80話 ホクロ
「それに、1番の未知数がまだある。蒼井達、本郷中とディサート国」
日向君のひと声で、みんなが『ああー』って顔になった。ディサート国……確か砂漠の方にある国だっけ。
「それがあったかぁ」
「本郷中とジャイアントか」
「それもうちがフォローしないとダメなの?」
「私、砂漠地帯まで行くの絶対に、嫌よ」
「ウッドランドやコスタルは、まだ隣国だから何とかなったけど、ディサート国ってかなり離れた場所だったよな?」
「絶対に、行かない、からね!」
「ディサート国か……。タガセンも俺達をそこまでは行かせないんじゃないか? 蒼井達の話だと早々に生徒5人が、その……処刑されたとかの国だよな?」
「そうだな。子供を平気で殺す国に俺らを行かせるわけないな」
「それは、大人が考える」
高田さんが僕らに言った。何か苦い物を噛んじゃったような顔。
「そうですね。僕らはとりあえず目の前の事、コスタルとの交流を考えようぜ」
「そうだな、まずは魚醤だな」
結構時間が経った。
今日はタガセン達は戻ってこないのかもしれない。
日向君、城之内君、董明さんは、タガセンへの報告をどうするか、何度も話している。
「時間が勿体無いな。これなら罠を仕掛けにいけたのに」
「そうだね。でも、漆原さんは疲れているから今日はもう勘弁してあげて……」
「ちょっと! ポチャ次郎に庇われるの、なんか心外なんですけど!」
「あ、ごめ……」
「でも、ま。ありがとね。正直、結構疲れてる」
「漆原、MP回復しない感じか?」
「んー……。MPはたぶん結構回復してると思う。それよりも縮地の移動に疲れた。今日はもう動きたくない」
「そうだよねえ。縮地でコスタルへ向かって延々と飛び続けだもんね。流石に私も疲れたわ」
「竜崎に同意ー。スキルで飛んでいるとはいえ、全く歩かないわけじゃいからね。連続縮地、マジ疲れた」
「そうだな。魔法移動チームより、縮地チームの方が大変だよな。回数で距離を稼がないとならないからな」
うわぁ。縮地チームの皆さん、本当にご苦労様でした。
「ただいまー」
「戻りましたぁ」
「ただいまです」
鈴山田さんと百野さんとファリタさんが戻ってきた。
「おう、魔法移動女子、ご苦労様。鈴山田、コスタル入りは出来たのか?」
「無事、コスタルの王城の部屋まで入りました」
「千谷と船橋はタガセンと泊まりか?」
「ええ。明日の朝、また向こうに行きます。ええと……高田さん」
鈴山田さんはキョロキョロして高田さんを見つけるとニコニコと近づいていった。
「お疲れ様でしたね」
高田さんが優しい笑顔で鈴山田さんを労った。
「ありがとうございます。田川先生から伝言なんですが、高田さんがコスタルへ戻られるのは明日まで待って欲しいとの事です」
「はい。大丈夫ですよ」
「タガセン、今夜にもめぎ中の先生達と色々と話すみたいなんですが、戻るのは明日になるだろうから、それまで私達ろく中イチクミをよろしくお願いしますって」
「はい」
「鈴山田、百野、ファリタ、疲れているとこごめん。これ、クラスでさっき決まった。今、目を通してもらえるか?」
董明さんが差し出したノートに顔を寄せて読んでいる、その横で日向君が説明もしている。
夕方近くではあるけど、まだ日は落ちていない。僕らはファリタさんと一緒に、猟師小屋経由で罠を仕掛けにいった。
時間が無いからあまりたくさんは仕掛けられなかったけど、明日はもっとたくさん仕掛けるんだって。
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翌朝、僕らが罠を仕掛けに行って戻って来た時には、クラスの間にタガセンが戻って来ていてびっくりした。
慌てて後ろの方の椅子に着席した。
「昼からコスタルへ行くぞ」
「イチクミ全員ですか?」
タガセンの言葉に日向君がすぐに返した。
「全員だ。めぎ中との顔合わせをする。鈴山田、千谷、ウッドランドに飛んでさか中の染谷を連れて来るぞ」
「今ですか?」
「今だ。さか中にブックマークをさせる」
そう言い終わる時には千谷君と鈴山田さんがタガセンのそばにいて、……消えた。
魔法移動って凄いな。
「日向、昨日の件はタガセンに言ったのか?」
「おう。ポチャコンビが戻る前にタガセンが帰還したからな。全員集合がかかってお前らがいないのに気づかれた」
「そう、それで、俺と日向と董明で説明した」
「そんで?」
「概ねオッケーだ。ただ、さか中とめぎ中とも関わっていくので、色々と変わる事はある」
「俺と次郎は、罠作りと罠設置に集中していいんだな」
「おう。罠の材料の入手も、獲れた獲物もこちらでやる」
「けど、魔物の解体はポチャコンビ頼む事になる」
「そうね。私達だと毒の部分をしっかり取れないと思うし」
ぼ、僕と太郎君のふたりで罠を仕掛けに森に行くの……、ちょっと怖いな。暴れん坊の獣とかいたら……。
「大丈夫だ、次郎。しばらくは日向班から船橋と大野が着く」
「近接スキル持ちか。俺らを守ってくれよ」
「任せろ、ポチャコンビ」
そっか。船橋君と大野さんは体術とか剣だっけ。かかった獲物にトドメをさしてくれるんだね。僕だと、トドメをさすのに近づいた途端に噛まれそう。うん、噛まれるね。
「船橋も一緒だと魔法移動でラクだな」
「生産育成持ちの俺と鈴山田、董明、梁井は、タガセンの都合を見てファーストテイムだ」
「おっ、いよいよテイマーデビューか、日向」
「城下町を出た森に結構小物の獣がいたから、最初はそれで試すみたいだ」
「ホーンラビットか?」
「スライムじゃないか?」
「違うわよ、それ、どっちも魔物じゃない。それにこの世界にいるの?」
「知らんけど。異世界には必須の2種だよな?」
「だよなー」
「それとゴブリンね」
「いや、それは居てもテイムしないぞ」
「臭いのはパス」
「あら、でも綺麗好きのゴブリンだったら飼ってもいいかしら」
「董明さん、やめたほうがいいわ。異世界でゴブリンは300%敵よ」
「董明、ゴブリン拾ってくるなよ、イチクミじゃ飼わないぞ」
董明さんと鈴山田さんの女神様コンビなら、ゴブリンも平伏しそうなんだけど……。
「太郎、罠に狼がかかっていたら殺さずそのままにしてくれ。まずは狼のテイムで試すと言ってた」
「きゃー、もふもふ〜」
「生まれたての狼、居ないかしら」
女子が盛り上がっている。狼、かなり大きくて怖いよね。死んでいるのを見たけど、口がガバッと大きくて牙がはみ出てた。ベロもはみ出てた。
それに、毛はゴワゴワだった気がする。お風呂に入れたらもふもふになるのかな? 僕は飼うなら猫がいい。それも噛まないやつ。ボスじゃない野良猫。
「太郎君、市場にニャントゥール売ってるかな?」
ニャントゥールは猫がまっしぐらに食べに来るおやつだ。
「次郎……お前、猫飼う気か。 ダメだぞ? 俺らは1年後に地球に帰るんだからな。連れて帰れないんだぞ?」
あ、そっか。中途半端に優しくしたらダメって、前に綾香さんい言われた事あった。
「うん、わかってる。ちょっと聞いただけ」
「あ、でもさ、ポチャ次郎、それ罠にセットしたら獲物がかかりやすいんじゃない?」
「猫が獲れてどうするよ」
「違う違う、ニャントゥールじゃなくて、獣用のオヤツとか売ってないかな」
「どうだろな」
「聞いてみようぜ」
なんて話している間にウッドランドに飛んだタガセンと千谷君、鈴山田さんが戻って来た。
さか中の……ジヌ染君?
あれ? ジヌ染君は僕と同じ鑑定スキルだったはず。
タガセンはさか中の魔法移動スキルの生徒を連れに行ったんじゃないの? なんでジヌ染君を連れてきたの? 魔法移動の人が留守だったのかな?
僕が不思議そうな顔をしている事に太郎君が気がついた。
「どうした? ポチャ次郎」
「あ、うん。なんでジヌ染君が来たのかなって……」
「ジヌ染?」
「何言ってんだ、ポチャ次郎。染谷は染谷でも、こいつは染公だぞ?」
「むっ、その呼び方、不本意ですが、親が公務員の染谷です」
「えっ? 違うよね! ジヌ染君だよね?」
「公務員の染谷、親が公務員の染谷は私でございます!」
「本人も名乗ってるぞ?」
「染公君よね?」
「だって、だって眉間にホクロ! ジヌ染君は眉間にホクロがあった!」
みんながジヌ染君の眉間を凝視した。そして、ため息。
「ポチャ次郎ぉ、確かにジヌ染の眉間にホクロはあった。だがしかし、染公の眉間にもホクロはあるんだよ」
「正確には、眉間のちょい上、オデコエリアですけどね」
ジヌ染君……じゃなくて、こっちの染谷君にもホクロが?
「それに、俺のホクロは地主より小さいぞ」
「そうだな。向こうは眉と眉の間に、デンっとホクロだw」
「だっただったw」
「俺のは、チョンっだ」
「あぁ……ごめんなさい。染……や、君?」
「おい。ホクロはどうでもいい。染谷を連れてコスタルへ行くぞ」
ぎゃわああああ、タガセンに睨まれたー。




