の速さで討伐出来るじゃん」
うわぁ、なんか凹んでいる人がどんどん増えていく。
こんな時はオヤツだ。僕は亜空間倉庫からオヤツパンを取り出した。毎日たくさん保管していったので結構な数がある。全員に配っても大丈夫。
近くにいた生徒からパンを渡していく。変な顔で見られたけど構わない。とにかく全員にパンを配る。僕が配り始めると、やないさんと漆原さんがお城へ飲み物を取りに行ってくれた。
「一旦、休憩」
日向君達にも渡す。それを食べ始めた。
「お腹が空くと悲しくなるからね」
「さっき朝飯食ったばかりだけど……」
「いや、そろそろ10時だ」
「あ、じゃ、10時のオヤツだね。学校だと10時にオヤツが食べられないから悲しいよね」
「まぁな。それが普通だけどな」
「そうなんだよ。出来ない事は出来ない。日向君の話が難しくて、みんなが何を悲しくなったのかわからないけど、仕方ない事は仕方ないと思う」
「あー、そっか。そうだな。さか中もめぎ中も、みんな悲しくなったのか。頑張ろうと思ってたのに、思ってたより頑張れなくて悲しかったのか」
日向君の言葉に、何人かのすすり泣きが聞こえた。女子じゃなくて男子の……。
頑張って、それでも出来なかった時って悲しいよね。僕、オヤツパンもっと沢山集めておくね。
食べ終わった日向君が立ち上がった。
「俺の言い方が悪くてごめん。あ、食いながら聞いてくれ。召喚条件でスキルに補正がかかっているのは、俺らにはどうしようもない事だ。俺らは、今あるスキルで頑張るしかない。それは、無理をしろって言いたかったんじゃないんだ。ポチャ次郎が言ったみたいに、出来る事をやればいい」
「でも、それじゃぁ、帰還までに石が貯まらない……」
「大丈夫だ。そのための3校合同だ。みんなが出来る事をやる。それで目標も達成する。それがイチクミだ」
「そういえば、めぎ中もさか中も2年1組なんだよね?偶然だけど1組が揃ったね。あ、ごめんなさい。話に割り込んで」
「そうだな。先生も入れると75人のイチクミだな」
「ひとクラスがデカイなw」
「召喚条件に『1組』ってあったのかな?」
「いや、本郷中は3組だった」
「さっきポチャ次郎君が言ったようにね、『出来る事、得意な事』で考えると、意外と討伐が楽になるかもしれないわ」
董明さんが本当に女神さまに見える。近くの生徒が今にもひれ伏しそう。
「董明?」
「あのね、ウッドランドは『武術特化』でしょ?だから魔術の威力は減ってしまった。だからウッドランドの敵に魔力で敵わない。でも武力は威力が増している。コスタルは『魔力特化』で魔力が増している。なら、チェンジすればいいのよ」
「なるほど。武力はプラス補正になっているはずのさか中はコスタルで魔物討伐、魔力がプラスになっためぎ中はウッドランドで討伐か」
「ええ。その方が捗るのではないかしら」
「学校ごとでなく、スキルで討伐班を分けてもいいな」
「でも、マイナス補正がかかったスキルは結局そのままだよな……」
「そうね。でも、さっきポチャ次郎君も言ったじゃない。結局、出来る事をするしかないのよ。倒せる敵を倒していくしかない」
「それに、やる事は山ほどある。魔物討伐だけじゃないからな」
うん。やる事はたくさんあるからね。
報告会の後は、3校のブレインが集まって作戦会議をするみたい。僕は太郎君やいつものメンバーと、罠場周りだ。




