82話 ちょっとした仲違い
クラスの間に居ためぎ中とさか中、先生達も、全員、お城の中庭へ移動したって。
確かにこの部屋は狭すぎ。イチクミ24人とタガセンぐらいならちょうどいい広さだけど、さすがに75人は、ね。
「あ、あの、僕のせいでごめんなさい」
「俺も次郎と一緒であの部屋狭すぎて苦しかったから助かった。やっぱ、タガセンってさ、次郎に甘いよな?」
「そうだな。俺も便乗出来てラッキーだった」
「それより、どう思った?」
ん? 何が?
「めぎ中な。太郎と同じ印象だ」
え? 太郎君と城之内君が同じ印象? めぎ中の印象?
僕からは全然見えなかったけど、どんな印象だったの?
「まあさ、直接話してみないとわからねえけど、第一印象は感じ良くなかったな」
「そうなんだよな。今後の魔力石集めを3校合同でやっていけるかね」
「向こうの出方次第……かな。まぁ、どっちになってもうちはうちでやる事はやる」
「問題はタガセンか。仲良くしろとか言ってくるかな」
「どうだろうな」
「あの、僕、よく見えなかったし、途中から話も聞いてなくて……。その、めぎ中と喧嘩……とか、したの?」
太郎君と城之内君が複雑な顔で僕を見た。
「喧嘩は、してない。まだ、な」
「うん、向こうが感じ悪かっただけ」
まだ? まだってこれからするの?
どうしよう、どんな感じだったのか、もっと突っ込んで聞いた方がいいかな。
悩んでいた時、ドアからゾロゾロとみんなが入ってきた。
「お帰りー」
「ご苦労様。どうだった?」
「どうもこうも、なっ?」
「ったくよー。話になんねえぜ」
赤城君達もなんか不機嫌? 戻ってきたのはろく中のイチクミだけだ。めぎ中とさか中は?
「帰ったの?」
「おう。千谷と船橋はめぎをコスタルに送っていった。百野とファリタはさか中をウッドランドへ」
「女子はウッドランドに行きたがるよなぁ」
「ポチャ次郎、大丈夫か?」
「ポチャ次郎君、大丈夫?」
「あ、うん。平気。ありがとう」
「董明、めぎの名簿とスキル一覧、出来たら見せてくれ」
「出来てるわよ。そうだ、ポチャ次郎君、芽木中の名簿、見る?名前だけのだけど」
董明さんがノートから切り離した紙を見せてくれた。
------
芽木中2年1組 担任:佐藤亜紀、2組担任:植原、用務員:高田
遊馬
新井
斉藤
佐藤逸
佐藤瑛太
佐東
鈴木陽翔
鈴木俊
関根
高橋樹
棚橋
吉田
五十嵐
金子
木村
佐藤美咲
清水
鈴木陽菜
鈴木さくら
高橋みなみ
松本
山口
------
顔写真付きなわけではないし、名前だけ並んでいても頭には入らない。覚えられない。(写真付きでも覚えられないけど)
それにしても?
「あの……、難しい漢字はないけど、サ行が多くない? 特に佐藤と鈴木……」
「まぁ、日本でも多い苗字だからな」
え、それにしても、同じクラスに佐藤と鈴木をこんなに集めなくても……。
何で2-1に集めたんだろう。
「なんかな、別に1組だけじゃないらしいぞ。2組も3組もいるらしい」
「たまたまなのか知らないが、佐藤と鈴木が多いな」
「埼玉県……というか、春日部市がそうなのかしら?」
「ポチャ次郎、その事に触れたらダメよ。名前に触れたらなんか激怒してる奴いたね。バカじゃない?」
「それ以前に、向こうは千葉を馬鹿にしてた! 許せん」
「そうなの?」
「ピーナツピーナツ五月蝿えんだよ! 落花生だっつーの!」
「埼玉はほぼ東京だが、千葉と茨城は魚臭い田舎だと!」
「赤城、怒るに値しないぞ。『ほぼ』東京ってのは東京じゃあないからな」
「都民からしたら『一緒にするな』って怒りそう」
「魚臭い……めぎ中って、魚嫌いなの?」
「埼玉は海なし県で有名だからなぁ」
「でも、コスタルに召喚されたんだよね? コスタルって沿岸部じゃなかった? 魚醤とか魚あるって高田さんが言ってた」
「そうなのよー。笑っちゃう。魚嫌いが港町に召喚されるとか!」
「まぁ、別に魚嫌いじゃないだろうけど、芽木中はうちとさか中を見下していたな」
「さか中も怒ってたね。今後はろく•さかvsめぎだね」
「俺らはコスタルはブックマーク済みだから買い物だけならいつでも行ける」
うーん、タガセンはみんな仲良くって言いそうだけど。
「大丈夫よ、ポチャ次郎君」
董明さんに名簿を返すと、僕の心配をわかってるようだった、さすが、女神さま。
「みんなが言うほど喧嘩はしてないわよ。よくある学校同士の牽制みたいなもの。ほら、修学旅行先でカチあった学校と軽く揉めるでしょ? そんな感じ」
どんな感じぃ? 小学校の修学旅行を思い浮かべた。
…………そういえば、旅行先のバスを降りたところで一部の男子が他の学校の生徒と揉めていたのを思い出した。
確か……、どっちのバスガイドさんが美人だ、とかなんとか。
あんな感じ?
その日、僕らは引っ越した新しい部屋で寝た。廊下のこっち側、男子部屋と女子部屋、その奥に新しいクラスの間。男子部屋の反対側にある小さい部屋にタガセンと高田さん。
やっぱり高田さんはコスタルには帰らなかった。あっちは先生がふたりいるから大丈夫なんだって。
ウッドランドのさか中は佐々木先生だけだから、そっちに行った方がいいんじゃないかと僕は単純に考えた。
「もしも、急に帰還になった場合、あっちは25人枠しかないし、移動スキルもひとりしかない。こっちにいた方が動きやすい」
先生同士の話し合いでそう決まったんだって。
めぎ中の用務員さんなのに、めぎ中は高田さんに戻ってきてほしくないのかな。
「あっちは何かと相手を見下すやつが多そうだったな。高田さんも用務員って事で見下されているんじゃないか?」
城之内君は人をよく見ている。もしかするとそうなのかも。
「芽木の奴ら、男子も女子も、俺と次郎の事をめちゃくちゃ下に見てやがった」
太郎君もプンスカしていた。あの時太郎君も城之内も僕といてくれたから、めぎ中の子らとはそれほど接していないのに。
「アイツら千葉県は見下してたけど、芽木の女子は城之内にキャーキャー言ってるってさ」
「そうなの?」
城之内君はかっこいいからね。
「城之内はテレビに出たからなぁ」
「えっ? そうなの?」
「次郎、知らなかったのか?」
「あ、ごめん。僕あまり……ほとんどテレビ見ないから」
「出たって言っても端役だよ。登録している事務所が取ってきた仕事だ」
「ええー! 城之内君、ゲイノー人なの?」
「芸能人っていうか、演劇に進むつもりだけど、事務所にも登録してある。色々やりたいからな」
凄い、凄いなぁ。中学生なのに、もうやりたい事があるんだ。
「俺だけじゃなくて、他の運動部の奴らも騒がれているよ」
「そっ。なんだかんだ言って、自分とこの女子がろく中を推しているのが気に入らないんだろ」
「へぇ」
難しいね。
「男子だって、竜崎やファリタにのぼせ上がってたわよ」
うわ、びっくりした。やないさんと漆原さん。
「お前ら、男子部屋に勝手に入ってくんなよな」
「だってさー、ポチャ次郎が心配だったからさ」
「そうよ、夕食もいつもの半分しか食べなかったでしょ。夜食持ってきた」
漆原さんが収納からオヤツパンを出した。オヤツパン、中に果物が入ったパイみたいなやつ。美味しいよね。
「ありがとう。一緒に食べよ?」
「やめてよ、寝る前に食べたら太るじゃない。食べるけどね」
「梁井、寝る前にスクワット50よ!」
うちのイチクミはみんな仲良しで良かった。




